月面図
1932年(昭和7)9月3日、倉敷天文台技師の荒木健児氏から伊達英太郎氏に送られた手紙です。読み取った内容は以下の通りです。
「御手紙をいただきました。
月面図は1枚2銭(現在の貨幣価値に換算すると約14円)ですが、送るのがうるさい(煩わしい?)のです。ともかく1枚同封します。このように折るのは嫌ですから、ボール紙で筒を作って入れる(古賀恒星図を京都から送って来る要領)つもりでいます。
私うっかりして筒の注文が遅れて(予定価格は決まっています)相すみません。
送費が少なくとも4銭(同約28円)いります。これ以上かかる時は、まあいい意味の欠損ですね。
切手は御預かりしています。切手は黄道光課の通信でとてもたくさん入り用ですから(2銭切手)一割増などの必要ありません。御入用だけ御申越下さい。その内 筒は必ず」
出来ますから お送りしましょう。欠損は名誉台長(原 澄治氏)に弁償していただくことにすればよろしい。ああ、同好会のためですからね。
この前花山へ行った時、中村先生からあなたのことを承りました。天文はなかなかうるさい(煩わしい?)ものです。仕事は少しもはかどりません。
時々は通信し合いましょう。不一(手紙の末尾に添える語。十分に意を尽くさない意)」
これは、「天界」1932年(昭和7)9月号(No.137)の表紙裏に出ていた急告です。伊達氏が注文したのは、この月面図だと思われます。残念ながら、月面図は伊達資料にはありませんでした。
「天界」1932年(昭和7)8月号(No.136)の裏表紙の古賀恒星図の案内です。
中央が荒木健児氏です。(写真は、「「天界」1932年(昭和7)9月号(No.137)より)
「中村要先生からあなたのことを承った」、この一文、私は大きく心を揺すぶられました。
(参考文献)
「天界」(No.136),東亞天文協会・天文同好会,1932年(昭和7)8月
「天界」(No.137),東亞天文協会・天文同好会,1932年(昭和7)9月
(資料は伊達英太郎天文蒐集帖3より)