文政権の韓国は法治を捨てたファシスト全体主義国家
「革新系進歩派」だという文在寅(ムン・ジェイン)政権と政権与党「共に民主党」が、これほど腐敗し、卑劣で、法治と言論の自由を否定し、数の力で権力を独占し、反対勢力は言語道断に切り捨てるファシスト全体主義政党であるとは思わなかった。
検察の機能、権限を大きく変え、憲法にも違反する欠陥法案を、言論の府たる国会で審議らしい審議はまったくせず、文在寅政権が残りわずか1週間となった段階で、任期最後の閣議に間に合わせて、閣議決定と公布にまで持ち込ませるために、ありとあらゆる姑息な手段を駆使して、法案採決から公布まで一瀉千里のごとく一党単独で強行したのである。
<自身が法の網から逃れ、不正をもみ消すための法改正>
問題の法律「検察庁法改正案」と「刑事訴訟法改正案」は、検察から捜査権をはく奪し、起訴権だけを残し、文在寅と青瓦台関係者が関わった選挙違反事件など数々の権力不正事件の捜査や、先の大統領選挙で敗れた与党候補・李在明(イ・ジェミョン)が関係した不動産開発汚職事件など数多くの疑惑の捜査は、検察から警察に移管し、結局は事件を全部あいまいにして蓋をし、自身には罪が及ばないようにするためのもので、韓国メディアは「文在寅保護法」「文政権防弾法」「李在明免罪法」などと呼んでいる。文在寅が任期の後半に血道を上げて取組んできた「検察改革」と称する政策は、結局は、退任後に自分自身に検察の追及が及ばないようにするための自己保身のための手段に過ぎなかったことが、これで白日の下に晒されたのである。
こんな時代遅れの一党独裁専制集権国家が、世界の10大経済国として「先進国」入りしたと豪語し、民主主義のリーダー国の集まりであるG7に加わろうとしている。恐ろしい独裁専制国家は、北朝鮮とともに中国・ロシアとおなじレッドチームに入ることこそふさわしく、TPPにもQuadにも加盟させてはならない。かつての開発独裁の国らしくせいぜい第三世界の開発途上国レベル並みの格として扱うことのほうが正しいかもしれない。
今回の文在寅政権による法改正(改悪・廃止)の中身がいかに異常で、その立法手続きがいかに議会民主主義的な手法からかけ離れていたかを見れば、この政権の異常性、権力を私物化した醜く、むごたらしいその前近代的な政治感覚、あざとい権力観がよく分かる。自分たちは両班の特権階級で、庶民など物言わぬ奴隷だと考える、李氏朝鮮の時代とどこに違いがあるのか?
まず法案の中身だが、与党は「検察正常化法案」と呼ぶのに対し、野党や保守系メディアは「検捜完剥(検察捜査権完全はく奪法)」、別名「文在寅・李在明保護法」と呼び、当事者の検察官らは「犯罪者放置法」と呼んで、真っ向から反対している。一方、左派系のハンギョレ新聞や政府系テレビKBSは「検察捜査権分離法案」「捜査権縮小法案」と呼び、要するにその呼び方をみれば政権とのそれぞれの立ち位置がよく分かるようになっている。
<検察を目の敵(かたき)にしてきた文在寅左派政権>
かつて検察の取調べを受け、とことんいじめられた経験をもつ左派運動圏出身者の集まりである文在寅政権は、当初から検察改革を政権の主要な政治目標に掲げてきた。同じ革新系の元大統領・盧武鉉(ノ・ムヒョン)が退任後、検察の捜査を受け自殺したことに恨みをもつ文在寅は、検察の権力を削ぐことに政権の命運を託した。とりわけ法務部長官に指名した曺国(チョグク)が家族スキャンダルで失脚すると、検察の捜査権の見直しに拍車がかかり、従来はすべての犯罪について検察が警察に対する捜査の指揮権を行使してきたものが、2020年に国会で成立し、2021年から施行された関連法では、腐敗事件など6大犯罪を除く一般的な犯罪については捜査権が警察に移管された。「6大犯罪」とは、不正腐敗、経済犯罪、公務員汚職、選挙違反、防衛産業事件、大規模災害で、大統領令によって定められた。
さらに国会議員や裁判官など高位公職者に関する不正を専門に捜査する高位公職者犯罪捜査処が2021年1月に設立され、そのトップの任命権は大統領が握ることで、自身に対する捜査には手ごころを加えることができるようにした。
これらの法改正は、野党の反対のなか与党「共に民主党」の単独強行採決によって行われ、こうした検察に対する政府・議会の圧迫が、当時、検察総長だった尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏の辞任、さらには大統領選出馬に繋がった。つまり、尹大統領を誕生させたのは、文政権と政権与党だったのである。
<「偽装離党」「細切れ会期」何でもありの議会戦術>
そうした反省もなく、今回の検察の捜査権を完全に奪う法案は、今年3月の大統領選挙で尹氏が大統領に当選し、文在寅や李在明に関わる不正事件に対し検察の捜査が及ぶことが現実化したことで、急きょ法案化したもので、4月12日に与党が党の公式な法案として採択してからわずか21日で国会本会議での成立・公布までこぎ着ける即席立法だった。しかし、この間に与野党の間でいったんは決まった合意案がその後破棄されたり、法政委員会など各委員会の間をいったり来たりする間に条文が修正されたりして、国会本会議に掛けられた実際の最終法案について、その具体的な中身はほとんどの国会議員が理解していなかったといわれる。また与党議員のなかには内心は法案に反対だった議員もいたが、反対票を投ずれば次の選挙で公認を取り消すと迫り、出席の与党議員全員が賛成票を投じた。つまり、議会本来の機能を果たすことなく、国会の300議席中171議席を占める与党「共に民主党」の圧倒的な数の力を見せつけ、数の力で権力を握れば、あとは何でもできる、何をしても許されるという醜悪な姿を晒す結果になった。
それでは、この検察捜査権はく奪法案の成立から公布まで、その手順がいかに民主主義のルールから外れていたかを記録しておきたい。
この法案を成立させるためには、まず法制司法委員会の法案小委員会や案件調整委員会で審査する必要があり、案件調整委員会は与野党各3人で構成されるが、与党議員が「偽装離党」して無所属議員として案件調整委に送り込まれ、数あわせをした上に、最大90日まで認められる審議期間をたった20分の審査で法案を通した。国会本会議では、野党側が審議を引き延ばすためにフィリバスターと呼ばれる議事妨害にでると、会期をその日に打ち切る動議を出して可決。規程で3日後と決められた次の臨時国会では、審議中の法案は討論なしでいきなり採決できるというルールに従い、2回にわたって会期を打ち切って次の臨時国会の開催を決定。その臨時国会では、野党議員が退席するなかで、与党系議員の賛成多数で「検察庁法改正案」は開会から8分、「刑事訴訟法改正案」は開会宣言からわずか3分で法案を可決した。因みに韓国国会での議員票の採決は、自席での電子投票で行われ、即座に議場の大型スクリーンに賛成・反対の議員名が表示される。
要するに「共に民主党」は北朝鮮の金氏王朝の下の労働党と同じで、誰も反対できないし、異見も許されない全体主義政党なのである。
<任期最後の、自己保身のためだけの閣議>
国会だけではない。青瓦台も異常な動きをした。「刑事訴訟法改正案」の採決が行われた5月3日には、午前10時開催の国会本会議の採決を待って、大統領府青瓦台で国務会議を開き、閣議決定の上に、ただちに法案を公布するために、通常は午前10時に開かれる閣議の予定を何回も変更し、結局、午後2時の開催に遅らせた。この5年間の任期中、閣議の開催時間を変更したことは1回しかなく、午後に開催したことは一度も無かった。なにもかも、検察から捜査権を奪う法律を閣議決定し、公布を宣言するための措置だった。
<韓国国会法で活動期間90日と定められた案件調整委は17分、採決も8分で処理>
恥も外聞もなく、これだけあからさまに姑息な脱法手段を駆使したうえで、法案の公布を急ぐ理由は何なのか?経済の実力を背景にG10の先進国になったと豪語する国が、これだけ前近代的で非民主主義的な権謀術数を政治に持ち込み、自分たちの陣営の利益だけを謀ることは許されるのか?
もともと検察から捜査権をはく奪する法案は、憲法違反だという指摘が当の検察当局から出され、憲法裁判所に提起されたほか、案件調整委員会の委員の指名手続きについても、野党側からは憲法違反の指摘があり,中止を求める即時抗告が出されている。
こうして議会民主主義と法治主義を完全に葬り去り、74年続いた刑事司法体系がいとも簡単に突き崩されたのである。そして、検察から捜査権を奪うことで、文在寅をはじめ不正を抱える政治家は罪を免れ、一般市民は犯罪の被害に遭ってもまっとうな捜査は行われず、犯罪者は放置されたまま、被害の救済は行われない可能性がある。
<日本の司法制度と法の精神を学ばなかった韓国>
日本では、たとえば東京地検特捜部といえば、法律に基づいた厳正中立な捜査権限と豊富な法務知識と組織的で巧みな捜査能力で、一度狙いを定めた特捜事件は、必ず立件すると恐れられた存在で、特捜部が間違いを犯したり虚偽をでっち上げたりするなどとは、日本国民は誰も思っていない。
ところが、韓国では検察は権力に弱く,権力に阿(おもね)る存在だと思われている。文在寅は、慰安婦や徴用工に関連した裁判で、韓国は三権分立が確立した国だから、司法には口を挟めない、挟まないとしきりに言ってきたが、法務長官が何度も指揮権を発動して検察の捜査を妨害し、言うことを聞かなければ検察総長さえ懲戒して辞めさせようとしてきた。こんな国のどこに近代的な三権分立の概念を理解し、それが制度として成り立っているなどと言えるのか。
日本の検察制度は、検察官自らが被疑者,参考人などを直接、取り調べ、証拠の収集を積極的に行い、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に限って起訴することを旨としている。検察の精神や基本姿勢を示すものとして2011年9月28日に制定された「検察の理念」の第1項には「国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を自覚し,法令を遵守し,厳正公平,不偏不党を旨として,公正誠実に職務を行う」とあり、第3項には「無実の者を罰し,あるいは,真犯人を逃して処罰を免れさせることにならないよ う,知力を尽くして,事案の真相解明に取り組む」とある。
日本の制度のように、警察が初動捜査・逮捕・取調べし,検察が再度捜査し証拠固めをして起訴する、というほうがはるかに無実の人を罰する冤罪を防止し、有罪判決を得る確立も高くなるはずだ。さらに日本には「起訴便宜主義」といって、公訴を提起し,これを維持するに足りる十分な犯罪の嫌疑があり,かつ,訴訟条件が具備している場合でも,公訴権者(検察官)の裁量により犯罪の軽重、情状などを考え合わせて起訴しないことを認める制度が採られている。さらにそうした検察の判断に不服なら「検察審査会」制度があり、「不起訴不当」、「起訴相当」などの判断を示し、検察に捜査のやり直しを求めることもできる。今回の韓国の検察庁法改悪法では、警察が一度、不起訴にした事件に関して、市民や告発者が再度捜査を求める権利は排除されている。
韓国は、日本の刑法や民法、刑事訴訟法をはじめ、多くの法律を韓国語に直訳して使用してきた。翻訳では、それこそ日本語の助詞の使い方までそのまま残しているため、韓国語の文法、言い回しには合わない悪文の典型とされるのが、韓国の法律だった。そのようにして日本の法律、司法制度を学んだはずの韓国だが、今回の検察から捜査権をはく奪するという法案を見る限り、日本の司法制度の骨格となる国民のために奉仕し、公共の利益のために厳正公平、不偏不党、公正誠実につとめるという精神、基本姿勢はまったく学んでこなかったようである。
それにしても、文在寅は今回の検察改革で、自分の罪はすべて追及を免れることができると思っていたら考えが甘い。これまで指摘された不正や疑惑がすべて真実が証明されたまま永遠の疑惑として残されただけであり、文在寅の歴史的評価はそれによってマイナスの評価のまま永遠に固定されるだけだ。韓国人が真実を追及せず、文在寅支持者らが過去を忘れようとしても、日本から文在寅の罪悪はことあるごとに指摘し続けるだろう。文在寅の政権5年間に日本が被った恨みはそれだけ深いということを思い知らせなければならない。
(尹錫悦大統領就任式の会場準備すすむ国会前 2022/05/04)