私の財産告白
何やら怪しい感じのタイトルですが、中身はとても立派な内容です。オビに「幻の名著」とあるので、本多静六という人も知らずに気になって購入、一気読みしました。
本多静六さんという方は、日本の林学者、造園家、そして投資家でもありました。 生まれは、武蔵国埼玉郡河原井村(今の埼玉県久喜市菖蒲町河原井)。裕福な農家であった折原家の第6子として生まれました。しかし、本多さんが9歳の時に父親が死亡、多額の借金を抱え、一家は、そこから今までとは違う苦しい生活を強いられるようになります。貧農で苦学し東京同人学校(後に東京農林学校から帝国大学農科大学)へ進学、一時は勉強の辛さに耐え兼ね、自殺未遂を起こします。この後一発奮起し、猛勉強。見事首席で大学を卒業します。大学卒業後は、林業を学ぶためドイツへ留学。ドイツで出会った恩師、ブレンタノ博士から、「いかに学者といえど、優に独立生活できるだけの財産をこしらえなければ、研究の自由も束縛されてしまうから、その辺のことからしっかり努力しなさい。」とアドバイスを受け、「鉄道と山林に株式投資をしなさい。」という言葉に従い、後年、その二つの分野への投資を始めます。そして、蓄財の根幹は勤倹貯蓄であると家族を説得し、月給の1/4を貯蓄に回し、徹底した倹約生活を始めます。そして、その倹約生活で捻出したお金で鉄道、山林関係の株式に投資をします。また、1日、1頁の物書き(著述原稿として価値のあるもの)を自らに課します。また、長時間の散歩も欠かさず、心身共に健康を維持し続けていたそうです。このような努力が実を結び、本多さんは、本来の東京農林学校の教授、日本の公共の大規模公園の開設・修正に携わりながら、今の価値で100億円にもなる財産を一代で築き上げたのです。また、25歳から始めた「1日、1頁」の文筆活動も実を結び、短中編合わせ370冊もの著書を書き残しました。
翻って、現代日本。これから銀行の長期利率も低迷し、経済成長に飛躍的な伸びが期待できない一方、確実に寿命は長くなり、安易に病気にもなれない日本人。高齢化した時に安心して人生を過ごすことが出来る資金(蓄財)をどう捻出するか、、というのは、頭の痛い問題だと思います。この点、本多静六さんのような生き方こそが、これからの日本人によい人生を過ごすヒントを与えてくれるのではないかと思います。奢侈な生き方を見直し、その分の余剰を自分の心身、家族の未来の為に投資する。そういったムダのない生き方が、更に、本人の人間的な成長を促して行く。。。
最近でも厚切りジェイソンさんが書いた投資の本を読みましたが(彼は、本多さんと同様、倹約を生活の旨とし、そのお金で投資信託を行い続けている)、我々シロウトがやる投資の成功の秘訣は「その投資にその人のしっかりした人生哲学が反映され、人生基盤がしっかりしていること」だと思います。そういった意味では、本多さんの投資、蓄財方法は、本人の生き方、人生哲学の反映であり、生き方と投資/蓄財が表裏一体で、矛盾がないと感じます。
「お金」というのは、使い方も管理もとても難しいものです。意義あるお金の使い方には、そのお金を持っている人の資質が問われます。例えば、「宝くじ」に当たって一発で巨額の富を築く人がいますが、そいうった人のその後の追跡調査では、宝くじを当てたことで、生活が急に華美になったり、宝くじが当たったことをつい、周りの人に吹聴し、それを聞いた周りの人々が借金の無心をしにきてり、いかがわしい投資家にお金儲けの話にのせられたり、、と、後年(その宝くじが当ったために生活がかえって乱れ、)借金を背負ったり、お金に関するトラブルに見舞われたりする人も多いそうです。
その一方、巨額の富を得た人の中には、自分のところにあるお金は、たまたま、自分が預かっているだけで、これは社会へ還元すべきもの、と考え、自らの資産を公共の為に還元する人もいます。お金があることで、人生がしっかりする人もいるし、かえって人生を踏み外す人もいますが、大切なのは、本多静六さんのような、お金を持つ人の「哲学」なのかも知れません。
(*)本多静六さんの本には下の「私の生活流儀」「人生計画の立て方」他いろいろあります。