フルート型のグラス
イギリス、1900年頃のフルート型のグラス(149 x 68mm、125 x 69 mm)、ガラス生地も上質でシンプルでスッキリしたデザインのカットグラス。状態はとても良いです。イギリスらしいシンプルさですね、抑制の効いた装飾が。僕はこういうグラスはとても好きですし、自信を持ってお勧め出来るグラスです。見ての通り軽くて薄いです。
僕が店を開いたのは1998年6月。同じ年にGoogle が出来ています。まだあの頃はスマホはありませんでしたし、今ほどインターネット一色の世の中ではなかったように思います。まだ歩いて散策しながらお店を偶然に見つけたりすることが普通だった頃です。歩きながら嗅覚で、ここを曲がってみよう、もう少し先に進んだら何かありそう、あの突き当たりは何だろう、などと勘を働かせながら知らない街を人は歩いたものです。無駄の多い探し方で、効率は酷く悪い。僕がいた商店街は「骨董通り」と呼ばれていたので骨董ハンターの中年男性が徘徊してもいました。大会社の重役が出張で金沢に来て支店長に運転させて骨董屋巡りしたり、骨董を足で歩いて探す、というのがまだ普通だった頃。
それから約四半世紀が経ち、ホームページがあることを除けば僕の店の商売のやり方は基本同じ。対面商売。僕とお客さんが向き合ってその間にアンティークが介在してことは一進一退しながら進んで行く。とてもマニュアルな売り方。観てもらう、触ってもらう、説明する、比較する、話し込む、再度ゆっくり眺めてもらう。そんなことをお客さんと繰り返しているうちに二時間くらいあっと言う間に立ってしまう。だから常連さんはみんな長い。遠方から来てフェルメールで半日過ごし、また電車に乗ってそのまま帰って行く人も偶に居たりする。僕の売り方のベースはゆっくり観てもらい十分会話すること、その二つが基本。だから長い。僕はそう言うやり方が好きである。疲れるときもあるが、帰られるときにお客さんが、ドアを出がけに、あぁ楽しかった、と言うのを聞くとそんなときが一番嬉しいし、お店をやってて良かったとも思う。物の売り買いで交換されるのは物とお金だけでなく、他に目には見えないものがあるということをみんな忘れ掛けているのだ。amazon も便利だが矢張りそれだけでは人は枯れてしまうのだ。
これからも同じやり方で、もっと濃い物を扱いながら濃い店にしていくのが僕の取り敢えずの目標みたいなものである。