女性の数だけ、課題がある。 女性の社会課題を聞く、アンケートの結果はいかに。
Think Of Us Projectのメンバーでもあるタナカナミが主催する「おっぱい展」では、昨年の10月25日~12月31日にかけて、タブー視されがちな女性の社会課題を調査するべく、アンケートを行いました。
3月8日の国際女性デーにThink Of Us Projectのメンバー4人で行ったインスタライブでも、このアンケートを元に女性課題についてお話をさせていただきましたが、女性の生きにくさが「当たり前」になっている現状を改めて感じるアンケート結果でした。
女性は「生きにくい」「差別をされている」と感じますか?
「あまり感じることはない」「まったく感じない」という女性も一定数いますが、「男性の目線で作られた社会のしくみ」に慣れすぎて、生きにくさや差別に対して麻痺しているという人もいるのかもしれません。半数以上の女性が、日頃から「生きにくい」「差別をされている」と感じています。「生きにくさ」や「差別」をあまり感じることがない人が半数近くいたとしても、社会のシステムや世間の半数が女性に対して好意的であるとはいえません。
女性として生きる上でもっとも辛いと感じることはなんですか?
辛いと感じることは、未婚、既婚、世代など、立場によっても変わりますが、多いのはもっとも身近な「生理や更年期障害、婦人科系のトラブルなど体のこと」でした。そのあと「女性だからという理由で家事、育児、介護を押し付けられること」「痴漢や暴行などの性犯罪、セクシャルハラスメントやストーカー被害」と続きます。
興味深いのは、フリー回答の中にあった「普段はあまり女性が損をしてるとも思わないけど、年齢のことで結婚や出産のことを悩まなきゃいけないのは悔しいと思います。やっと仕事が楽しくなってキャリアを積んできたと思うと、結婚、出産適齢期、リミットやリスクがあるだけに、なにかいい方法はないかと、いつも思っています」という意見。
結婚や出産によってキャリアをあきらめる状況は、その女性自身にとっても、社会にとっても大きな損失と言えます。「普段は女性であることで損を感じることはない」という感覚と矛盾するように思えますが、おそらく多くの女性が、男性目線で作られたルールに慣らされ、「これが普通」と当たり前に受け入れる風潮が浮かび上がった回答と言えるのではないでしょうか。
今、一番興味のある女性ならではの健康問題は?
女性ならではの健康問題といえば、年代によって「生理痛」と「更年期」が気になる健康課題かな?と予想はしていましたが、その2つが同じ割合い多いという結果。また、「乳がん」は、女性のがん死の2位(1位は大腸がん)ということもあるので、関心が高いようです。そのあとには「子宮頸がん、子宮体がん」と続きます。「乳がん」「子宮頸がん、子宮体がん」などの女性特有のがんは、定期検診で早期発見も可能。改めて、そういった女性特有の病気に関しては啓蒙の重要性を感じます。
「乳がん、婦人科系疾患、更年期障害、不妊など、女性ならではの健康問題が起きたときに、どんなことを感じますか?」という質問では、「正しい情報や詳しい情報が少ない」「女性ならではの健康の話は話題にしにくい」などの意見も多く、もっとオープンに女性の健康課題について話せたり、正しい知識を得られたり、という場や、社会環境が必要であると改めて感じました。
女性ならではの健康課題を解決するには、多くの人がまずはPCやスマートフォンで情報を検索していることもわかりました。ただ、ネットの情報には、専門家でない限り、その情報が正しいか、正しくないか、しっかり精査しなければならないという問題もつきまといます。ブログなどには経験談が書かれている場合もありますが、最終的には専門家の判断を仰ぐ必要がありそうです。しかし、例えば婦人科を受診するにあたっては、「敷居が高い、行きにくい」という意見も。「誰かに相談したいと思う気持ちはあるので、ある程度専門知識のある方(元看護師さんなど)に電話ではなく直接相談出来る場所があると助かる」など、多くの女性が、もっと気軽に健康問題を相談できる専門家がいるといいと思っていることがわかりました。さらに、「女性ならではの病気の専門医に女医が少ない」「女医さんを紹介してくれる場所があるといい」など、相談する専門家は、同じく女性がいいという自由回答も多く見られました。
女性の抱える課題を解決するために必要なことはなんだと思いますか?
フリー回答をお願いした最後の質問にはさまざまな意見が寄せられました。以下はその抜粋です。
●世の中の男性女性の考え方を明らかにし、男女平等の意識を高めること。女のくせにという事言葉は間違っていると思う。男にしか出来ないこと、女にしか出来ないことがある。
●社会の変化。「女性」の地位を向上したり、「女性」の問題を解決しようとするだけではすぐに限界にぶち当たると思う。男性を含めて社会でのあり方をを根本的に変えないといけない。それらの感覚は幼少期からの教育で潜在意識に植え付けられていくものでもあるので、その面では、女性含めて全ての親たちの意識改革も必要。子供たちの教育はかなり見直していかないといけない。
●女同士なのに、分かり合えない。経験の差で大きく分かれると思います。自分は我慢していたのに、どうしてお前は声を上げるんだと、女性同士で隔たりが出ることが1番怖いのです。まずは女性たちの意識を変えなければ何も変わらないのだと思います。どうしても問題を抱える女性は声が小さく、声を上げれば男性だけでなく、他の女性からも出しゃばりと罵られる事もあります。世間は自分より可哀想な人が這い上がるのを嫌います。ただ、勇気を持って声を上げ続けることが仲間を増やす為に大切だと思います。まずはタブーを無くして、多くの人に認知してもらうことからだと思います。
●何より大事だと思うのが、女性と同じくらい、男性も積極的に解決に向けて動くことだと思う。男性が作ってきた、男性向けの社会なので、男性も一緒に変えないとムリな気がする。また、とにかく女性も「正しい知識」を身につけることが必要だと思う。勉強することが必要。知識は力なので、そうした知識(歴史、制度…)を楽しく簡単に得られる環境があるといいと思う。
●男性だけでなく、女性ももっと知ろうとする場が必要かなと思います(病気だけでなく、妊娠出産子育てもその時になってどっと困難に直面する気がするので)。あと、どうしても男性女性(それ以外の性別も含め)の違いはあるので、そこを認めた上で互いに尊重できる気持ちが必要だと思います。
●女性が独りよがりにならずに課題を理解し、男性へ正しく伝えて理解してもらうこと。
●オープンに話せる環境。性の違いを男女ともに理解できるように、子供の頃からのきちんとした性教育が必要。
女性が抱えている課題は、健康問題など身近なことだけではありません、ジェンダーハラスメント、子育てや貧困、キャリアなど多岐に渡っています。回答の中には保育園のあり方についての問題提起をしている方もいらっしゃいました。
最近では、生理の問題、更年期の問題などが、テレビや新聞、ネットニュースなどでも数多く発信されるようになりましたが、世界経済フォーラムが毎年発表している、男女格差の度合いを示すジェンダーギャップ指数の2021年版ランキングでは、日本は156カ国中120位 (前回は153カ国中121位)と、まだまだ低空飛行です。Think Of US Projectでも、このアンケート結果を受け止めて、改めて何ができるか、真剣に模索していきたいと思います。
最後に、アンケートにご協力いただいた方々に、改めて感謝したいと思います。
文:大橋美貴子 グラフ作成:タナカナミ