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WUNDERKAMMER

[静岡]使え使え使え

2017.12.20 08:52

静岡県の某温泉地に行ったときの話。 

 法事がてら、彼女つれて実家に近い静岡の某温泉地へ行った。 

ほぼ飛び込みで宿を決め、夕飯朝食ついて26000円。 「ネットも通してないし、飛び込みだとこんなもんかね?」って部屋へ通してもらったら、大きな部屋で驚いた。

 リビングエリアで12畳、襖で区切って寝室が別に8畳はある。部屋風呂も檜造りの立派な奴。 

「これは安いね~。部屋は古めかしいけど、何か威厳あるってか立派な部屋だねっ」って早速大浴場でのんびり。 

 夜になって晩飯。部屋食頼むとすっげー豪華。 新鮮な魚介に何とか牛の鉄板焼きに、お酒も何本かついて、 「ここいいんじゃない?絶対穴場だよ、大成功だね」って2人で宴会。

 酔っ払ってから部屋風呂2人できゃっきゃうふふ。 襖の奥の寝室に移って、並んだ布団に2人並んで、電気消して静岡の深夜テレビを見ていた。 そのうちに彼女が寝息を立てだし、俺もまどろみながらテレビを見て、いつの間にか寝入ってた。 


夜中にふっと目が覚めた。多分真夜中。障子を通した月の薄明かりだけで、辺りはほぼ闇。

 あれ?テレビはスリープにしてたわけでもないのに、いつの間にか消えてる。 

彼女が消したのかな?今何時?

携帯で時間見ようと手探りで枕元を探した。 

すると何か音がする。ふーっふーっって荒い息遣いのような音。 

彼女、変ないびきしてるななんて思いながら携帯発見。時間を確認すると2時少し過ぎ。 


まだ寝れるななんて思いながら、画面の明かりで彼女の顔を見ると、彼女は起きていた。

 携帯の明かりでかすかに見える彼女の顔。

目を見開いて歯をむいて笑っている。 

さっきの荒い息遣いは、剥いた歯の間から漏れる彼女の息の音だった。 

え?え?って俺パニックになりながら、彼女に「大丈夫?どうしたの?」と声を掛けると彼女が顔をこちらに向けたまま何かを指差した。 

首だけゆっくりそっちへ向けて見ると、いつの間にか襖が開け放ってある。奥のリビング側はさらに真っ暗。 

そして彼女の指差した先に携帯を向けると、 鴨居からまるで首吊りの輪っかを作った、浴衣の帯らしきものががぶら下がっていた。 え?え?何これ?どういうこと?もう俺は頭の中で今起こってることを処理できずにパニック。 身動きも出来ない。

彼女は相変わらず目をぎらぎらさせて満面の笑み。 そして口だけ動かして何か言い出した。

 小さな声で「使え使え使え使え使え使え使え使え使え」って。  


オカルトは好きだけど怖がりな俺は、もう脳が状況を処理できませんとばかりに昏倒。 そこから先の記憶はない。

それから暫くたって、かすかに聞こえる目覚ましテレビ大塚さんの声で目がさめた。 

うわああああ・・・・夢だった!ちょー怖かった!リアルだし何だよこれ。

でも襖は閉じきってあるし、変な帯も下がってないし、テレビも点けっぱなしだったし、やっぱ夢か良かった。 

横を見ると彼女は・・・寝入ってる。でも何か顔が涙や鼻水でグチャグチャ。 

取り合えず起こそうと彼女を揺するとビクっと体揺らせて起きる。恐れと不信の入り混じったような顔で俺を伺っている。  

「どうしたの?大丈夫?」と聞くと恐る恐る話し出した。 

「昨日の夜とても怖くて不思議な夢を見た」と。 


夜中にふと目が覚めると俺が布団にいない。 

枕もとのデスクランプを点けると、暗い部屋の中で鴨居に帯をかけていて、まるで首をような吊る準備をしてたと。 彼女驚いて「何してるの?」って声をかけたら、 振り向いた俺が満面の笑みで

「ほら、準備出来たよ、これを使いな」って言ったんだと。 


彼女の夢はここまで。その話を聞いて飛び上がるほど驚いた。 

でも、あえて俺の夢の話は彼女へは伝えなかった。 二人で同じような夢を見たということが分かると、何らかの呪い的なものを受けたような気が確実になると思って。 

怖い夢見たんだね、よしよし、大丈夫大丈夫っつって慰めて、取り合えず朝食行こうかって部屋を後にした。 二人ともあまり朝飯に手をつけないまま食堂を後に。

 途中レセプションカウンターで、 「すみません。僕らが泊まってる部屋って、首吊りとかあった部屋ですか?」って仲居さんの一人に確認した。

 勿論言葉を濁されたけど、チェックアウトの時、何故か宿泊代が6000円引かれて安くなっていた。 

以上です。

長文規制で細かい部分を端折ってしまいましたが概ね実話です。 某温泉地○○○の○○の間にお泊りの際は皆様ご注意を… 部屋は素敵だし料理も豪華で美味ですが、無理心中する可能性もございます…