10問分の価値がある問題。
「それさ、頭の堅い人は解けないんだよ。
いや、解けたとしても、本当に”分かれたか”は怪しい。
その問題は、よくじっくりと考えて、
感覚レベルにまで昇華できるほど
”分かった”と確信できるように鍛えておいて。
その1問は10問分の価値がある。」
どんな問題も、実数値が与えられないと
どうしても感覚的な理解が問われます。
今回その子は実数値への置き換えによって
解答できていましたが、実際はこれは一瞬で
感覚的に分かるべき問題でした。
問題はこうでした。
「電熱線Aと電熱線Bがある。
これを直列につないだ回路と
並列につないだ回路がある。
この回路に一定の電圧をかける際、
直列につないだ回路の電熱線のうち、
電力が大きくなるのは電熱線AとBのどちらか。
また、並列につないだ回路の電熱線のうち、
電力が大きくなるのは電熱線AとBのどちらか。」
平たく言えば、熱くなるのはどちらか?ということです。
本当いうと、この両者の回路の電熱線を
水の中にぶち込んだ場合の、直列と並列の
温まり方についても理解しておくべきです。
電熱線一個ずつを水の中にぶち込んだ時と比較した時の感覚も。
直列回路は電流が一定です。
よって、V=RIのうち、Iが固定されます。
抵抗値が高いほどかかる電圧が高くなり、
電圧と電流の積である電力は大きくなります。
よって、直列回路においては、
抵抗が大きいところに大きな電力が生じます。
また、並列回路は電圧が一定です。
よって、V=RIのうち、Vが固定されます。
式を組み替えてV/R=Iとしても良いのですが、
抵抗値が高いほど電流は少なくなります。
よって、抵抗が小さいほど電力は大きくなります。
数学的にはそうやって解釈しますが、
これを感覚的な電子の流れと抵抗の考え方にまで
落とし込めるかがポイントです。
ものがどうやって熱や光を生んでいるのか、
そういうところに想像力を働かせられるかが
実際は大切なところであり、そこが捉えられると
これまでとは違った物理感がひらけてきます。
「この問題は、もう少し時間をかけて。
本当に”分かった”って言えるには程遠いよ。
解けたことは評価するけれど、
解くことだけが重要なのではない。
君のこれからのために、じっくりこの問題を眺めて
想像を巡らせてみてほしい。」
難関の中学受験は、容易にその領域に
突っ込んで質問をしてきます。
求められているのは、やはり感覚。
V=RI以前の、もっと大切な部分なのです。