近代思想7-社会主義思想の広がり
2022.04.18 10:33
ティエールが失脚してからは、外務大臣ギゾーが実質上のフランス政治の権力者となった。ギゾーは歴史学者として有名になったが、父はフランス革命で殺されており、普通選挙権で大衆に政治に参加させるのは絶対反対だが、その望むものを上から実現しようという考え方である。これは啓蒙主義者もそう考えた。
しかし1839年に、ジャック・ラフィットを委員長にして選挙改革委員会が発足し、18万8千人の普通選挙誓願署名が集まった。ブランキらの蜂起が失敗し、政治改革運動は議会での普通選挙運動へと収斂した。ここで新しい展望として「アソシオン」社会が構想される。
サン・シモン主義者は18世紀を批判の時代として捉え、19世紀をアソシオン=組織の時代と考えた。フランス革命の王権批判から新しい社会の組織をつくろうというのだ。その重要なファクターが普通選挙である。普通選挙によって国の統一をつくるという考えは現在にも通じるものである。
またルイ・ブランは、ベストセラーとなった「労働の組織」において、自由競争は労働者を貧困にすると批判し、社会主義的な「国立作業場」を構想した。彼は所有ではなく、労働を社会の基礎に置き、それゆえ普通選挙権を求めるのだ。これは説得力ある考えになり、何と幽閉中のルイ・ナポレオンも読んだのだ。