題詠blog2012 投稿100首
ゆらとさえ動かぬ今を種として埋める花咲く日を夢に見て 001:今
隣り合う言葉と言葉こんなにも近しい君の遠すぎる指 002:隣
桜散るあの日指先にすら触れぬ綺麗なままのふたり追憶 003:散
果てるとも果てるともまた湧き上がるぬるま湯の恋にたゆたう真昼 004:果
点と点結べば見えてくる君の心変わりを塗り潰す冬 005:点
過去なんて知らないけれど懐かしい 同じ時代を生きていたきみ 006:時代
驚きをまた飲み込んだ何も無いふりばかりうまくなる君の横 007:驚
奥深く触れたあの日が幻のよう すれ違いすら無いふたり 008:深
甘すぎず苦すぎず淡白すぎず程良い恋を探してひとり 009:程
見えぬよう揃えたカードひとつずつ明かしていこう君崩すため 010:カード
お揃いの雑貨手に取りまた戻し別々になる日ばかり思う 011:揃
どうせ似合わないと拗ねるふりをした君の珍しく整った眉 012:眉
言葉では逆さまばかり伝わって天邪鬼では足りないわたし 013:逆
わたしただ一人の前で偉人たる君の硝子の栄光を聞く 014:偉
図書カード差し出す君の白い手を糧とする二週間の始まり 015:図書
土砂降りの心に幕を引くように力尽く攫う君の唇 016:力
残された足音響く従順なだけでいられぬわたしを責めて 017:従
何一つ希望なんて見えないでいる佇むふたりに横たわる距離 018:希
街ゆけば君にそっくりな人ばかり見つけて私また恋をした 019:そっくり
劇的なおしまいなんて無いのだとメール履歴を彷徨う夜更け 020:劇
たくさんの道を示して選ばせるたったひとつのふたりの終わり 021:示
生温く凍ったままの一年に突然のピリオド冬がくる 022:突然
必然としておきたくて偶然の寄せ集めたる運命のひと 023:必
玩ぶ繊細すぎるバランスのふたりこのまま揺らいでいたい 024:玩
壮大な君の宇宙に触れるため いま眼裏の星空の下 025:触
降り注ぐ甘いシャワーに背を向けてひとりで歩く覚悟を仕込む 026:シャワー
微笑みを損なうことが怖かった肯定ばかりし続けた頃 027:損
耳たぶに触れた君の指 発熱で溶けてしまいそう樹脂製ピアス 028:脂
心さえ見つけられない公園で冬空見上げ探すきりん座 029:座
不敗神話を塗り替えた真っ直ぐに「好き」なんて言うあの子の睫毛 030:敗
憧れた大人は未だ遠すぎてお砂糖二本入れたカフェオレ 031:大人
箱詰めにされた毎日 正しさのレーンに乗って出荷されてく 032:詰
浮き上がることもできずに溺れてた滝壺みたい君との恋は 033:滝
鼓動聞くため訪れたこの部屋でいま輪郭はひとつの魔物 034:聞
ひたすらに眠いしむしろ冬眠をするべきなのだ寒過ぎる日は 035:むしろ
右肩の向こう夕陽が沈むから聞き逃したよ今の「さよなら」 036:右
いつだって牙を隠して微笑んで ねぇもういいよ首筋あげる 037:牙
なにひとつわかってないね的確な言葉よりその手で撫でていて 038:的
青春を蹴り上げ失う青を知る 届かない空ばかり見る理由(わけ) 039:蹴
形として具象化できないものの勉強をしていた恋をするたび 040:勉強
別々に歩き始める場所として選んだ雨の日の喫茶店 041:喫
風渡る稲穂眺めて「帰りたい」帰る場所のないひとが呟く 042:稲
黄昏に輝く駅のモニュメントさよならの嘘さえ美しく 043:輝
いつまでも残る手のひらの感触を吹き飛ばすためのドライヤー「強」 044:ドライ
言葉にはしない罰ゲーム わたしだけ本物にしてしまったみたい 045:罰
銀木犀みたいな恋にしたいからひとりココアで溶かす熱情 046:犀
ふるさとと呼ぶ違和感を面影も潰えた街で噛む昼下がり 047:ふるさと
有限の刻を費やし僕たちは謎解きをする愛を知るため 048:謎
林檎色した唇の君を追う敷きつめられたシーツの波間 049:敷
お気に入りのソファ ミルクティ マドレエヌ 活字の海へ飛び込む準備 050:活
囲まれた鳥籠の中で啼くのだしせめて綺麗でいさせなさいよ 051:囲
お世話様ひとりで歩いてゆけるから重すぎる恋の檻にさよなら 052:世話
助手席でふいに口づけ渋滞のテールランプに染められた頬 053:渋
新色のグロスのくちびる武器として決戦の地はあの観覧車 054:武
平穏な毎日きっとこんなのを歩いて泣いて探していたね 055:きっと
今晩の月は輝きすぎるから内緒のキスもできないふたり 056:晩
靴紐を結び直してまた固くする君にほどけかけた心 057:紐
深刻な塩分不足 失った涙の代わりのポカリスエット 058:涙
貝殻を拾い集めて壜詰めにする淋しさの代用として 059:貝
誕生日プレゼントとしていま君の目の前に居るリボンを解いて 060:プレゼント
無関心な君をくすぐる企みの一環としてのほっぺたにキス 061:企
指と指その接点を軸として廻るふたりの縮まらぬ距離 062:軸
「久しぶり」笑った人のやわらかな体温にまた許されていた 063:久しぶり
ピリオドは強固な意志だ胸の底凍えた夜に包むカフェオレ 064:志
ただひとつきりの重大な相違点 酢豚にパイン入れる派の君 065:酢
窒息死しそうな日々だ水槽を隔てて僕ら見つめ合うだけ 066:息
目の奥の鼓動を奪う向かい合い鎖骨に指を滑らせた今 067:鎖
ひとりきり毛布を被り銀色の巨きな不安と戦う夜更け 068:巨
帰宅して一目散にカレーだと微笑む君と生きて良かった 069:カレー
芸術的うつくしさだと肌の上滑らせる指先まだ青く 070:芸
籠のなか膝を抱えて空を見る魂は飛ぶ準備をしてる 071:籠
ふたりでは狭すぎる路地裏にいて唇触れる言い訳にする 072:狭
手遅れの赤すぎる林檎のような恋を冷蔵庫の隅に飾る 073:庫
今日もまた手放してゆく無精卵 青い水底沈む週末 074:無精
水溶性ビタミンほどの儚さで君に留まることもできない 075:溶
帰るなと言わせてみせる桃色のチークに込めた邪な意志 076:桃
好きですと告げる勇気が転落死した屋上に献花する春 077:転
査定額おいくらですか磨り減った恋に価値などあるのでしょうか 078:査
深海魚みたいに澱む時間帯 見えない価値が縛る世界で 079:帯
甘やかな言葉重ねてたわむれの恋はいびつに溶けたティラミス 080:たわむれ
「可愛いな」画面に呟く君を見て秋元康抹殺計画 081:秋
毎日が雨降りみたい動けずに苔生すままの長い片恋 082:苔
思い切り泣いて甘えるわたしという女を邪魔するわたしもわたし 083:邪
だらしなくその手に崩れてしまうから西洋梨のように齧って 084:西洋
忍耐を試されている手の甲に上目遣いでされるくちづけ 085:甲
見逃してしまえばいいの片方の瞼に映る君の嘘など 086:片
一日の終わりあらゆるチャンスの芽潰した君に触れる(わかって) 087:チャンス
改訂を重ねて厚くなってゆくふたりで生きるためのルール本 088:訂
この恋の墓場を探せ喪失は心ごと埋めてしまうに限る 089:喪
舌先を真っ赤に染めてまだ早い氷いちごを分け合う僕ら 090:舌
落ちてくる空を抱き締め眠る午後 君が消えても世界は続く 091:締
君と踏む春野に溶ける童歌 朧月夜が隠す指先 092:童
嫌いにはならないことを唯一の条件として迎える別離 093:条件
恋をする悪事に加担した君と息を潜める午後の密室 094:担
この冬の孤独を憂い神様が代わりをくれた街路樹に星 095:樹
いつまでも残る感触拭い去り君の香りを消すためのガム 096:拭
尾を振って飛びつきそうな恋愛の初期段階の自分がキライ 097:尾
激しさを押し殺してる君と居て灯火みたいなうさぎのわたし 098:激
悪趣味なあなたの嗜好に染められて変わってはゆく大人にはなる 099:趣
ハナミズキふたりで見上げた春の日に先生は先生じゃなかった 100:先