【Album Review】Coil - The Ape of Naples【Experimental】
イギリスの伝説的なポスト・インダストリアルバンド、Coilの最終作となる本作は実験的ながらも非常に寂寥感の強い内容となっており、リリースからおおよそ16年程度経った今聴いても、このアルバムからは死の匂いを強烈に感じさせられる。
エレクトロニカ系統の音色だけでなく、バグパイプやハーディ・ガーディなどのワールド・ミュージックの音色や、クラシカルな音色まで用いられており、楽器構成的に見れば非常に多彩さを感じさせられ、これがこの作品に神聖さを齎している大きな要因の一つであると思うが、味の付け方はかなり陰鬱で、どこか不吉さをも感じさせられる音像へと仕上がっているように思える。
この作品はインダストリアルのアルバムとして聴いていると、少々異質なアルバムのようにも思える。「It's in my Blood」や「I Don't Get It」などといったインダストリアルらしい瞬間が垣間見える楽曲も確かにあるが、多くは「Fire of the Mind」や「Tattooed Man」、「Going Up」のような異教的な雰囲気を帯びたネオクラシカル(或いはダークウェーブ)的な楽曲が占めている。
とは言えども、その異質さ故なのか、ポスト・インダストリアルの名盤として未だに根強い人気があるのは確からしく、このアルバムをCoilの最高傑作に挙げる人は多い。
実のところ、このアルバムが発表される1年前の2004年に、主要メンバーの一人であるジョン・バランスが自宅のバルコニーから転落し亡くなっていた為に、このアルバムは謂わば正攻法的に作られたアルバムではなく、1993年から2004年までに録ってきた素材を一つにまとめ上げたアルバムであるという事も興味深いストーリーだと感じる。
残されたメンバーとなった、ヒプノシスの元メンバー(インダストリアル的な文脈で言えばスロッビング・グリッスルの元メンバー)でもあるピーター・クリストファーソンの努力はこの作品に非常に大きな効果を齎していると個人的に感じる。そのピーター・クリストファーソンも、バランスの突然の死を念頭に置いてこのアルバムを作ったのは確からしい。
残念ながら、そのピーター・クリストファーソンも2010年に就寝中に亡くなっており、実質的にCoilというバンドは消滅してしまったが、この作品がポスト・インダストリアルのクラシックとして未だに根強く評価されてるのは変わり無い事実である。
1.Fire of the Mind - 10/10
2.The Last Amethyst Deceiver - 9/10
3.Tattooed Man - 10/10
4.Triple Sun - 8/10
5.It's in My Blood - 7/10
6.I Don't Get It - 8/10
7.Heaven's Blade - 7/10
8.Cold Cell - 8/10
9.Teenage Lightning 2005 - 9/10
10.Amber Rain - 8/10
11.Going Up - 10/10