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なるの台本置き場

【女2】レイニー

2022.05.15 03:00

女2/時間目安15分



【題名】

レイニー



【登場人物】

小夜(さよ):雨に愛された女。

真紀(まき):雨が嫌いな女。



【作中に出てくる雨について】

小夜時雨

:サアッーと短い時間に降る夜の冬の雨。

篠突く雨(しのつくあめ)

:地面に叩きつけるように激しく降る雨。

遣らずの雨(やらずのあめ)

:帰ろうとする人を引き留めるかのように降ってくる雨。

天泣(てんきゅう)

:上空に雲がないにも関わらず雨が降る現象。



(以下をコピーしてお使い下さい)


『レイニー』作者:なる

https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/34341766

小夜(女):

真紀(女):




-------- ✽ --------






001 小夜:マキちゃん、何見てるの?


002 真紀:んー?サヨ。


003 小夜:嘘つき。私の事見てなかったじゃん。


004 真紀:サヨの事見てたよ?ほら。



005 小夜M:マキちゃんは窓の外を指さした。外は雨が降っていた。



006 小夜:ほんとだ。私だね。



007 真紀M:彼女の笑顔は、いつでも雨の中だった。



(間)



008 小夜:最近雨多いね。


009 真紀:……うん。


010 小夜:雨嫌い?


011 真紀:嫌い。


012 小夜:どうして?


013 真紀:ジメジメするから。


014 小夜:確かに、髪の毛広がっちゃうからお出かけするの嫌だなぁ。


015 真紀:世界が暗いのも嫌。


016 小夜:気持ち沈んじゃうもんね。


017 真紀:低気圧になるし。


018 小夜:マキちゃん低気圧に弱いもんね。


019 真紀:あと……。


020 小夜:うん。


021 真紀:……雨の時は機嫌が悪くなるから、嫌い。


022 小夜:お母さん?


023 真紀:……そう。雨の日はお客さんが減るんだって、言ってた。


024 小夜:お母さん何の仕事してたの?


025 真紀:詳しくは知らない。……小さい時に出ていったから。


026 小夜:そっか。


027 真紀:客が来ないって私を叩くんだ。雨は痛いから、嫌い。


028 小夜:ねぇマキちゃん。私の事はすき?


029 真紀:……すき。


030 小夜:このくらいの時期の夜に降る雨の事なんて言うか知ってる?


031 真紀:なに急に。


032 小夜:知ってる?


033 真紀:……知らない。


034 小夜:小夜時雨(さよしぐれ)って言うの。


035 真紀:サヨ。


036 小夜:うん。私の名前はこの時雨から来てるんだ。私が生まれた日は雨が降ってたんだって。


037 真紀:サヨはさ、雨女だよね。


038 小夜:そうだね。外行く時は絶対雨降ってる。出た時晴れてても、その後土砂降りの雨とかね。


039 真紀:名前が雨を呼んでるのかもよ。


040 小夜:だとしたら私凄くない?


041 真紀:私だったら嫌だけどな。


042 小夜:雨嫌いだから?


043 真紀:そう。雨嫌いだから。


044 小夜:最初は私も嫌だったけどね。いっつも雨だし、髪の毛広がるし。でもね、おじいちゃんに言われたの。『サヨちゃんは雨に愛された子なんだね』って。


045 真紀:愛された子。


046 小夜:雨女ってさ、龍神様に愛された子なんだって。だから、運が良かったり、何か困った時に助けてもらえたり。


047 真紀:言い伝えみたいだね。


048 小夜:そうだね。でも、それ聞いた時に思い当たる出来事多すぎたの。それからかな、雨が嫌じゃなくなったのは。


049 真紀:そっか。


050 小夜:マキちゃんも少しはすきになってくれる?


051 真紀:ムリ。雨嫌いだもん。


052 小夜:え〜。


053 真紀:でも、小夜時雨はすき。


054 小夜:ふふ、マキちゃん可愛い。


055 真紀:うるさい。


<小夜を押し倒す真紀>



056 小夜M:雨の音を聞きながら余裕のないマキちゃんを目一杯愛する。普段あまり表情の変わらないマキちゃんが焦る姿はいつも以上に愛おしい。



057 真紀M:時雨はいつしか篠突く雨(しのつくあめ)になっていた。今日の雨は長い。







058 真紀:サヨ、今日泊まってくの?


059 小夜:あ、今日は1回家帰るつもり。長いこと家戻ってないし。


060 真紀:夕飯は?


061 小夜:今日は同期の人達とご飯食べに行く予定だから大丈夫。


062 真紀:……そう。


063 小夜:1回家に帰ってから行こうかなと思ってる。


064 真紀:……メンバーは?


065 小夜:ん?同期の人達?


066 真紀:男、いる?


067 小夜:いるよ。


068 真紀:何人?


069 小夜:3人。


070 真紀:……そっか。


071 小夜:マキちゃん。行ってきてもいい?


072 真紀:いいよ。


073 小夜:本当に?


074 真紀:いい。


075 小夜:ふふ。……じゃあさ、マキちゃんが今日の格好決めてよ。


076 真紀:なんで私が……。


077 小夜:これ来ていくよ?


078 真紀:そんな肩と背中が開いたやつ……ダメ。


079 小夜:じゃあマキちゃんが選んで?


080 真紀:……分かった。



081 小夜M:そういってかれこれ10分ほど悩んだマキちゃんが持ってきたのは、マキちゃんが滅多に着ないであろう露出の少ない真っ黒なワンピースだった。



082 真紀:着れた?


083 小夜:うん。……どうしてこれにしたの?


084 真紀:それは……。


085 小夜:肩も出てないし前屈みになっても胸元見えないね?


086 真紀:さっきのサヨのワンピースが露出多いだけ。


087 小夜:でもマキちゃんこのワンピース好きでしょ?


088 真紀:……可愛いサヨは好き。


089 小夜:ふふ。マキちゃん可愛い。


090 真紀:あ……ここ。


091 小夜:なに?……これ、マキちゃんがつけたやつだよ?


092 真紀:ギリギリ見えないね。


093 小夜:なんで残念そうなの。


094 真紀:子犬よけにならない。


095 小夜:大丈夫だよ、同期みんな彼女持ちだから。


096 真紀:サヨ、みんなには恋人いないって言ってるじゃん。


097 小夜:恋人いないとは言ってないよ。彼氏いないって言ってるだけ。


098 真紀:私はサヨの何?


099 小夜:彼女。


100 真紀:そう……。


101 小夜:心配?


102 真紀:……別に。



103 真紀M:私は思わず顔を背けた。不安も心配も、いつもサヨは気づいて隠してくれるから。



104 小夜:そろそろ行かなきゃ。


105 真紀:……行ってらっしゃい。


106 小夜:ふふふ。


107 真紀:……サヨ?


108 小夜:みて、マキちゃん。


109 真紀:雨降ってるね。


110 小夜:ふふ……あはは!


111 真紀:どうしたの、サヨ。


112 小夜:マキちゃんのお願い、お天道様に届いたのかもね?


113 真紀:どういうこと?


114 小夜:これさ、遣(や)らずの雨じゃない?


115 真紀:遣らずの雨?


116 小夜:遣らずの雨はね、帰ろうとする人を引き留めるみたいに降ってくる雨のこと。……マキちゃん、本当は行って欲しくなかったんだね。


117 真紀:……そ、そんなこと……!


118 小夜:あー、雨強くなっちゃった。


119 真紀:えっ、


120 小夜:ほら。これじゃあ電車止まっちゃうかなぁ。


121 真紀:それ、は。


122 小夜:マキちゃん雨止ませてよ。


123 真紀:知らない……。


124 小夜:マキちゃんが思ってる事を言うだけだよ。


125 真紀:私は……その……。


126 小夜:マキちゃん。


127 真紀:行かないで。(小さく呟く)


128 小夜:ん?


129 真紀:行かないで。


130 小夜:よく言えたね。偉い偉い。


131 真紀:でも友達は大事じゃ。


132 小夜:マキちゃんの方が大事。


133 真紀:私またサヨの事困らせた。


134 小夜:そんな事ない。見て。


135 真紀:……行く気無かったんじゃん。


136 小夜:ふふ。


137 真紀:サヨ、イジワル。


138 小夜:可愛いマキちゃんが見たくて。


139 真紀:でも家戻るんでしょ?


140 小夜:マキちゃんも外行く準備して一緒に行こう?


141 真紀:でも雨。


142 小夜:たぶんもういつも通りの雨だよ。



143 真紀M:外を見ればさっきまでの雨が嘘のように大人しくなっていた。



144 小夜:マキちゃんも龍神様に気に入られたのかもね。ふふ。


145 真紀:雨は嫌い。


146 小夜:はいはい。今日は私の部屋でお家デートね。


147 真紀:明日映画観たい。


148 小夜:久しぶりに映画館行く?


149 真紀:いや、サヨの家で。


150 小夜:いいの?うちからなら映画館も近いけど。


151 真紀:サヨの家のテレビ大きいからいい。


152 小夜:分かった。じゃあ家着いたら何見るか決めようね。







153 真紀:サヨ、傘持った?


154 小夜:持った!


155 真紀:ハンカチは?


156 小夜:鞄の中!


157 真紀:水筒は?


158 小夜:バッチリ!蓋もちゃんと閉まってる!


159 真紀:替えの靴下は?


160 小夜:あ!忘れた!


161 真紀:持っておいで。


162 小夜:ごめん〜!……はい!お待たせ!


163 真紀:ゆっくりでいいから、ちゃんとしまいな。


164 小夜:うん。……マキちゃん私がよく忘れるものバッチリ把握してるね。


165 真紀:サヨに忘れ物チェックする所までがデートの準備だから。


166 小夜:ふふ、いつもありがと!さ、いこう!


167 真紀:うん。早く行こう。


168 小夜:あれ、もう電車の時間?


169 真紀:晴れてるうちに駅にたどり着きたい。


170 小夜:あ、そっち?


171 真紀:サヨがこんなにはしゃいでるのに晴れてるなんておかしいから。


172 小夜:もー!失礼な!


173 真紀:だってサヨは雨に愛された子でしょ?


174 小夜:うん。


175 真紀:あ、ほら。


176 小夜:ん?……うわ!雨降ってきた!


177 真紀:やっぱり。


178 小夜:あはは!本当に降ってきちゃったね。


179 真紀:でも太陽出てる。


180 小夜:お天気雨だね!


181 真紀:早く駅行こう。


182 小夜:そうだね。


183 真紀:サヨ、この雨はなんて言うの?


184 小夜:天泣(てんきゅう)だよ。


185 真紀:サヨ物知り。


186 小夜:雨の事なら任せて。


187 真紀:サヨは本当に雨が好きだね。


188 小夜:うん!大好き。


189 真紀:ねぇサヨ。


190 小夜:なに?


191 真紀:私がまた雨に振られたらその時は包んでくれる?


192 小夜:ふふ……うん。もちろん。


193 真紀:じゃあ私も好き。


194 小夜:ホント!


195 真紀:本当。


196 小夜:嬉しい。







197 小夜M:もし貴女がまた雨に振られたら、全部を包んで隠してあげる。嫉妬も不安も愛情も全部。あなたの涙すら隠してしまおう。雨が降り続く限り。



(終)