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世の終わりの為の四重奏曲 夏田昌和さんインタビュー2

2017.12.23 01:08


夏田昌和さんインタビューの続き

みのだ そうですね。私たちも知らない曲を知ることが出来て時間はかかりましたが有意義なやりとりでしたね。

さてドビュッシーとジュヌの編曲についてお伺いしたいのですが、編曲する時に何か心がけていることや大変だったことなどありましたらお聞かせ下さい。

夏田先生 「編曲」と一口に言ってもそこには色々なスタンスがあり得ます。例えば民謡とかポピュラーソングなど原曲が旋律だけか、変更も可能なコードがついている位であれば、幾らでもそれを自由に膨らませる余地がある訳です。

でもクラシックの名作は既に作曲家の手によって完成されたものなので、それ以上何かを付け加えたり変えたりするのは難しい。私自身も同じ作曲家として一つの曲はとことん責任をもって完成させることに努めているので、人様の作品にも安易に手を加えたりしたくはありません。バッハにもう一声部加えたり、モーツァルトの和音を変えたりしたいとは思わないでしょう?ですので今回の私の役割は極力原曲を変えずに、それを音坊主の編成に適合させることでした。

例えばドビュッシーでは、譜面通りだと多分入りきらないアルペジオの為に少しだけ拍節を変えた(ピアノのソロの場合「ルバート」として演奏家が自由に処理出来るのですが…)のと、文脈から見てそこにあるはずだが二本の手という制約から書かれなかったと思われる和音構成音を二箇所だけ加えた以外は、控えめに「オーケストレーション」しただけです。ジュヌの場合は少しばかり事情が異なります。そもそもこれは声楽曲なので、器楽で演奏するとなると、歌詞がなくなる分それを補う何かを加えないと聴いて面白くは感じられないでしょう。そこで音域に若干の変化を加えてコントラストを作り出したり、ルネサンスの曲として当然ですが原曲には書かれていないアーティキュレーションや強弱の変化を考えてみたりしました。しかしここでもポリフォニーの基本となる音高やリズムには一切手を加えていません。そして最後に少し迷いましたが、世俗的な歌ということで即興的な打楽器効果をちょっぴり足してみたのですが、うまくいくかどうかは実際聴いてみてのお楽しみです。