日野スケルトンRS大型観光バス
日野がスケルトン構造を採用した大型観光バスを市場に登場させたのは1977年でした。それまでの日本のバスはリベットが多用され、丸みを帯びたデザインのモノコックボディが主流でしたので、直線的なデザインで大きな窓を実現した日野スケルトンの登場は衝撃的でした。当時はSNSなどなく、一般の利用者(と同時に散見されたバスファン)が地元以外のバスの情報を入手するのは極めて困難な時代でしたので、実車を見て初めてその車両の存在を知ることもよくある事でした。観光バスの様に、どこに現れるかわからない車両は特にその傾向にありました。実はお恥ずかしながら、著者も奈良交通が導入した日野スケルトンのサロンカーを観光地で見て初めて「日野スケルトン」の存在を知った次第でした。当時の観光バスは路線バスとの差別化が顕著になりつつあったものの、前から見た際のルーフラインや後部のガラス等どことなく共通点があり、意外と容易にメーカーを推測することが可能でした。しかし、この日野スケルトンはどの角度から見ても当時の従来モデルとのデザインの共通性を見いだせず、直感的に(行ったこともないくせに)ヨーロッパからの輸入車だと思いました。ドライバーさんに日野の新型である旨を教えてもらった際には、ひっくり返りそうになったことを今でも覚えています。日野RSシリーズとしてデビューしてからもモノコックボディのRVシリーズが並行生産されていたのは、日野スケルトンがあまりにも画期的なモデルであるが故、完全移行には時期尚早との判断によるのではないでしょうか。このRSシリーズは比較的少数派であり特別な存在感を発していたので、どこに行っても注目を集めていました。それまでの日本のバスはセミデッカーや斜めに傾いた引き違い式側窓等「Greyhound」に代表されるアメリカのバスを模していたのに対し、ヨーロピアン・スタイルを採用したこの日野スケルトンはそれ以降の日本の観光バス車両に大きな影響を与えたエポックなモデルであったと言えるでしょう。
写真① 伊豆箱根鉄道の定期観光コースで活躍していた日野スケルトン。新製時の貸切仕様を定期観光用に改造したものと思われます。外側に両開きする前扉も大きな特徴でした。
写真② フルデッカー車は特に存在感があり、サロンカーなど特別仕様の車両もよく見受けられました。富士急行の例です。
写真③ 汎用車仕様の日野スケルトンも少しずつ増えました。こちらも富士急行ですが、写真②と比較すると、相違点が興味深いです。
写真④ 志村観光運輸の日野スケルトンです。看板車として導入されることも良くありました。