ニューヨーク在住20年。女性経営者が語る、NYならではの環境を活かすビジネス成功法とは~NYマーケティング・ビジネス・アクション社 代表取締役 古市裕子さん~
「ニューヨークで働いてみたいとは思っているけど……」、あと1歩が踏み出せずにいるという方、多いのではないでしょうか。
今回、PRライター伊藤が取材させていただいたのは、NYマーケティング・ビジネス・アクション社の古市裕子さん。およそ20年前にニューヨークへ渡り、現地の大学院を修了後、日本貿易振興機構で17年勤めたのち、2015年に起業。海外進出サポート事業を展開されています。
彼女が、ニューヨークで起業までできたのは「とにかくアクションしてきたからだ」と語る古市さん。とにかく1歩を踏み出す。そのためには、どうすればよいのでしょうか。
自分と向き合い、周りとパワーを出し合う。ニューヨークで成功する秘訣
───もう20年ほど現地で働いている古市さんからみて、ニューヨークはどのようなところですか?
古市裕子(以下、古市):わたしからみたニューヨークは、「自分がやる気にさえなれば、やりたいことを実現していける場所」ですね。
わたしは、ニューヨークにある大学院を修了してから日本貿易振興機構(以下、ジェトロ)に入社し、貿易取引保険関連の支援に携わりました。
ジェトロでいろんなことを任せてもらったのですが、日本政府経済産業省所管の独立行政法人のもと、政府支援として日本企業ごとの課題に特化した支援サービスに従事していました。
それでジェトロに17年勤務したあと、「もっと自分が思い描いている支援サービスを、起業して、自分でつくっていきたい」と考えたんです。キャリアとして安定しているタイミングで起業するなんて、日本ならあまり支持されませんよね。
でも、退職して自分の会社を作ってから周りに報告したとき、彼らは、「なにかあったらサポートするから!」って、協力的な声をかけてくれたんです。
そこで自分のなかにあった不安が晴れたこともあり、起業の決断をすることができました。
このように、やる気や熱意がある人、挑戦する人を受け入れ、応援するという風潮が、この街にはあるんです。前向きな後押しは、とても大きなパワーになります。そんなせっかくの環境、活かさないともったいないですよね!
───異国で経営していくにあたっては、思い通りにならないこともあると思います。それでも挑戦しつづけていけるのはなぜでしょうか?
古市:そうですね。やはり、ここは世界のビジネスの中心とも言われるくらいなので、ビジネス環境が急に変化することもあります。逆境となりうることがたくさんあるんですよね。
でも、自分がほんとうにやりたいことに焦点をあてつつ、いろんな視点からアプローチを考えることで乗り越えていけるものです。
たとえば、わたしの場合、そもそもニューヨークへきた理由が「国連本部で途上国の子どもたちへの支援をサポートしたい」という想いがあったからです。ユニセフから内定がでていたのですが、そちらへ移籍する直前に9.11が勃発し、それがむずかしくなってしまったんですね。
悩んだ結果、決断につながったのは、原点に戻ったこと。「本当にやりたいことは何だったのか」を、改めて考えたことです。わたしに必要なのは、ユニセフという1つの選択肢にこだわることじゃない。
「世界中の人びとが幸せになれるように、人的支援や国の発展に寄与していくこと」こそ、やりたいことだったんだという答えにたどりつきました。いろんな選択肢を探った結果、ジェトロで支援をすることに決めたんです。
多くの人が、大きな夢をもってニューヨークへきます。でも、早々に諦めて帰ってしまう人も多い。一方で、ここで何かをつづけている人たちは、夢の実現のための道を1本にしぼりません。
どうにもならないことが起こったとき、大切なのは、「何をやりたいかに着目し直し、選択肢を考え直し、そのうえでどう動くか」だと思います。この街にいる人たちは、柔軟に動き、ひたむきに努力する、という傾向が強いですよ。
異国でも、ともに支え合い高め合える仲間がいれば、夢は叶う
───「自分は、ほんとうはどうしたいのか」をつきつめること大事なんですね!でも、自分1人ではできないこともありますよね?
古市:もちろん、人や企業は1人では生きていけません。
9.11のとき、ワールドトレードセンターが倒れるのを生で見ていたんです。そのとき自分自身の無力さを痛感しました。「わたし1人には何もできないんだな」って。
事件のあと、街の人びとは、いろんなことを助け合いながら、辛い時期を共に乗り越えました。実際に、その空気に触れて、たとえ1人ひとりの力は小さくても、「支え合うことができれば、こんなに大変なことでも乗り越えていけるんだ」と感じました。
いざというときだけでなく、普段からお互いに協力できるようなネットワークをもつことも大切です。
ニューヨークには、本当にさまざまな職種や人種の人たちがいるので、いろんな人とのご縁や人脈がつながり広がると、ビジネスや生活がより充実します。
もう起業してから数年たちますが、今でもビジネス上の判断に迷うことは、いくらでもあります。法律、ファイナンス、ウェブ、芸術……いろんなエキスパートたちがいて、お互いが助け合い、切磋琢磨し合えるからこそ、ここでやってこられたと思っています。
───人とのつながりは欠かせないですね!どのようにしてニューヨークでそのつながりを築いてこれらましたか?
古市:起業前、ジェトロに勤めていたころから、積極的にネットワーキングをしてきました。「ニューヨークでビジネスを成功させるには」という主旨の勉強会なども開きましたよ。
また、ただ出会うだけではなく、出会った人びととのご縁を大切にし、関係を深めていくことも大切です。とくに、なにかしてもらったら「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えること、相手のために何ができるだろうと考えること、そしてお互いが自分の考えを伝えることはとても大事だと思います。
自社が支援をした本邦企業様やクライアントさんが、ニューヨーク進出して開業したときや、プロジェクトで成功したとき、「ありがとうございます!」って、大きな笑顔で喜んでいらっしゃるんですよ。
それを見ると、わたしも、すごくうれしくなります。感謝の言葉をお聞きすると、「やってよかった」「これからもがんばっていこう」という、やりがいになりますよね。
だから、小さなことでも「ありがとう」を伝えるようにしています。感謝を伝えることで、同志たちと「高め合う」ことができる。小さいながら、とても重要なアクションだと思います。
漠然とした理由でいい!「とにかくアクション」が人生を変える
───ニューヨークで働いていくうえで、人とのつながりや支え合いのほかに、どんなことが大切だと思われますか?
古市:「今、自分は何をやりたいのか、自分には何ができるか」を考えることです。挑戦には壁がつきものですが、それに直面するたびに嘆いても仕方がありません。
わたしもこちらで会社を設立してからのここ数年、人手不足に悩んできました。
でも「人手が足りない」という、変えられない事実に悩む時間はありません。問題を解決することに集中し、解決策を考えないと、前に進めないんです。派遣人材を増やしたり、複雑なタスクは専門家である知人に依頼したりするなど、とにかくできることからやってみる。そうやって、乗り越えてきました。
───貴社は「Act & find something」というスローガンを掲げていますが、それも「今、何ができるか」を考えることの大切さにつながっているんでしょうか?
古市:そうです。直訳のまま「まずアクションして、そして何かを見つけよう」という意味ですが、何においても、やってみなければ、どうなるかわかりませんから。
1つやってみて、違ったら、だからこそ次の行動を考えることができる。とにかくアクション!を大切にしています。
なじみのない環境に身をおくときや新しいことを始めるとき、どうしても不安になるのは仕方のないことです。でも、わたしのように、実際にニューヨークにきてみる。
そこで、さまざまな体験をしてみる。だめだと思っても「だったら何ができるか」考え、動いてみる。すると新しい道を見つかります。
行動を起こしてはじめて得られるものって、ほんとうにたくさんあるんです。
人種のるつぼと言われるニューヨーク。ここには「とにかくアメリカでビッグになりたい!」というざっくりとした想いと勢いでこちらへやってきた日本人が、たくさんいますよ。
彼らはこちらにやってきてから、さまざまな人に出会い、いろんな経験をし、そして経営者として成功しています。
どんな理由でもいい。漠然としていてもいいんです。やりたいことがあるのなら、まずアクションしてください!そして、ニューヨークだからこそできる、周りと支え合い、高め合いながら、めいっぱいビジネスしていくという体験を、ぜひしてほしいですね。
インタビューを終えて
今回の取材を担当しました、伊藤聡志です。
古市さんのお話を伺って、「新しいことに挑戦する=難しいこと」ではないのだと感じました。
もちろん問題や多くの壁があると古市さんもおっしゃっています。でも、それを乗り越える際に考え方を少しハックしたり、仲間と助け合い高め合っていくことで、毎日がすごく充実しそうですね!
1日は24時間、1年は365日と限られている。だからこそ、その一瞬一瞬を無駄にせず、少しでも前へ進んでいきたいと思いました。
皆さんも、やりたいことがあるのなら行動に移してみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆:PRライター 伊藤聡志/編集:吉川実久)
<関連情報>
• NY Marketing Business Action, Inc.