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空想都市一番街

Heart of GOLD 21

2022.05.07 13:51

話が終わると響たちはそれぞれ部屋に入って横になった。


拓也の部屋のソファベッドは、少し硬かったけどそんなに寝心地は悪くない。


拓也はおやすみ、と言うとすぐ寝息を立てて寝てしまった。


響は、自分のために情報を探したり苦労して、疲れたんだろうと思った。


響も寝てしまいたかったけど、なかなか寝付けなかった。


父と叔父の間に何があったのか。

考えれば考えるほど、頭の中は混乱して眠れない。


響は諦めて、何か飲み物でも飲もうかとリビングに行った。


するとそこにはレナもいた。

「響、眠れないの?」


「はい、なんか、落ち着かなくて。」


レナは黙って立つとキッチンで何か飲み物を入れた。


「はい、ココア。落ち着くよ」


響は入れてくれたそのココアを受け取り、飲んだ。


「なんかホッとします。レナさんありがとう」


優しい味がじんわりと心に広がる感じがした。落ち着く


「あんなこと知ったら、そりゃあ驚くよね。拓也さんも、響がショック受けるの分かってたから辛かったろうね。でもあんたの願いを叶えたかった」


レナはチラリと、拓也の部屋を見た。拓也は軽くいびきをかいてグッスリ寝ている。


「私拓也さんのこと好きなんだ」


響はココアを飲みながら、レナの告白を聞いていた。そんなの分かってたよ。


「クールで優しくて、不器用でまっすぐで。気に入った人のためなら平気で体壊すくらい無理してさ。響のことも、本当に気に入ってて、どうにかしてあげたいんだよね、あの人」


響はココアを見ながら黙っていた。


「でも弟のことは知らなかったな。きっと、その事があるから、バンドしないんじゃないかな。

弟とやってたバンド以外あり得ないんじゃないかな。…スネアぶち破るのも…ホントはそういうことが、胸によぎるからなのかな」


響は前にスタジオで見た拓也の姿を思い出していた。


スネアを破って震えおののいていたのは、そのことが頭によぎるからなのかもしれない。


悲しそうな顔をしていたことが忘れられない。


「僕が叔父さんに会う願いが叶ったら、ちゃんと本当のことを知ったら、拓也さんの心も少し、救われるかもしれないですね」


レナは微笑んでうなづいた。


「きっとあの人自身も抜け出したくて、余計に響の力になりたいのかもしれないね。会えるといいね。

…でも響、あんたは、あんたのことだけ考えればいいよ。

拓也さんも私もみんなあんたを応援してるけど、誰かのためじゃなくていいの。まずは自分のために。拓也さんでも私のためでもなく」


響は顔を上げてレナを見た。


「みんなあんたのこと、好きなんだよ。響は自分では気づいてないけど、すごく周りの人を惹きつける力があるんだ。1人じゃないから」


響はいきなりそんなこと言われて、嬉しいような恥ずかしいような…下を向いて鼻をつまんで誤魔化した。


「ふふふ。それも、すきだよ。」


余計に恥ずかしくなることを言わないでくれ、と思いながら響は咳払いした。


「レナさん、ありがとう」


そして響は気になっていることを突っ込んだ。


「ところでレナさんは拓也さんと深い関係なんですか…?」


「まさかあ。ぜーんぜん相手にされてないよ。前に、ベッドに滑り込んで一緒に寝たこともあったのにさ。手も出してくれないの。拓也さんもしかしてゲイかなあ?」


唇を尖らせて聞いてくるレナが可愛くて、響は微笑んだ。


「さあ?分からないですけど…大事な人ほど、適当に扱いたくないっていうのも、あると思いますよ。レナさん可愛いですね」


響がそう言うとレナは真っ赤な顔になって、そっぽを向いた。


可愛いな。


僕だったら、この人を放っておかないんだけどな、と響は思った。


そして響たちはおやすみを言ってそれぞれの部屋に戻った。


響はレナのおかげで少し落ち着くことができて、そのあとすぐに眠りに落ちた。