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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派の時代29-ヴェルディと教皇

2022.05.05 11:24

売れっ子作家となったヴェルディは、次々とオペラを発表し、「ガレー船の日々」というほどの忙しさだった。次の「十字軍のロンバルディア人」も権力批判があり、オーストリアのミラノ司令官が検閲したが、ヴェルディが「作品を破る」と言って、ミラノの市民が沸き立ち、結局上演されて大好評を博した。

そして彼は1846年、「アッティラ」を創る。アッティラとは、ご存じの通り、ローマ帝国末期にヨーロッパを席巻したフン族の王である。オペラはアッティラがイタリアへ攻め込んだところから始まるが、プロローグから、敗北した女戦士をして「聖なる祖国への無限なる愛よ」と歌う。

そして第一幕の2場では、のっけから「神の土地ローマに侵入すると罰を受ける」という予言から始まり、どう見ても当時の教皇レオ1世にしか見えない老人レオーネが現れて、恐れてアッティラはローマから退却する。これは実際にあったレオ1世の会見を基にしている。

何とこの2か月後にピウス9世がローマ教皇になるのだから、このオペラはどう見てもピウス9世がイタリアをオーストリアから取り返すというメッセージである。ピウス9世への期待は高まるばかりといえよう。そしてこのオペラが語るように、教皇にはイタリア解放の期待が寄せられていたのだ。