犬の尿失禁について
犬も尿失禁をすることがあり、生まれつきの奇形が原因の場合とそうでない場合があります。また、水をたくさん飲んだ時にもおこる場合があるため、尿失禁と多尿の区別はつきにくいものです。今回は犬の尿失禁についてお話します。
尿が出るまでの仕組み
血液中の老廃物は腎臓から尿管を下り、尿となって一時的に膀胱に貯まってから尿道を通って排出されます。弾力のある筋肉でできている膀胱は、尿を貯めている時にはゆったりと広がっていますが、膀胱の出口にある尿道括約筋はしっかり締まっており、尿を漏らさずに貯めていられます。一方尿を出す時は、膀胱はぎゅっと縮んで逆に尿道括約筋はゆるみ、残さず尿を出すことができます。
このように尿道括約筋は排尿時に膀胱の開け閉めを行う役割をしています。正常な排尿を行うためには、膀胱の神経と筋肉が適切に動いていることが必要なのです。
尿失禁の原因とは?
<奇形>
若い犬では、先天性の奇形が尿失禁の原因になっている場合があります。異所性尿管は若い犬の失禁を引き起こすもっとも一般的な奇形です。尿管は腎臓から膀胱まで尿を運ぶ器官ですが、異所性尿管では片方あるいは両方の尿管が膀胱を迂回して尿道や膣に開口しており、若い犬は膀胱に尿を貯めることができずに漏らしてしまいます。
<尿道括約筋機能不全>
犬の尿失禁でもっとも一般的なのは尿道筋の虚弱による尿道括約筋機能不全です。先天性尿道括約筋機能不全は特に大型犬で多い傾向があります。異所性尿管よりも多量の尿を漏らし、横になっているときによく起こります。尿道が異常に短いか欠損している場合もあります。
後天性尿道括約筋機能不全は、通常中年齢の中型犬~大型犬で卵巣子宮を摘出したメスで多く見られます。子宮摘出直後または数週間から何カ月も後に尿失禁の症状が見られることもあります。卵巣子宮摘出術と同様に卵巣摘出術でも尿失禁が見られることから、卵巣摘出と尿失禁との間に関連性があると思われます。
また、老齢によって膀胱に尿を貯蓄しておく筋肉が衰えてくることもあり、通常8~9歳以降に症状が出てきます。
尿道括約筋機能不全のサインとは?
● 尿がぽたぽたと漏れてくる
● 犬が寝ている場所が濡れている
● 尿が付着したり舐めることによって、陰部が皮膚炎を起こしてしまう
ただし、家の中で尿による濡れた場所を見つけたとしても、それは必ずしも尿失禁を意味するわけではありません。
尿失禁対策のサプリメントについて
尿失禁対策のサプリメントとして、尿路組織と膀胱括約筋の結合性を強化することを助けてくれるいくつかの栄養サプリメントがあります。
「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンに代わる「植物性エストロゲン(フィト・エストロゲン)」(イソフラボン類とリグナン類という2種類)という物質があります。これはエストロゲンが不足している状態では、本来のエストロゲンに代わって不足分を補う方向に働きます。エストロゲンが不足した尿道括約筋機能不全の犬に納豆や豆腐(おから)などを与えると、尿流量を調節する膀胱や筋肉が強化され、膀胱機能の改善に補助的な効果があるかもしれません。
また、かぼちゃの種の粉末はビタミンB、脂肪酸、タンパク質、亜鉛が豊富で、尿が増えることによる尿路の浄化作用があると考えられています。
これらのサプリメントは特に、避妊手術後のメス犬や老齢犬のエストロゲン減少による筋力の低下が原因で起こる尿失禁に対して、膀胱の筋力維持のサポートが期待できます。
おわりに
犬の尿失禁には一過性の特に心配のないものから病気によるものまで、さまざまな原因が考えられます。
もし愛犬の尿失禁に気付いたら、以下のことに注意してみましょう。
● 最初に尿失禁した年齢は?
● 通常の排尿はできるのか?
● 不妊(去勢あるいは避妊手術)の有無
● 利尿剤や副腎皮質ホルモンあるいは抗けいれん薬などの内服薬を服用させているかどうか
● 1日当たりの飲水量は?
● どんな時(運動中、休息中)に尿失禁するのか?
● どれくらい頻繁に排尿するのか?
● 神経症状を示しているのか?
これらの情報を整理し、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。