【レビュー①】第47回直方谷尾美術館室内楽定期演奏会
「沢山の聴衆が来場し、その聴衆が、皆、オール・ベートーヴェンのプログラムを喜んでいたことに驚きです。」
久方ぶりに来場くださった音楽ジャーナリストの渡辺和さんから頂戴した言葉です。
当会の賛助会員でもあります。
コロナ禍で動員が100人越えしたのは、2020年のクァルテット・エクセルシオ以来のこと。
今回とともに公のコロナ禍自粛が解除された時です。
ご来場くださった方々の全ては、終演後、大きな喜びを抱かれて帰途に着かれていたことを肌で感じました。
私たちの演奏会は弦楽四重奏の時ほど、真摯な空気に満ちます。
人口6万人弱の小都市では信じがたいことのようですが、その土壌を作ったのはこれまで15回来演してくれたクァルテット・エクセルシオ。
そして、この演奏会の趣旨に賛同くださる会員さんをはじめとする聴衆、支援者、協力者の皆さんです。
有機農業や自然農業は、それを貫く生産者だけではなく、彼らを支え、食する人たちがいるからこそ、成立していると聞きます。
この演奏会もそのようでありたいと願います。
一方で、私は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は特別なものではないと考えています。
食事に例えるなら、白飯、みそ汁、漬物、煮野菜、焼き魚で構成されるシンプルだけど基本的な献立の御膳ではないでしょうか?
ところが、現在、日本でベートーヴェンの弦楽四重奏曲を定期的に提供する地域は限られています。
私の知るところでは
東京・千葉・神奈川
京阪神
名古屋
札幌
直方
ではないでしょうか?(※)
これは危惧することです。
基本的な献立の御膳が提供されないばかりか、ファミレスのような食事が幅を利かせていれば食する人(聴衆)は駄目になります。
当然、料理人(演奏家)も経営者(ホールや主催者)も。
モデルケースを示しているつもりはありませんが、ここはぶれてはいけないところ。
クァルテット・エクセルシオを主軸に、福岡発弦楽四重奏団、タレイア・クァルテット、そして、紹介したい2つの若いクァルテット(今は秘密)たちとともに、《心に滋養のある献立づくり》を目指していく所存です。
そして、この趣旨による演奏会が、直方市という小都市の小規模ながらも密度の濃い、他の地域にはない個性になればと願います。
次回、6月11日のクァルテット・エクセルシオの回で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全てが直方谷尾美術館に鳴り響いたことになります。
後期作品のみ連続演奏会をしましたから、13年かかりました。
そして、これから、2年半ほどの時間をかけて、それら全曲を連続で聴いてもらう時が来たと感じています。
※あくまでも私の知るところです。「ここもありますよ!」という方はお知らせください。定期的ですから、最低1年1回はベートーヴェンの弦楽四重奏曲が継続的に紹介されている地域です。