Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

WUNDERKAMMER

アガザル

2017.12.19 09:17

同級生の話。

彼は高校生の頃、帰宅途中に不気味な物を見たという。

田圃に挟まれた狭い路の上で、何か真っ赤な物がゆらゆらと踊っていた。

猿のようにも見えるが、顔がない。

どうやら頭の天辺から足の先まで、赤っぽい毛で覆われているようだ。

近よれずにいると、それは踊りながら田を横切り、じきに見えなくなった。

家に帰って家人に話してみると、お祖父さんの顔が険しくなった。

「アガザルが出おったか。こりゃ注意せんといけん」

アガザルとは赤猿が訛った言葉らしい。

その正体はわからないが、時折山から下りてくる化生の物なのだそうだ。

直接は人に悪さをしないが、そいつが出るとまず火事が起こるのだと。

確かにその数日後、村のある家屋が不審火で焼け落ちたという。

「俺が見た奴が本当に、火に関係あるのかどうかわからないけどな」

彼はそう言って、話を締めくくった。