第1回十字軍8-大混乱民衆十字軍の悲劇
2017.12.14 03:02
ところが十字軍は最初からイレギュラー発進。正規十字軍が準備中に1096年4月、「民衆十字軍」が出発しちゃうのだ。このアジテーターが隠者ピエール、公会議後、粗末な姿で熱狂的なアジテーションを行い、貧者に施し、喧嘩の仲裁をやり民衆から聖者として崇拝され、数千人がケルンから出発し、各地の総数4万人にのぼった。
火がついた民衆の宗教心はそれほど強かったが、武装したプロはほとんど居ない。そしてこの熱狂は「国内に居る異教徒=ユダヤ人」に向けられ、ケルンだけでなく各地でユダヤ人虐殺が行われた。ユダヤ人は巷間では「キリストを殺した者」とされ、長年差別されてきた。
出発はしたものの、食糧もすぐ尽き、ハンガリーでも略奪を行い、コンスタンチノープルまでで1万人が脱落。ビザンティン皇帝は来た「十字軍」を見てびっくら仰天!言うことをきかないので、仕方なく海峡を渡らせると、彼らはトルコ半島に行って勝手に略奪を始めたのだ。
セルジュークのスルタンもまたこの大集団に「なんじゃこりゃ?」と思っていたが、この虐殺を見て怒り、兵士に攻撃を命じたから、烏合の衆はどうしようもない。民衆十字軍は、エルサレムへ到着する前に姿を消してしまったのである。