ロマン派の時代30-ハイネの政治詩
2022.05.06 11:29
「バイロンハイネの熱なきも♪」バイロンと並び称される抒情詩人であり、恋愛詩人のハインリヒ・ハイネだが、実は時事詩も書いているのである。彼は1843年にカール・マルクスとパリで親交を深め、翌44年にシレジアの貧しい職工が蜂起した「シレジアの職工を発表して、エンゲルスの激賞を受けた。
その年に発表された「新詩集」には24編の政治詩を入れ、ドイツ最高の政治詩として高く評価されている。もともと宮廷には吟遊詩人が侍り、王の偉業を讃える詩を詠んで、パーティで発表した。政治と詩は密接に関係がある。フランス革命では風刺詩人が大活躍した。
実は1840年代は「傾向詩」と呼ばれる政治批判の詩が大流行した。ところがハイネは47年に「アッタ・トロル」という叙事詩を発表して、ユーモアも含めて「傾向詩」を批判するのである。「アッタ・トロル 傾向熊 道徳的宗教的 夫として劇場的 時代精神に誘惑されて 森から出てきたままのサンキュロット」
「踊りは甚だつたないが 気高き高潔なる胸には信念を抱き しばしば 悪臭を放ったこともあり 才能はないが性格あり」要するに、下手くそということである。政治や宗教では、下手でも時流にのったり、上の庇護でブームになることがままあってベストセラーになるのは現代でも変わらない。