【COLUMN】「景観に配慮する」とは?
2017.12.14 00:12
「景観」は「地に立ってみる環境のながめ」(中村良夫)である。すなわち、「地に立って」=「現場に立って」、「みる環境のながめ」=「全体をみる」であろうから、「景観に配慮する」とは「現場に立って全体をみる」ことで見えてきたものに配慮することだろう。
つまり、色をダークブラウンにするとか、舗装を石にするとか、そういうモノの形態とか意匠を一律で規定するものではない。むしろ、現場に立つ、全体をみる、という技術者のものづくりに対する「姿勢」を問うものである。中央の机の上で考えられた制度が持つコンセプトをそのまま現場に適応することに対して現場で問い直すことである。
しかし、現実には、現場で働く自治体職員や民間コンサルタント技術者らが、この主体的に考える意志や機会をもちあわせていない場合がほとんどである。もしくは説明責任に対する脅迫観念が強く、「景観で配慮する」とはどういうことか「基準」で示してほしいと言われる。でも、基準で示して思考が停止したら、それは「景観に配慮」したことにならない。
この一致しない現実の間をつなぐ取り組みに終わりはない。医師が来院する患者をひたすら診察し続けるのと同じように、公共事業の現場でも、ひとつずつ丁寧に問い続ける必要がある。とても面倒なことなのだが、しかし、そうした対話を重ねることでものづくりの価値が見直され、技術者のやりがいも蘇るのではないかと思う。