Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

徒然piano

標題 「田園」

2017.12.27 12:00

 ベートーヴェンのピアノソナタ 第15番は、「田園」という、ベートーヴェンが付けたわけではないタイトルがあります。

 「田園」と言うと、交響曲第6番の方を思い浮かべるかもしれません。

 交響曲はあまり詳しくはないのですが、こちらの交響曲「田園」というタイトルはベートーヴェン自身がつけました。


 ♪ダダダダーンで知られる「運命」は、ベートーヴェンが付けたものではないのに、結局「運命の扉の音」として定着してしまっていますが、田園交響曲と同時期に作曲されていた作品で、「交響曲第5番」です。

 ヨーロッパでは「運命」じゃ通じないと聞いたことがありますが、本当でしょうか。

 

 

 このピアノソナタ15番は、標題つきのもっと有名どころの曲におされて、なかなか聴くことが少ないような気がします。

 ちなみに、ベートーヴェンのピアノソナタの中で、ベートーヴェン自身が標題を付けた曲は「悲愴」と「告別」「ハンマークラヴィーア」などです。他にも、「幻想風ソナタ」などもありますが、興味がある方はいろいろと標題について調べてみるのもおもしろいです。

 

 標題は、聴くときにも練習するときにもあらかじめイメージを持ってしまうので、

(例えば「月光」とか完全にイメージ先行して、そのイメージに近づけようと弾いたりする)

 作曲者がつけた訳ではないものについては、できるだけ取り除いて聴きたいのですが、

 聴いてみると・・「あ~だめだ、やっぱり田園っぽい・・」と思ってしまう。


 この15番の2楽章を、今日はアップしたいと思います。

 最初はいつものように・・・グールドです。

 beethoven piano sonata no.15 op.28 "pastorale" Ⅱ andante 

 こういった変化が少なく、人によっては単調な感じにもなりえる曲を、これだけおもしろく弾いてくれるのはやっぱりグールドだな、と思います。

 実際、いろんな人のこの楽章を聴いても、そうそう引っ掛からないのです。

 このグールドの演奏は、短調ではあるけれど、推進力のある演奏で、そう悲しそうでもなく前に前に歩を進めながら、頭の中では常に考え事をしているようです。

 しばらくして左の同音連打のところで少しの不安が来て、でも中間部の長調のところでは、どこか蝶々が飛んでるような広く明るい場所へ出て、少し気分が晴れて、心の中でスキップでもしているかのよう。

 そのあと、また不安が頭をよぎっても、それほど深刻でもなく、ものすごくハッピーではないけれど、曲の間中、気持ちが上に向いたり下に向いたりしながらも、最後には心が落ち着いて小さな幸福を感じているような。 

 そんな情景を思い描いてしまいました。


 そして・・

 こちらは対照的なギレリスの演奏。

 まずは、聴いてみてください。

 テンポの遅さといい、冒頭の左ノンレガートであるにもかかわらずとても暗く重い足取りで思い悩む印象。同音連打の場面は、グールドのような頭をよぎる「不安」なんかじゃなくて、「絶望」って感じ。

 グールドの散歩のイメージとはまるで違う。

 少し胸が苦しくなるような表現です。


 でも、どちらも好きです。

 グールドの思い描いた風景と、ギレリスの思い描いた風景。

 同じ曲でもこれだけ変わるんですね。


 始めの標題の話に戻りますが、ピアノソナタの「田園」という標題は、作曲の次の年1802年の初版には付かなかったけれど、ベートーヴェンの死後、10年余もたった1838年に別の出版社から出版されるときに表紙につけたもので、ベートーヴェンの意図とは一切関係がありません。

 作曲は1801年、この後1802年に、あの「ハイリゲンシュタットの遺書」を書き、その辺りを転機に中期と位置づけられて、その中で、交響曲第6番の「田園」が作曲されています。


 調べてみると、この交響曲第6番「田園」は、唯一ベートーヴェンが標題を付けた交響曲であり、楽譜にはベートーヴェンの筆跡で

「シンフォニア・パストレッラあるいは田舎での生活の思い出。絵画描写というよりも感情の表出」

と書かれているとあります。

 また、この交響曲は珍しく第5楽章まであり、この楽章それぞれにまで標題をつけています。

1「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」

2「小川のほとりの情景」

3「田舎の人々の楽しい集い」

4「雷雨、嵐」

5「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」


 この時代までに、標題(タイトル)を付けることは珍しいことでしたが、ベートーヴェンがここまでしっかりとした標題を付けて作曲した、しかも風景描写よりも、のどかな自然に身をおいている感情を表現しているという、この交響曲もだんだんと興味が湧いてきます。

 この交響曲「田園」は1808年に完成していて、もしかしてこれを作るためのピアノソナタ15番?とも感じてしまうのですが、どうなのでしょうか。

 今度じっくり、交響曲「田園」も聴いてみようと思います。 


 


 せっかくなので、リストがピアノ独奏に編曲したものを。

とても長いですので、お好きなところだけでもどうぞ。




 ことし最後のブログです。


 6月からブログを書き始めて、手探りでやってきました。

 いつも心がけていたのは、音楽、特にクラシック、特にピアノの素晴らしさを、クラシックに少し興味を持ち始めた方にも、感じてもらえたら…ということでしたが、

 

 何度も書き直したりと文章で音楽を語るのは、とても難しいことだなぁと感じました。

 


 でも、たくさんの方がピアノを楽しんでいることにも刺激を受けたり、自分では知りえなかったピアニストや曲なども教えていただいたり、いろいろな考えに触れたくさん勉強もさせていただきました。

 このブログで出会えた方、ご覧くださった方々に感謝いたします。

 


 最後に、今年ご縁があって一緒にピアノのレッスンを始めてくれた生徒さん、

ありがとうございました!

 毎回レッスン毎に、できることが増えている姿をみて、いつもすごいなぁと思い、私もがんばらないと!と刺激をいただいていました。

 よく自分ではなかなか上達しないと聞くのですが、そんなことは全くなく、1週間2週間おいてから私が聴くと、本当に進歩してきているのですよ。

 私もまだまだ知りたいことやってみたいことがたくさんあります。

 

 来年も、ご一緒にレッスンできることを楽しみにしています!

  

 どうぞよろしくお願い致します。