永代供養
最近、お問い合わせでよくあるのが、
「お墓の維持が難しくなってきたので、墓じまいをして永代供養をお願いしたい」
というものです。
まず相談者に確認するのは、今現在における祭祀権がどういう状態で、今後どうなりそうか、ということです。
「墓じまい=永代供養」ではない
まず「墓じまい」とは、文字通り墓を閉って処分することです。その理由には二つが考えられます。
- 様々な事情で、祭祀者によるお墓が管理できなくなるため
- 祭祀者が不在のため(その見込みがある)
もし、郷里でのお墓が無理でも、祭祀者の生活圏で祭祀が継続できる場合は、お墓を移転(場合によっては菩提寺を変える)していただきます。(図①)
また、当寺では位牌堂で納骨ができますので、「墓じまい」の上で、こちらで祭祀を継続することも可能です。(図②)
お墓の移転が難しい場合、「墓じまい」をして家墓などを処分したあと、合祀墓に埋葬することもできます。(図③)
よく例えるのは、お墓が戸建てになるかマンションになるか、ということ。お墓自体がなくなるわけではないので、祭祀者(施主)によるご供養の機会が失われるわけではありません。合祀した先に墓参りはできるし、家に仏壇を祀ったり年忌法要をすることもできます。
そして祭祀の継続が不可能になった時点(図a、b)で、ここで初めて「永代供養」が選択肢になってきます。
「永代供養」で祭祀権は消滅
永代供養とは「祭祀者の権利と相続財産(以下、祭祀権)の放棄または消滅」を意味し、寺院や墓地管理者にこれを譲渡することを意味します。
つまり、永代供養にした時点から、仏壇の供養や年忌法要はしなくて済みますが、言い換えれば、今後は先祖との物心の関わりを一切断つことになります。これが永代供養の真意です。
この祭祀権は、戦後に改正された民法と戦前の民法では意味合いが異なります。戦前の「家督相続」制では祭祀権も付帯して相続されました。つまり家を継ぐことはその家の祭祀を相続することと同義だったわけです。
現民法では「法定相続」となって、祭祀権は一般の相続財産から分離しました。
しかし現法にも「祭祀は慣習に従う」と明記されています。
仮に一般財産を相続した時に、係る祭祀も合わせて相続する正当性を、よくよく踏まえていただきたいと思います。(当寺では三十三回忌までの法事をお勤めするのが原則、とお知らせしています)
仮に祭祀の継続が可能な条件があるにも関わらず、永代供養をすることは、恣意的にそれまでの血縁や孝心を断つに等しい。もっときつい言い方をすると「現代の姥捨山」になりかねない、と当寺は危惧しています。
例えば当寺の檀信徒であれば、祭祀者がいなくなった時点でその対象(先祖)は自動的に永代供養になりますから、祭祀者がご健在の間に永代供養にする必要性はないと考えます。
また死後にご自身(もしくは伴侶)の永代供養を、生前に希望される場合もあります。これも条件によって是非は異なります。
縁者に祭祀者となり得る方がおられる場合は、永代供養するかどうかはその祭祀者の判断になります。
もし祭祀者になり得る方がおられない場合に、「生前意思」として永代供養の予約を承ることになります。
いずれにしても、永代供養はくれぐれも慎重に取り扱いをしていただきたいと思います。詳しくはお寺にご相談ください。