漢文を読むコツなどありましたら…その③
さて、前回の漢文についての記事では更に詳しく調べるための工具書を紹介しました。
振返るまでもないけれど、漢語大詞典と佩文韻府。
やり方と言うより辞書の紹介という方が正しいですね。
正直、ひたすら訓読して分からなかったら辞書を引くだけだったから。
ほとんど話すことは無かったですね(笑)
もっと踏み込んで言えば、これは読解ではないのかもしれないです。
読解になれるための準備運動。
プールに入る前の水浴びの様なものといったところでしょうか。
■読解の入口に立つ
さて、学部4回生を卒業して大学院に入ったすぐろですが…
入学式を済ませて博士課程の先輩の話を聞いてみると、
授業について今までと大きく違うところがありました。
それは、「日本語訳を文章にして自分が発表する」という点です。
これまでは、訓読だけ行って頭でなんとなく意味を把握してきたけど、
文章化することで難易度はグッと上がるんですね。
いびつな文章にならない様な単語のチョイスと言葉遣い。他人にも分かるような日本語訳。
初めて院でレジュメを作った時に「あれ?今までと違って苦しい」と感じました。
その一番の原因になったのが「用例」と「出典」です。
今まで辞書を利用する際に、日本語で書かれた意味の欄を見て、
「これはこういう意味です」って発表すればよかったけど、ここではそれじゃダメだったのです。
■用例と出典
辞書の意味を書き写すだけ、では何故ダメなのでしょうか?
それは言葉には沢山の意味やニュアンスがあるからなんです。
例えば「才能」という言葉。
これは辞書で調べると複数意味が出てきます。
今まで通り意味だけを書いてしまうと、何故その意味で捉えたのか根拠がありません。
そこで必要になるのが用例なんです。
今読解している熟語なり文字は、今までどんな意味で、どんな使われ方をしていたのでしょうか?
はい。こういう使われ方を昔してましたよ。
だから今読んでいるこの熟語なり文字はこういう意味ですよ。
上の様なやり取りを行うためには過去の典籍から、
今読んでいるものと同じ意味の「用例」を引っ張ってこないといけないのです。
レジュメの訳が妥当かどうか「用例」をみながら初めて検討ができるのですね。
出典は用例の長いバージョンという感じです。
とある有名なエピソードから、短縮した言葉が生まれ、
その言葉が後世使用されたとしますね。
すると、言葉の意味が妥当かどうか、元ネタのエピソードをそっくり引っ張ってきます。
例えば「四面楚歌」という言葉は今でも使われますが、
これを仮にレジュメに載せるとすれば、出典として四面楚歌のエピソードが最初に記載された『史記』の該当箇所を引いてきます。
言葉の背景にあるエピソードを踏まえて意味を捉えないと、微妙にニュアンス等にズレができるからです。
ちなみに用例や出典に引く漢文も、もちろん読解しておかないといけません。
■漢文読むって大変な作業
つまり、漢文を読むためには、
今読んでいる史料の成立年代より前に成立した全史料が用例・出典の調査対象となります。
漢文を読むために膨大な史料の中のたった数文字を探して読解して、
今読んでいる史料の漢文を読解します。
出てくる文字や単語で意味がとりづらいものは全部この過程を経て日本語訳を行うのです。
本当に時間がかかります(;^_^A
そして苦労して作ったレジュメは授業でバンバン叩かれます。
「すぐろ君、この単語の用例なんだけど、○○にあるよね?見た?」
「(え?マジ?準備した資料にも載ってない。ちょ・・・調べ漏れかよ・・・)・・・すいません。調べきれてませんでした。」
「何で調べてないの?調べたら出てくるやん?」
「・・・。はい。すいません。」
まさにピリピリムード。
すぐろは大学院に来て、「あ、漢文読むのキツイな」って思いました。
それでも楽しかったですが…。
大学院でやっと読解の苦労を味わったすぐろでした( *´艸`)