世の終わりの為のの四重奏曲 解説8
2017年音坊主公演に関しプログラミング、編曲、解説などで大変ご協力頂いた夏田昌和さんにお話を伺いました。メンバーも授業を受けていたり一緒に演奏したり、私個人的なイメージでフランス=夏田先生という図が頭の中にあったのでお願いしました。
世の終わりのための四重奏曲を演奏したい!という意気込みだけはあったものの、メシアンにどう繋げるかで悩んだのですが私たちだけでは考えられない助言を沢山頂きました。さすがっす!
今回の企画は夏田先生無しにはありえませんでした。(長文ですのでおヒマな時にでも。と言いたい処ですが中々面白いかも)
みのだ 当初の予定では夏田先生には編曲と新曲を書いて頂こうと思ってお話をさせて貰ったのですが、だいぶ違う方向になりました。結果的に先生にはご負担をお掛けすることになってしまいました。。
最初にこの企画の話しを聞いた時はどう思われましたか?
夏田先生 音坊主の活動は、昔桐朋の学園祭でライヒの「シティ・ライフ」に挑まれていた勇姿をよく覚えていて、また中さんや松尾さんとは授業でお会いしたり、蓑田さんとは一緒に演奏したこともあったので「懐かしいなあ!」と。一方でメシアンにも個人的に些かご縁があります。というのは芸大でスコア・リーディング他を教わったロジェ先生はメシアンの友人、パリ音楽院での作曲の師グリゼイと指揮の師ベローは共にメシアンの弟子だったので、こうした先生方からよくメシアンの想い出話を聞かされていました。メシアンは音楽院で様々なクラスを長年教えていたので、私が留学した頃は作曲、理論、演奏問わず様々なクラスで「一度はメシアンに師事したことのある先生」ばかりだったのです。
それで、「世の終わり」と組み合わせるのに良い曲で、音坊主の編成にアレンジが可能なものは何だろう、というところから話し合いを始めましたよね。
みのだ おお!そんな処にも繋がりが!メシアンは教育者としても有名ですものね。ブーレーズ、クセナキスなど優れた作曲家を輩出しています。
さて問題のプログラミングですが最初はバッハのオルガン曲を演奏する予定になっていました。メシアンの鳥好きに因んでラモーの鳥の囀りやその他にもモーツァルト、クセナキス、ライヒなんかも!色んな作曲家の名前が挙がりました。
ドビュッシーの帆に関しては夏田先生からご提案頂いてすんなり決まった感じです。
バッハ、クープラン、ドビュッシーが決まって後はリズム系の曲が欲しいねよということになったのですがこれが中々決まりませんでしたね。
夏田先生 そうですね、その辺りの経緯をおさらいしてみると、メシアンの音楽を構成している様々な要素を、彼以前の世代の音楽の中に求めてみたら面白いのではないかという考えがまずありました。それで、メシアンは熱心なカトリックなので、真っ先に私が個人的に大好きなバッハのコラール・プレリュードはどうかなと思ったのです。両人共に教会のオルガニストでしたし。結局それは演奏時間などの問題もありプログラムには入らなかったのですが、振り返ってみれば同じキリスト教といってもメシアンの殆ど神秘主義的とも言えるカトリック信仰と、バッハの実績的なプロテスタントでは随分開きがあるし、今回の作曲家はストラヴィンスキー以外全員フランス人(ストラヴィンスキーも当時は殆どパリを活動拠点にしていました)というところに落ち着いたので、結果的には良かったと思います。
ドビュッシーについては、メシアンが「移調の限られた音階」の第1番に分類している全音音階が聴いてとてもわかり易く使われていることと、ヴァイオリンとチェロ、クラリネット、ピアノという編成にうまく適合しそうな気がしたため、提案させて頂きました。
次にメシアンの、拍に縛られない自由なリズム語法を予告させるような作品は何かで、確かに結構紛糾しましたね。LINE上で互いにアイデアを出し合った訳ですが、音坊主のこうした民主的な姿勢は素晴らしいと思うし、その輪に今回私も加われてとても楽しかったのを覚えています。最終的に二つの全く異なる時代の作品、ルネサンス時代のジュヌを私が器楽に編曲するのと、ストラヴィンスキーの「兵士の物語」のトリオ版の一曲に落ち着きましたが、なかなかバランスは良かったのではないでしょうか。