題詠blog2015 投稿100首
001:呼/さん付けで呼ぼうと思う離れると決めた覚悟を見せつけるため
002:急/そんなにも急がせないでくすぶった想いはいまだ熱ばかり生む
003:要/必要なことではあった大袈裟にあなたを傷付けておくことは
004:栄/虚栄心だけで繋いでおかないでもう一ヶ月声を知らない
005:中心/中心にあなたを据えて生きているだからこんなに空っぽな朝
006:婦/まどろみにあの日の不安を払うため婦人体温計を咥える
007:度/会うたびに温度差を知る別れ際一度も振り返らないあなたに
008:ジャム/あぁいなくなるってこういうことなのかこんなにジャムの蓋が開かない
009:異/もうあとはそれしかなくて探すドア異世界でなら結ばれていい
010:玉/選ばれる準備はいつでもできている玉子焼きなら焦がさず焼ける
011:怪/怪しいと思わせないで背を向けて携帯を見るその仕草とか
012:おろか/おろかしいことですひと目顔を見るためだけにする四時間の旅
013:刊/新刊が出るたび疼く傷跡のあなたが好きな作家は嫌い
014:込/束縛も嫉妬も込みで受け入れる用意はあって合わない目線
015:衛/ふうわりと春の空気は甘すぎて泣かないための自衛のマスク
016:荒/真夜中は荒ぶる時間失ったひとも持たないひとも等しく
017:画面/あの頃のままにやさしく微笑んでくれる画面の中ならきみは
018:救/救い出す気もないくせに野茨をくぐって会いに来る王子様
019:靴/靴紐を結び直すため立ち止まるけして歩けなくなったんじゃない
020:亜/今カフェはまるで亜空間こいびとの口が終わりの形にゆれて
021:小/今朝きみはいつもの声でおはようを言う小規模な別離を終えて
022:砕/すこしだけお酒を飲んだバランスの加減で砕ける自制を抱え
023:柱/改札の柱の陰で春風を纏うスカート おしまいのキス
024:真/ちっぽけな心の澱を溶かしてもいいかこんなに真っ青な空
025:さらさら/さらさらと二月の日差しに撫でられて乾いた頬がすこしこそばい
026:湿/つつまれることを失くしたゆびさきは湿度不足でぱくりと割れる
027:ダウン/じゃあねってさいごの声も届かないダウンコートに埋もれた耳に
028:改/好きな子ができたと言われ改訂を余儀なくされる恋人契約
029:尺/不自由なきみの尺度で決めていいそれが愛だと過信しておく
030:物/物証は何もないけどどう見ても春は来てるし愛されてるし
031:認/おそらくは誤認識です愛される理由ひとつも持ち得ないのに
032:昏/いますごくすごくさみしい黄昏のせいであなたのせいではなくて
033:逸/いつの間に逸れたのだろう過去ログを眺めて遠く追う分岐点
034:前/すきになる前か後かはわからない伸ばされた手に目を閉じていた
035:液/そうすればあなたになれる体液のすべてに混ぜる別の遺伝子
036:バス/バス停に春は舞い込みうつむいた頬に貼りつく淡い後悔
037:療/荒療治でも効くのです思い出の曲に刺されて夜のドライブ
038:読/嫉妬とは醜いものと知っていて読み飛ばせないあなたの文字は
039:せっかく/せっかくのお昼休みが消えてゆく沈黙だけが這う通話口
040:清/清らかな寝顔でいたい春を待つ僅かばかりの逢瀬のあとは
041:扇/あああああ頬をつたわるかなしみをさぁ吹き飛ばせ扇風機強
042:特/誰の手の熱も知らずに特売のワゴンの隅で丸く縮まる
043:旧/魂のひとつもしまい込めなくて悲鳴を上げる旧式躯体
044:らくだ/きりきりと尖ったことばを投げられる夜を耐えゆくらくだの顔で
045:売/誰ひとり売れ残らない偶数の教室ひとりで食べるあんぱん
046:貨/またひとつ貨物列車は通過して赤信号をふたりに灯す
047:四国/四国まで行こうと言ったあの春を抱いてひとりで渡る島々
048:負/名を呼べば負けだと思うやわらかな月のひかりに閉じ込める声
049:尼/僕たちが離れ離れになるための尼崎駅乗り換え通路
050:答/回答は完全に且つ簡潔に昨夜零れたあの告白へ
051:緯/経緯ならわからないけどこのキスはたぶん忘れてしまうべきキス
052:サイト/認証を拒否されている愛されているものだけがひらけるサイト
053:腐/もう既に腐りつつある事実には気づかないまま甘い足枷
054:踵/やや淡く傷ついているすこしだけ逸れた踵をきみへ揃える
055:夫/冷ややかな夜を流離い掃除夫は吐き捨てられた恋を弔う
056:リボン/失ったリボンを探すこのゆびときみとをゆるく結んだ夜の
057:析/分析をお願いしますこの好きは親しみ、友情、敬意、それとも
058:士/博士なら解いてください数式で息ができないほどの熱量
059:税/二つ以上欲しいなら課税対象です。一つで充分でしょう、恋など
060:孔雀/派手な羽根などに興味はありません孔雀よ見せよ震えるこころ
061:宗/到着を待つ昼下がり宗教の勧誘ばかりがチャイムを鳴らす
062:万年/来世には亀に生まれる万年を生きてあなたの転生を待つ
063:丁/わたしにはぽっかり穴が空いていて丁度失くしたあなたのかたち
064:裕/余裕すら忘れてしまう不自由な僕らは会えば奪い尽くして
065:スロー/ほっとけばいつかは離れてゆくでしょう未読のままのスローな別れ
066:缶/缶詰で指先を切るほとばしる赤はこんなに生きろと踊る
067:府/手をつなぎゆく府庁前きんいろの記憶がきみを忘れさせない
068:煌/誰ひとり祝福しないこの街の煌きあつめおく薬指
069:銅/銅貨まで割り勘で出るラブホテルきっちり生きているはずだった
070:本/嘘ばかりもらったせいで本物の恋にちいさく傷をあたえる
071:粉/粉末のココアにまみれ切り刻む届かなかったチョコも言葉も
072:諸/諸事情によりこの先は立ち入りを禁じてるので目は閉じません
073:会場/会場に泳ぐあなたをまだ探すこの目に終わりを教えてほしい
074:唾/唾液すら愛おしいほど遺伝子を渇望してる仄暗い舌
075:短/短命な金魚のようだひらひらとおびればかりが華麗な恋は
076:舎/失った恋を持ち寄る学舎の乙女らに降れあたたかな雨
077:等/現実はきみの二割も得られずに等身大の枕と眠る
078:ソース/思いつく限りのifを書き足したソースコードで挑む告白
079:筆/限られた不自由に抗うように君から届く春の筆跡
080:標/行く先は見えないままに道標のようなあなたが教えるひかり
081:付/付帯する痛みは標準仕様ですあのひとを手に入れるからには
082:佳/佳き日です いちごを落とし傘はなく彼女ができたと知っただけの日
083:憎/憎しみのひとつひとつを羽にして手放していく晴れた屋上
084:錦/あでやかな錦糸でゆびを繋がれていたはずのひとにもらう嘲笑
085:化石/ああこれは化石でしょうかおそらくは三年前に失くした恋の
086:珠/気付かない真珠くらいの純粋を胸に育てて横顔を追う
087:当/当分は名前も持たず傍にいるいつか恋だと名付けてほしい
088:炭/空色の炭酸水を飲み干せばもう過去になる体内の熱
089:マーク/身勝手な独占欲だキスマークだけを残して消えてゆくひと
090:山/山盛りの愛を惜しまず注がれて行き場を失くす「さよなら」の文字
091:略/いろいろを省略すればほぼ妻と呼んでくれてもいいはずの春
092:徴/徴候は漂っていた会いに行くことが僅かに面倒だとか
093:わざわざ/春なんてわざわざ教えてくれなくていいよ心にマフラーを巻く
094:腹/人生の中腹辺り今やっときみが偽物だったと気付く
095:申/申請の書類を整え傍らで生きる準備をしている ひとり
096:賢/いつだって賢いきみの言葉から逃げ出して住むまだ冬の街
097:騙/騙されることの必然 春だとか恋してるとか君だけだとか
098:独/おそらくは単独犯の仕業ですひとつしかない心ですから
099:聴 /聴くたびに深く心に突き刺さる痛みもあまい無防備な声
100:願/ただ笑い泣いて退屈して日々を手の届く距離であれと願う