Lobgesang - 讃歌(3)朝はまた来る
さて本番です。気を許すと数小節すっ飛ぶ危険をはらみながらもなんとかざっくり暗譜にまでこぎつけたのですが、本番直前にショッキングな知らせが舞い込みました。誰が悪いんじゃない、強いて言えば社会が悪いのよ的な問題で、だけどそのことが脳裏をよぎるたびに8小節は余裕で飛ぶ危険な状態がゲネプロまで続きました。
俺的にはとても「神様ありがとう!」「ハレルヤ!」なんて歌う気分になれない、本番はドタキャンするかもと夫氏に駄々をこねつつ、重い足取りで会場へ。
Show must go on.だよ。
幸い本番は無心になれ、自分自身ではベストの出來で歌えました。
しかーし。打ち上げの時、先生がたが恐ろしいことをおっしゃいました。
この『讃歌』、市民合唱団やオーケストラのレベルでやるのは到底無理な難易度の高い演目で、指導陣一同、本番まで胃が痛い思いをされてらしたとか。柳嶋先生もドイツの師匠に「帰国したら市民合唱団で『讃歌』振ります」と言ったら、ほぼ全員から「お、おぅ…」的なリアクションが返ってきたとか。こっちこそ「お、おぅ」ですよまったく…
で、打ち上げが終わって我が家で二次会(夫氏も合唱団員です)をやってる間も、わたしは例の件を引きずってました。
すると夫氏が言うのです。『讃歌』6番のテノールソロの歌詞を読んでみろ、と。
Hüter, ist die Nacht bald hin? (見張り人よ、夜は間もなく明けるのですか?)
テノールが繰り返す問いかけに、ソプラノが高らかに歌い上げます。
Die Nacht ist vergangen! (夜は過ぎ去った!)
ここで第7曲が始まり、金管楽器が荘厳なファンファーレを吹いたあと、わたしたちが歌うのです。
Die Nachit ist vergangen, (夜は過ぎ去った)
Der Tag aber herbeigekommen. (昼は手の届くところに来た)
So laßt uns ablegen die Werke der Finsternis, (されば闇の業を捨て去らん、)
Und anlegen die Waffen des Lichts, (そして光の鎧を身に着けん、)
Und ergreifen die Waffen des Lichts. (そして光の武器を手に取らん。)
その一連の流れが、以下の動画でご覧いただけます(うちの団じゃありませんよー)。
ああ、なんてすてきな歌を歌ったんだろう。
本当に小さいことにくよくよしていたんだなと、わたしの中から澱のようなものがすうっと抜けていくのを感じました。
来年も柳嶋先生にわが団をご指導いただくことになりました。演目はかの『第九』。毎年同業の友人たちと2月に国技館で歌う『第九』を、柳嶋先生にドイツ語をきっちり教えていただき、正真正銘の暗譜状態で舞台に上るのを来年の目標とします。