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Grandia

夜は明けない

2022.05.06 14:23

twst/ジャミネハ

「来い」

そう言われると私に拒否権などはない。ジャミル様の夜のような瞳に捕えられて逃げる術なんてきっとこの先も分からない。ベッドに腰掛けながら差し出された手を取ると、ジャミル様は私の後ろから腕を回して私を抱きしめた。直接触れ合う肌の熱さに胸が高鳴る。私の身体はジャミル様の膝の上にすっぽりと納まって、まるでジャミル様の中に閉じ込められているみたいだと思った。

「ジャミル様…?」

名前を呼んでも返事はない。あまりの静寂に鼓動の音が聞こえてしまわないかが心配だった。フードを被ったジャミル様は俯きながら私の肩に顔を埋めて黙ったままだった。表情が読めない。こんな姿は珍しい。よほど疲れているのだろうか。強まる腕の力はもはや痛みすら感じるほどで、でもこんな弱りきった姿のジャミル様に痛いとは言い出せなくて痛みを我慢した。我慢は慣れっこだ。

「ネハ」

「は、はい」

小さな囁きが耳に届いて、顔の見えない主に慌てて返事を返す。

「抱きしめてくれ」

掠れた声は小さく、どこまでも心細くて弱々しかった。まるで手負いの獣に甘えられているようだ。緩まった腕の中でもぞもぞと動いてジャミル様の方を向く。フードを被って俯いたままのジャミル様の表情は分からないが、そのフードに包まれたままの顔を抱き寄せた。これで良いのだろうか。分からないけれど…緩まった腕が、また私の腰を抱き寄せたから合っていたのだろう。またぎゅうとジャミル様に抱き着いた。嗅ぎなれたジャミル様の香りに包まれて緊張がほどける。ジャミル様も私のように少しは安心出来ていたらいいのにと、叶わぬ想いを胸に秘めてゆっくりと目を閉じた。