2014/6/28
6212 屋上は一人と一羽の城となり傾きばかり刻む夕暮れ
6211 ぴかぴかと黒羽はひかるこころごと消してください屋上の主
6210 夕暮れに羽持つものは溶けてゆき僕はひとりで屋上に立つ
6209 筋張った腕に見惚れているだけの夕暮れなにも言えない夏の
6208 忘れ去るまで切らないと決めたけど絡み合う髪ほどけない脚
6207 待ってって言えず慣れない下駄のままあなたの背中ばかりを追った
6206 お囃子の溶け込む夜につつまれた指さき夏をはじめてしまう
6205 助手席でまた鼻歌を歌ってるさみしいしるしなのは知ってる
6204 一瞬のような一日 触れ得ないことが日常なのだふたりは
6203 夢うつつ目覚めるたびに引き寄せてまた眠るから動けずにいる
6202 閉じられたまぶた微かにふれてみる夢のなかでも寄り添うために
6201 すぐ横にいるのに顔を向けられずアメンボの数ばかり数える
6200 激しさもそのあともすき頬を寄せひとつのままで揺蕩う眠り
6199 しがみつくくらい許して何もかも好きにしていい代償として
6198 堪えきれない瞬間にぷくり、ってあなたのものにされて溢れる
6197 背中じゅう鈍く這うゆび漏れ出した声に応えて骨辿る舌
6196 見下ろされ口づけは降る全身をあなたの雨で湿らせるほど
6195 独占をされてもされても足りなくて足りないだけまた深くなる好き
6194 何もかも独り占めしてくれていいことばで伝えきれるはずがない
6193 かなしさも不安も大きな手のひらに溶かされてゆくただ甘く甘く
6192 深青に沈むこころの両側を包んで撫でてしまう手のひら
6191 触れられて触れていたいととめどなく指先にきみだけが足りない
6190 決壊を隠さずに降るくちづけのどこまでもやわらかであること
6189 しあわせな半分が過ぎもう半分しあわせになろういつもの部屋で
6188 分け合ってひとつのランチを食べている「しあわせ」って何回言ったかな