題詠100☆2019 投稿100首
2011年からの毎年2月のお楽しみ「題詠100」!(旧「題詠マラソン」「題詠blog」)
現在はFacebook上で行われているイベントですが、今年も特別に許可をいただきTwitter上でお題に参加させていただくこととなりました。五十嵐さん、そして取り次いでくださった中村さん、ありがとうございます。
今年で9回目の参加となります。
以下、2019年の題詠100首です。(番号:お題/短歌)
2018-001:起/冷水を顔にぶつける 起き抜けに浮かんだ人を追い払うよう
2018-002:覚/硝子一枚向こうは海だ真っ青な世界で覚えたての名を呼ぶ
2018-003:作/これほどに雨は濁って初めての作り笑顔がいたいさみしい
2018-004:いいね/ほんのゆびさきだけ繋ぐのもいいねいつもどこへも飛んでゆけそう
2018-005:恩/ああこれが恩返しですか硬い背をくれたらすこし溺れてもいい
2018-006:喜/喜んだふりだけ上手くなる夜のたんさんたんさん昇りゆく泡
2018-007:劣/あたたかな劣等感だけ抱きしめて体育座りする海の底
2018-008:タイム/真夜中のタイムラインは深海でわたしは泡を吐くだけの貝
2018-009:営/吐きながらする納品も胸を掻く悲しみも営みという川
2018-010:場合/その場合別れることは必然で瞼に雨を忍ばせておく
2018-011:黄/黄信号だとわかってたこのひとの飛び込めば深すぎる湖
2018-012:いろは/はなのいろは移るばかりで冷淡なあなたにあげる濡れたあじさい
2018-013:枝/水滴をふるい落として枝先にふうわりひらく春ふたつ、みつ
2018-014:淵/胃の内に言えないことを沈めつつ覗き込むあのひとの深淵
2018-015:哀/冷めていく湯船にふやけ溶けてゆけ 可哀想ってやさしいことば
2018-016:掘/内堀にぬるんだ水を濁らせて笑えば深く深くなる皺
2018-017:ジュニア/こないだよりすこし小さいから「嫉妬ジュニア」と名付け泳がせておく
2018-018:違/足首を夜に浸してあなたとの違いをひとつひとつ数える
2018-019:究/ネガティブの種を究明する夜更け記憶の深く深くへ潜る
2018-020:和歌山/和歌山産みかんをひとつ平らげて午後の追試にきみは飛び込む
2018-021:貫/液状化した心臓を貫かれ抑えても浸出する恋だ
2018-022:桐/生きていた祖母のすべての彩りを湛えて眠る古桐箪笥
2018-023:現/現実で「おやすみ」を告げあったあとまた会うために夢へと潜る
2018-024:湖/晴れた日の湖(うみ)は明るいさみしさを波打ち際に溶かして歩く
2018-025:こちら/こちらからかけることのない番号をジンジャーエールの海に沈める
2018-026:棄/棄てていく ふたり一緒の未来とかあぶくみたいな言葉の記憶
2018-027:鶴/水色の折鶴ひとつ泡沫のきみの窓辺にしんと浮かせて
2018-028:帰/もう帰る場所はなくって賑やかなタイムラインの川を眺める
2018-029:井/奥底に井戸水のごとひたひたと溜まった恋をいま汲み上げる
2018-030:JR/今朝もまた会えない理由を探してるJR線の遅延と雨と
2018-031:算/打算的恋がしたいな雨の夜声が聴きたくならないような
2018-032:庵/「庵野さん」がわからない人たちと飲む(逃げちゃダメだ)と呟きながら
2018-033:検/検温のため握られた手首からわたしわたしと波打ついのち
2018-034:皿/一皿の八宝菜と炒飯を分け合う雨の降らないふたり
2018-035:演/ときめきを演じ始めていつからか胃の奥深く夕立ちは降る
2018-036:あきらめ/ゆっくりと溜まる廃液あきらめの夜を何度もなんども越えて
2018-037:参/もう降参してもいいかなすぐにでも泣きだしそうな雨雲の下
2018-038:判断/電飾がきれいな夜の判断を間違いだったと知る朝の雨
2018-039:民/座和民で始発を待って五杯目のビールの泡を君と見つめる
2018-040:浦/体じゅう津々浦々へ沁み渡る炭酸みたいな恋だ、くるしい
2018-041:潔/潔く手も肩も体も髪もあなたが触れた記憶を洗う
2018-042:辺/ふたりきり川辺に座る 空きれい、くらいしか言えない距離感で
2018-043:権/「委員長だから」あなたに傘を貸す職権乱用気味の言い訳
2018-044:ゴールド/ゴールドのくじらはゆるり飛んでゆく目蓋の裏のひなたの海に
2018-045:承/起承転結の承から始まった嵐みたいな君の告白
2018-046:沖/額に手かざして沖を見るときのどこかへ帰りたいね、あなたも
2018-047:審/人生の審判が見てないうちにふたりで雨に濡れる路地裏
2018-048:凡/凡庸なわたくしですが目から星くらいは生める夜なのですよ
2018-049:順/順当にいけばそろそろ泥濘の日々から逃げていいはずの日々
2018-050:痴/痴れ者と思わば思え血まなこで鴨川沿いに探すはんざき
2018-051:適当/適当な相槌でした適当な僕たちらしい終わりのカフェで
2018-052:誠/誠意ってなんですかねぇ三度目の裏切りを聞くシャワーのあとで
2018-053:仙/水仙が奏でる春に背を押されスキップで飛びこす水たまり
2018-054:辛/香辛料たくさん入れて日曜の昼泣くためのカレーを煮込む
2018-055:綱/もういいか 綱引きの手を離すからあなたはひとり幸せになれ
2018-056:ドーナツ/ドーナツをぶちぶちちぎる甘すぎた人との日々を断ち切るために
2018-057:純/純粋に傷つくことを愉しんで湯船に溺れゆく深夜二時
2018-058:門/広い背に耳を預けて流されて門限の十時は過ぎていく
2018-059:州/足先がこたつの中で触れていてつるつるに剥く温州みかん
2018-060:土産/お土産のストラップはまたひとつ増え飛べない日々をきらきら飾る
2018-061:懇/懇願のようなさよなら塗り付けて雨のあがった街へ まぶしい
2018-062:々/延々とふたりで眠りつづけたい茨に包まれた雨の部屋
2018-063:憲/なにひとつ持たずにつよくあることを違憲の波は削り続ける
2018-064:果実/連絡のひとつも寄越さないひとに黒い果実をやさしく渡す
2018-065:狩/星狩りの夜 あなたからぽつぽつと生まれる星を耳に捕らえて
2018-066:役/それぞれの役を演じている日々の今日は川辺でぼーっとする役
2018-067:みんな/「みんな」ってやさしい括りに包まれてときどき棘を引っ掛けている
2018-068:漬/誰も傷つけたくはないぼきぼきと折った胡瓜を浅漬けにする
2018-069:霜/霜月の夜は長くて会いたさを蹴散らすためのコンビニスイーツ
2018-070:宅/宅配便待つ雨の午後わたしからわたしへ届くamazonの箱
2018-071:封/追いそうな心に強く封をして独りよがりな文字列を消す
2018-072:レンタル/雨雲をレンタルしたい思い切り泣けたらあとは晴れるしかない
2018-073:羅/一面の綺羅星みたい賑やかで静かでさみしいタイムラインは
2018-074:這/夜這星落ちることなく遠い地できみは知らないベッドに沈む
2018-075:辻/辻風に踊る赤い葉もうどこにだって行けないヒールの踵
2018-076:犯/犯人の顔で海辺の崖に立つ罪をいくつか葬るために
2018-077:忠/お互いのためにならない忠告をラリーのように打ち合うランチ
2018-078:多少/やさしさのスープを煮込むスパイスに多少の嘘と嫉妬を混ぜて
2018-079:悦/悦楽の川を流れる見たくない岸辺から目を逸らしたままで
2018-080:漁/大漁だ持ちきれないほどたくさんの怒りをかかえねぐらへ帰る
2018-081:潰/今話さなくていいことで淡々とお昼休みは潰されてゆく
2018-082:にわか/立ち止まることも必要 いまだ熱だけのふたりに降るにわか雨
2018-083:課/放課後から今日が始まる青空に発声練習溶け込んでゆく
2018-084:郡/「郡」があり「字」がある地に越してきてそれでも街をふるさとと恋う
2018-085:名詞/人波を固有名詞で掻き分けて「あなた」や「君」じゃないひとを抱く
2018-086:穀/穀物の波にのまれるあと二キロ痩せたい秋の真昼間の夢
2018-087:湾/湾岸を手を繋ぎゆく波もなく風もかすかなふたりになって
2018-088:省/海風とやさしい嘘を省いたら完璧だった最後のデート
2018-089:巌/厳格な君を崩してみたくなるラベンダー色のバスタブのなか
2018-090:トップ/ブラトップひとつ買い足し晩秋に会えないひとを過去へと仕舞う
2018-091:勘/勘のいいひとは嫌いだ何回も好きじゃないって言っているのに
2018-092:醤/なにもかも足りない世界に生きているきみは食べずに醤油を垂らす
2018-093:健/グラウンドから春色の声はして微睡みをたゆたう保健室
2018-094:報告/報告のような好意を告げられて(あ、いま海とかすごく行きたい)
2018-095:廃/廃物の流れる川辺に佇んで夜ごと思考の濁りを泳ぐ
2018-096:協/協調性欄に△つけられたふたりでつくる屋上の虹
2018-097:川/死体とかふつうに上がる河川敷だった僕らの青い舞台は
2018-098:執/「明日話したいことがある」きみからの処刑執行前夜の電話
2018-099:致/致し方ない事情にて必然のように離れてゆくね、あなたも
2018-100:了/了解です(と、とりあえず言っておく理解できないさよならもある)
以上100首、2月2日スタート、途中ちょいちょいお休みしつつ、10月26日にゴール。
今年の裏テーマは去年裏テーマで苦労したのもあり、簡単に、「五感/視・聴・嗅・味・触の五つの感覚。」でした。
毎年のお楽しみ「題詠100」、今年も参加できてとても嬉しかったです♪