L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74《ハープ》
L.v.ベートーヴェン
弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74《ハープ》
30代前半のベートーヴェンに降りてきた創作力の爆発。
このころの作風は壮大な規模と内容、劇的な感情表出にあります。
しかし、数年後、それは一変し、規模は縮小し、内面性を深めていきます。
この時期作の《ハープ》と《セリオーソ》は、先の作風の典型を有しています。
動画はタレイア・クァルテットのリサイタル(2021年10月12日、白寿ホールにて)のもの動画がありますので、ご堪能ください。
《ハープ》は、穏やかな情感や瞑想性を聴かせ、「大きな苦しみと悲しみを乗り越えられた。今ならそれを人に語れる。」と言わんばかりの音楽です。
そして《運命》と《田園》交響曲の翌年作であることから、この2大作のエッセンスが取り入れられています。
例えば、以下のようなところです。
第2楽章の祈り、瞑想、静かな情熱は《運命》交響曲の第2楽章と通じ、このころのベートーヴェンの心中はかくありきと語っているようです。
葛藤の嵐が吹き荒れる第3楽章はタ・タ・タ・ターン、《運命》と同じ動機によります。
そして、高揚した感情が次第に冷却し、穏やかな最終楽章へ。ここの感動的な転回は、まさに《田園》交響曲と同じ。
コロナ終息を待ち望む私たちの心中にピタリです。
個人的には、《ハープ》はベートーヴェンの中期作品の中で最も好きな曲。
私の推しは
・第1楽章の終盤、第1ヴァイオリンがアグレッシヴに踊り始め(動画の8′30″から)、その後(8′48″から)、その背後で第2ヴァイオリンとヴィオラが親愛なる語り合いを聴かせます。
涙度100。
②第2楽章の第1ヴァイオリンによる独白(16′18″から)。
涙度120。
③先の第3楽章から第4楽章へ感動的な移行(24′00″から)。
ささくれた心が浄化されていくようです。
涙度200。