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超人ザオタル(67)自分とは誰か

2022.05.10 00:20

「ハルート、いま知っていること、

アルマティから教えられたこと、

そういったことを教えてもらえないだろうか」

まず私はそう話を切り出した。


小さな部屋が瞑想の前よりも明るく感じた。

何かで満たされているが、それが何かは分からない。

エネルギーのようでもあり、それにしては静かだった。

だが、それはとても好意的な感じがした。


部屋の優しい明るさの中でハルートの瞳が黒く輝いていた。

その黒の向こうに無限の宇宙を感じた。

それは得体の知れない何かというよりは親しみがある。

見つけていると、そこに吸い込まれそうだ。


「私は自分が存在だと知っています。

それは母から教えられた瞑想によって分かりました。

その存在はいつでも私の中心にあって、変わることがありません。

それそのものとしているだけです、ザオタルさま」


ハルートは存在について知っているのだ。

「それでは、自分が個人ではないと知っていいるのだろうか」

話はいきなり核心部分へと触れてきた。

私は話を急かさないようにとひとつ息を吐いた。


「ええ、それは知っています。

私は存在であって、個人ではありません。

それでもハルートはこの世界にいます。

私ははルートとして生きています」


ハルートは存在いついてかなり深い理解があるようだ。

それでもどこかで止まってしまっている。

「存在とは誰なのか知っているのだろうか」

質問することが難しい話になってくる。


ハルートは黙って目を閉じた。

私は緩やかに時間が流れるのを感じた。

ハルートが微笑んでいる。

しばらくして目を開けた。


「こんな話を母以外とすることが出来るとは思いませんでした。

とても嬉しくなって。

自分が存在かどうかなど、

いまの街の人たちにはまったく興味が無いことなのです。


ザオタルさまの言葉に、つい母との話を思い出してしまいました。

母は存在について、無理に他の人に話す必要はないと。

どのみち、その時が来るまでは、誰も理解し得ない。

それまでは世界を尊重し、自分の内で理解に努めるように言っておりました」


そう嬉しそうに言ってから、真顔になって一息ついた。

「存在とは、私とは誰なのか。

私はそれを知らなければなりません。

私は誰なのでしょうか、ザオタルさま」


今度は私は黙った。

そんなことが私に説明できるのだろうか。

ハルートの期待に応えられるのか不安になった。

だが、その答えは私の中にあるのだ。


存在がその答えだ。

答えなのではあるが、それ自身は黙っている。

それをどう伝えればいいのか。

そもそも、それは伝えるべきものなのか。


「存在とは誰なのか」

私はそう言って、言葉に詰まった。

それは瞑想ではなく、

この世界で与えられる言葉でなければならない。


ハルートは自分が存在だと知っている。

そこまでの理解があれば、

私の言葉もハルートにとって意味のあるものになるだろう。

そして、それは私も理解しなければならないことだったのだ。