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Bar ajito

ウクライナの剣②

2022.05.04 15:00


前回に引き続きウォッカのお話、今回はロシア産ウォッカの

『ペルツォフカ』

について取り上げたいと思います。


今のこんな時期にロシアのウォッカについて語るのは不謹慎、なんて思わないで下さいね。

ペルツォフカは日本語に直訳すると、「ウクライナの剣」です。

今回紹介するペルツォフカはロシア産のウォッカですが、ペルツォフカのルーツはウクライナにあります。


皆さんご存知の通り、現在ロシアとウクライナ間で争いが起きています。

ウクライナの方は隣国のポーランドに避難しているってよく報道で見掛けますね。


実は近年ロシアとポーランドの間で、どちらがウォッカの起源として先なのか?という論争がありました。

ざっくり結果から言うとロシアにルーツがあるという事でこの問題は決着をみましたが、ウクライナは地理的にこの両国に挟まれています。

必然としてウクライナでもウォッカの生産が盛んになります。


傾向としてロシアは皆さんがイメージする無色透明、クリアなウォッカをメインに生産し、ポーランドではフレーバードウォッカの生産が盛んです。


フレーバードウォッカとは何か?

フレーバードウォッカはウォッカをベースに何かの果物だったりスパイスを浸したり、あるいは人工甘味料を添加して作るウォッカの総称です。

リキュールの製法と似てますが、現在日本の酒税法ではお酒に含まれている糖分のパーセンテージで区分しています。


例えば梅酒を例にあげてみます。

一般的な梅酒はホワイトリカー(焼酎)に梅と砂糖を入れて作ります。ホワイトリカーは40度以下のアルコールの為、ただアルコールの中に梅の実を入れるだけでは成分がなかなか溶け出しません。その為にかなりの量の砂糖を入れます。

砂糖を入れる理由は他にもいくつかありますが、ひとつに梅の成分を早く抽出する役目があります。

これで仕上がった梅酒を日本の酒税法に当てはめると一般的な梅酒はリキュール扱いになります。


ちなみに20度以下のアルコール度数で梅を漬けると、もしかしたら個人で楽しむ目的であっても違法になる可能性があるので気をつけて下さい。


しかしポーランドには最強ウォッカのスピリタスがあります。アルコール度数96度!

スピリタスはアルコール度数が強いためもし同じく梅酒を作るとしても、砂糖無しで梅の成分が短期間で抽出可能です。

ただこの方法で出来上がる梅酒はかなり酸っぱいと思うので、梅酒として美味しく楽しむ為には加糖した方が良いと思います。


スピリタスとはいかないまでも強いアルコールで成分を抽出したり、添加したりして造られているのがフレーバードウォッカです。

砂糖の有無がウォッカとリキュールの区分の差と考えていいかと思います。


フレーバードウォッカの中には、カラント(カシス)だったり、マンダリン(オレンジの一種)だったり、レモンだったり、胡椒だったり他にも色々あります。

これらには風味、香りが付いていますが飲んでみると、例えば同じカシス風味でもカシスリキュールみたいに甘くなく、クリアな味わいなんです。


とにかく前置きが長くなりましたが、そんな感じのウォッカ造りが盛んな国に挟まれたウクライナでペルツォフカは誕生します。

尚ペルツォフカはフレーバードウォッカに区分されます。


画像のボトルの通りメインは唐辛子、そして胡椒数種類を漬け込んで造られています。

寒い地域では身体を温めるのにウォッカが飲まれていましたが、さらに効率よく温まるよう唐辛子を漬けたのが始まりだそうです。


そのピリッとした辛い刺激の尖りからウクライナの剣という名前が付けられました。


尚ペルツォフカは商品名ではありません。唐辛子の成分入りウォッカの総称です。たまたま今回紹介しているウォッカの名前がそのままペルツォフカなだけです。日本に輸入されているかどうかは別として他にもペルツォフカ製品はありますし、蜂蜜を加えた商品もあります。


使い道はかなり限られているウォッカです。

ポピュラーなのはカクテルでトマトジュースと合わせて「ブラッディメアリー」のベースに使われます。長年今の仕事に携わっていますが、ストレートで注文されたのは過去に一回だけ記憶がある程度です。

ロシアでは風邪の薬としてストレートで飲まれる事も多いとか。


このペルツォフカは旧ソビエト連邦時代から、現在もロシアの国営企業が作っています。10年くらい前に一度生産中止になり、日本でも一時期パタッと見かける事が無かったことがありました。当時幻のウォッカと言われてたのを覚えています。

今後の情勢次第では残念ながらまたしばらく見かけなくなるかもしれません。


ついでに豆知識ですが、日本で初めてウォッカを生産したのはウクライナから亡命したユダヤの方です。

その方が興した会社が太東貿易。

後にこの会社が一大ブームを起こす、スペースインベーダーを作ったタイトーです。日本のゲーム業界に多大な影響をもたらしたのは言うまでもないゲームです。

自身小さい頃お世話になったファミコンソフト、クソゲー代表のたけしの挑戦状や

、対戦が楽しかった六三四の剣、他にも影の伝説やエレベーターアクションなどのタイトーゲーム、実はウクライナと深い関わりがあったってのを最近になって知り驚きました。


ウクライナ生まれのお酒がロシアで銘酒となる。

またウクライナの方が日本でウォッカ造りを始めた会社がきっかけで、今でこそ他の国にお株を奪われそうになってますが、ゲーム大国日本が成り立つ。


歴史は面白い。前回のブログで取り上げたようにロシア産ウォッカだから飲まない、ではなくちゃんと知る事が大切かと自分は思います。

お互いの違う文化からより大きな物が誕生する、これにはやはり兎にも角にもまずは平和が一番ですね!