『みどりのゆび』で平和の花を咲かせたい!
https://booksheepbook.hatenablog.com/entry/20120928/p1 【読書会報告『みどりのゆび』で平和の花を咲かせたい!】より
読書会報告
朝夕に秋の風吹く季節となりました。夏の終わりに開かれた読書会のご報告を、いまさらながらと慌てて書いています。
今回はすみだのはしっこ、こすみ図書で行われました。夏となればシースルーな扉を開け放つこすみ図書にも、近代化の波が! ついにクーラーが設置され、なんと初始動の日でした。いつにもまして快適な空間で、熱く語り合う2時間となりました。
さて、みなさんは『みどりのゆび』をご存知でしょうか? 恥ずかしながらこひつじは、図書館で昔から背表紙が気になりながらも、通り過ぎてきた本でした。タイトルは見知っているのに、中身となるとまったく知らない。そうして、読んでみると、あらまったく想像と違ったわ、という本がときどきありますよね。まさにこの『みどりのゆび』がその手の一冊でした。今回、ぐりのりさんに紹介していただき、読む機会が与えられたことは幸せでした。自分ひとりではめぐり会えなかった本との新しい邂逅。これぞ読書会の醍醐味のひとつだと思います。
岩波書店の『みどりのゆび』愛蔵版です。カラーのイラストをふんだんに使い、今ではあまり見られない布張りの装丁が愛らしい。課題図書の言い出しっぺであるぐりのりさんが持ってきて下さいました。このたたずまいに惚れて、関心を持ったのが『みどりのゆび』を好きになるきっかけだったとか。一同、わかる、わかる。最初にこの本に出会っていれば、興味の持ち方が違っていたのだと思います。版元の心意気が伝わる装丁です。
左が愛蔵版。右が岩波書店の単行本で、今回は全員こちらを持参。中のイラストはすべてモノクロです。児童書とイラストは切り離せない仲ですが、この本もまさに幸せなコラボの結実。ジャクリーヌ・デュエームという画家の作です。著者のモーリス・デュリオンは、『大家族』という小説でフランスのゴングール賞を受賞した国民的作家であり、政治の世界でも活躍したそうです。生涯でただ一冊書いた子どもの本がこの『みどりのゆび』です。第二次世界大戦中、フランスにおけるナチスの台頭といった戦争の矛盾と悲惨を体験したデュリオンの背景から生まれたようです。
愛蔵版の少年チト。原題のフランス語を直訳すると『チト、みどりのゆび』となります。主人公のチトには特別な賜物が与えられていました。それは〈みどりのおやゆび〉です。チトがおやゆびで目に見えない種に触れると、たちどころに宿った命が目覚め、花をつけます。チトはその才を使って、刑務所、貧困地域や病室と、社会から打ち捨てられたような場所に次々と花を咲かせてそこにいる人々の心をも蘇らせます。表紙のおじいさんは、チトの園芸の師匠です。それを知るまで、この表紙が少し怖く感じられました。どうも、これが敬遠してきた理由のひとつかもしれません。美しい挿絵の多い本でありながら、この絵をあえて選ぶところがフランスのエスプリなのかもしれませんけれど。そう言えば、こひつじの教会の棚に『チトスみどりのゆび』というビデオがあります。手塚治虫制作のオリジナルアニメだとばかり思っていましたが、原作がこの本だったのですね。それとは知らず、読む前に観ていました。『火の鳥』を描いたオサムシ先生らしいこれまた心意気を感じます。
ぐりのりさんが、デュエームの絵の魅力を紹介して下さいました。これは『つきのオペラ』という絵本の見開き場面です。なんと美しい!
今回はぐりのりさんにお願いして、この本や著者について少し調べてきていただきました。『みどりのゆび』は全体的な雰囲気が『星の王子さま』に通じるところがあるという意見が参加者から聞かれました。一般的な日本の子どもにとって、フランスの児童文学に触れる機会と言えば、いまだに『星の王子さま』くらいではないかと思います。私たちがその物差ししか持っていないにしても
これまで取り上げてきたアメリカやイギリスの児童文学とは何かが違うのを感じました。子ども向けに書かれているというより、子どもも読めるという書き方だからかもしれません。『みどりのゆび』は、文明がいかに進もうとも、戦争はなくならず、かえって地球上の矛盾や問題が複雑かつ深刻化し続ける今だからこそ、大人にも読み伝えたい本だと感じました。私たち人間に必要なのは、原発というエネルギーでなく、植物。草であり花であり・・・。チトの心に耳を澄ませてみたいと思います。
フランス児童文学入門書の決定版だとアマゾンの説明にあります。ふだんは図書館司書をしておられるぐりのりさんに教えていただきました。これは便利。
新しい試みとして、最後に本屋さんのポップ作りをしてみました。もしも自分が書店員ならば、どんなことばでおすすめするか?
いやー、難しかった。でも、みんなだんだんと本気、濃い時間を体験しました。これ、楽しいです。イラストや短文など、みなさんの隠れた才に触れることができて、面白かった! いやはや、こひつじは長文タイプなので、コピー文はだめだめ。
熱中したあまり、また読書会風景の撮影を忘れてしまいました。顔見知りが増えて、始終なごやか。すてき女子会風に磨きが。たくさんのご参加をありがとうございました。これは会が終わり、お別れの様子です。この後、墨東まち見世関連のイベントがあり、参加できる方たちはそちらにご一緒しました。
「みどり」尽くし。ぐりのりさんが、信州のルバーブで作った自家製ジャムをおすそ分け。冷煎茶は軽井沢の巨大スーパー・ツルヤオリジナルの農家の荒茶を使用。濃くておいしい。そして、こすみ図書と言えばゼリーです。今回は涼しげな夏の高原風なお茶会!
https://ameblo.jp/04to06/entry-12213078329.html 【読みきかせ【小学校6年生】(10月)】より
今回の読みきかせは、事前にテーマが設定されていました。「小学生の時のお気に入り」
さて、私が、小学生のころのお気に入りで、今でも読もうとしたら手に入る本で、(なにしろ、小学生のころ なんて何十年も昔ですから、すでに、絶版になっている本もあるわけで…(x_x;)
かつ、15分以内に紹介できそうな本。うーむ ( ̄ー ̄;次回も同じテーマで、4年生のクラスを担当することになっていますが、今回は、6年生…悩みました。
10〜15分という限られた時間での「読みきかせ」では、絵本を読むことが多いのですが、
私が絵本に出会ったのは、娘が生まれてからのことです。
私自身は、かつて家庭でも、学校でも、「読みきかせ」をしてもらった経験がありません。
自分が小学校時代に読んだ本…で、あれこれ、悩んだ末、選書したのが、6年生には、これ!
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『みどりのゆび』モーリス・デュリオン 作ジャクリーヌ・デュエーム 絵
安東次男 訳 (岩波書店)
フランスの作家モーリス・デュリオンさんが書かれた物語を、安東次男さんが訳された作品です。
1965年初版ですが、現在も、変わらず、岩波書店から発行されています。
私が小学校を卒業する際、その当時の校長先生が、卒業生全員(180名くらいでした)の卒業アルバムに、各児童の希望する言葉を、毛筆で書いてくださいました。
一人一人、アルバムを持って校長室へ入室すると、校長先生が、どんな言葉がよいかを尋ねられて、目の前で、したためてくださいました。
私のアルバムに記された言葉は、「平和の心」です。なぜ、そんな言葉を望んだのか。
その前年、広島の平和記念資料館を初めて訪れて、衝撃を受けたこと、そして、
そのころ読んだ本が、この『みどりのゆび』だったのです。主人公の「チト」は、そのころの私の憧れ、ヒーローでした。ここの小学校の6年生は、ちょうど、9月に、広島へ修学旅行へ行ったばかりです。タイムリー かな と、考えたのでした。
物語の主人公「チト」は、先っちょがカールした金色の髪の毛、大きくて青い目、つやつやとしたばら色のほおの美しい男の子で、その両親も美しく、「すごいお金持ち」でした。
「チト」の「おとうさん」は、「鉄砲の商人」つまり、大きな兵器工場の経営者だったのです。「チト」は、ただ一人の後継者として、将来を嘱望されていた男の子でした。
チトは、お母さんに、家で教育されていましたが8歳の誕生日になったとき、学校へ入学しました。でも、なぜか、学校では、チトは眠くなってしまうのです。
学校での第一日めに、チトは0点をポケットにいっぱい入れて、うちへ帰り、二日めは、罰として二時間の居残り、そして、三日めの夕方、先生は、おとうさんにあてた手紙をチトにもたせました。
《あなたのお子さんは、ほかのお子さんとおなじではありませんので、わたしどもではおあずかりいたしかねます。》お父さんもお母さんも、悩みました。
でも、お父さんは、決断力があり、何よりチトを愛していたので、学校へ行かせず、「新しい教育」を試すことにしました。
ものごとはじっさいに観察しておぼえるものだということを、あの子におしえてやろう。
小石や、庭や、畑のことをその場でおしえる。町や、工場が、どんなふうにはたらいているか説明する。
こうしたことがすべて、チトが一人前のおとなになる助けのなるわけだ。
つまり人生とは、一番いい学校なのだ。と。そして、最初の授業の場は「庭」で、先生は、庭師のムスターシュ(ひげさん)でした。
このひげさんが、チトが、「みどりのおやゆび」を持っていることに気づきました。
もちろん、15分では、読みきれませんから、本文を抜粋して読み、ほんのさわりを紹介しただけです。
「みどりのゆび」が、何なのか は、あえて説明しませんでした。
最終的に、「チト」は、「おとうさん」の「兵器工場」を継がなかったことを子どもたちに告げ、「気になった人は、読んでね。」と、丸投げ (^^;;
さあ、興味を持ってくれる児童はいるのでしょうか…?
『みどりのゆび』は、ファンタジーですし、声高に「戦争反対」を叫んでいるわけではありません。
でも、「チト」は、知りました。だれも、いちばんたいせつなものを戦争でうしなうことを。
子どもたちにとっては、岩波少年文庫版が、手にとりやすいのですが、(小学校図書室の蔵書も、文庫版でした)愛蔵版は、挿絵がカラーで、装丁も美しいので、ぜひ、愛蔵版も見てほしいところです。