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旅のチカラ、旅のカケラ

ただ前に進むしかない

2008.07.28 06:00


歩けども、歩けども…。

鉛のように重たい足取り、

前を向くとその距離に気が滅入る、

だったら下を向いて右、左と交互に足を動かせばいい。


出発は早朝5時だった。

ヒマラヤの屋根に隠れた太陽、薄暗い村をひとり歩き始めた。

今日の目標は20km。12時間歩くつもりである。


トゥクチェ、レテ、ガーサ。

だいたい2時間歩くと1つの村が見えてくる。

村に着くごとに小休止。

最近お気に入りのジンジャーティをオーダーした。


背中の荷物の重さに耐えかねて、肩こりがひどい。

さらに、昨日飛ばし過ぎたせいか、足腰の関節がきしんで痛い。

足の裏にはマメができてしまった。

そんな姿をあざ笑うかのように飛行機がヒマラヤをかすめて飛んでいった。


今日は雲が少なく、待ってました!

とばかりに6機もの飛行機が上空を忙しく飛び交った。

しまった…。

いや、今日は今日。明日はどうなるかわからない。

一寸先は闇のヒマラヤフライトだから。

そう自分に言い聞かせ、

もう引き返すことのできない長い長い旅路を急いだ。


ガーサという村を過ぎてからが今日のヤマ場だった。

渓谷沿いの細い道(断崖絶壁)を歩いているわけだが、

雨の影響で土砂崩れが起きていた。


み、道がない!



当然ながら迂回路もなく、

この土砂を越えていくしか手はない。

ぬかるみ、いつ次の岩が落ちてくるかわかならい崖。

これほど難易度の高いアスレチックを体験したことがない。



つかまる場所を探し、何度も足場を確かめながら慎重に足を運んだ。

次の瞬間! 


ガガガガガッ…。


ふいに足元が崩れた。

体勢がよろける、

あぁ、ダメだ!

こたえきれず、激しく転倒した。


走馬灯は見えなかったが、

たしかにスローモーションになった。

このとき咄嗟に思ったこと、

それは「カメラを守らなきゃ」。

宙を舞うカメラ、握っていたストラップを手繰り寄せ、

抱きかかえるようにして我が子を守る。


身体は2回転してすぐに大きな岩に引っかかった。

眼下にはゴウゴウと黒い激流が…。

腕と肘、そして手のひらに擦り傷をつくり、

血が滲んでいたが、カメラは無傷だった。

あと数メートルで、谷底に落ちていたかと思うと

運の強さに感謝しなければなるまい。


日が暮れるまでにどこかの村に辿り着かないと...

そう思うと立ち止まってはいられない。