とある冒険者の手記

A.白き蝶と黒き蝶は舞う

2022.04.19 14:29

テンパード化した帝国兵の治療をしていたアリスは、外が騒がしい事に気がついた。

外に出てみると、そこにはガウラとユルスの姿があった。

いつの間に戻ってきたのだと思っていると、ユルスは剣を取り号令を掛けた。

現れる魔導アーマーにその場は騒然とするが、グランドカンパニー·エオルゼアから届いた伝令に、ユルスは戸惑い、そして戦意を喪失した。

そして、彼等の拠点から避難民が保護され、キャンプは忙しくなった。

アリスは出来た炊き出しを忙しなく配膳する。

それを受け取り、安堵する避難民。

彼等が保護を受け入れてくれた事が何より嬉しかった。

だが、それを打ち破るかのように、塔から発せられたエーテル。

それに呼応するかのように確保していたラジオから流れる音声。


「うわぁぁぁああ!!」


悲鳴を上げるユルス達含めるガレアン人達。

それはテンパード化をさせるエーテルの放出だった。

エーテルを浴び、暴れるガレアン人を取り押さえる為、その場は騒然となった。

取り押さえられたガレアン人は治療場へと運び込まれ、素早く治療を施される。

アリスもそれに加わり、慌ただしく治療をして回った。


騒動が落ち着つくと、あることに気がついた。


ガウラの姿が見えない。


一体何処に行ったのだろうと、暁のメンバーと話していると、外からこちらに向かって歩いてくるガウラの姿。

無事な姿にほっとしたが、アリスはある事に気がついた。


─いつもの香りがしない─


自分だけが分かるエーテルの香り。


それがしないと言うことは…


嫌な予感を感じながらヤ·シュトラの方を横目で見ると、彼女も違和感を感じているのか、怪訝な顔をしていた。

そして、その違和感に駆け寄って行ったグ·ラハとアリゼーも気が付いた。


「あんた、誰だ?」


グ·ラハがそう言い放つと、ガウラの姿をした何かは、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。

咄嗟に武器を構えるグ·ラハとアリゼー。

その瞬間、おぞましさを感じる姿をした魔物が召還された。

[ソレ]は2人に襲いかかった。

その時、何処からか飛んできた片手剣が、[ソレ]に命中した。

武器が飛んできた方を見ると、そこには帝国兵の姿。


「ゼノス!!!」


帝国兵が叫ぶと、更に不気味な笑みを浮かべるガウラの姿をした何かに、体当たりをした。

そして、頭を抑えのたうち回る帝国兵。

ガウラの体に力が抜け、動かなくなると同時に帝国兵も動かなくなった。


「義姉さんっ!!」


慌ててガウラに駆け寄ると、嗅ぎ慣れた花の甘い香りがした。


「ちょっと!いつものガウラに戻ったか分からないのに、不用心に近づかない方が良いんじゃないの?!」


警戒をするアリゼーに、アリスは言った。


「大丈夫です。いつもの義姉さんに戻ってます」

「どうしてそんなことが分かるのよ?」

「俺には…分かるんです」


そして、規則正しい呼吸をしてる事を確認し、安堵したのだった。


そんなに時間がかからず目を覚ましたガウラ。

何があったのか状況を説明してもらい、彼女が見てきた塔の内部状況も聞くことが出来た。

情報を元に、イルサバード派遣団は作戦を立て、バブイルの塔を攻略し、アニマを討伐することとなった。

その作戦にアリスも参加。

襲いかかるテンパード化した帝国兵との激しい交戦。

戦っている者の中に、ヴァルの姿もあった。

そこに、別ルートから進んできたガウラの姿。


「義姉さん、ここは任せてください!」


共にアニマ討伐に加わりたかったが、増援を防ぐ事も彼女を護る事になると判断し、そう叫んだ。


「…生きて帰ってくるんだぞ」


そのガウラの言葉に、アリスの中の闘志に火がつく。

その時、背中に気配を感じた。


「怖気付いて無いだろうな?」

「まさか。その逆ですよ」


自分の後ろにいる人物にそう返す。


「ヴァルさん、後ろは任せます!!」

「言われなくてもっ!!」


2人は息の合った動きで、帝国兵をなぎ倒していく。

互いの動きが分かるからこそのコンビネーション。

その動きは、2羽の蝶が舞う様に華麗であった。