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超人ザオタル(68)世界の自由

2022.05.17 01:11

私は言葉を口にするのに黙って思慮を重ねていた。

それを見ていたハルートが先に言った。

「ザオタルさま、今日はお疲れでしょうから、

少しお休みになってください。


私は宿の食事の支度がありますから、

またお声掛けに参ります」

「…ありがとう、ではそうさせていただくことにするよ」

私は重苦しい思慮から解放されて、一息ついた。


ハルートは立ち上がると扉を開けた。

振り向いて私に笑顔を見せ、軽くお辞儀をして出ていった。

扉が小さな音を残して丁寧に閉められた。

私はしばらくその扉を見つめ続けた。


気づくと、身体から疲れが押し寄せてきた。

あまり気にはしていなかったが、旅で無理もしていたのだ。

この世界は私に何をさせようとしているのか。

私はベッドに横になり目を閉じると、すぐに眠ってしまった。


遠くで扉をノックする音を聞いた。

その音で私は目が覚めた。

ゆっくりとこの世界に感覚が戻って来た。

「お食事の支度ができました」


そう扉の向こうからハルートの声がした。

「どうぞ食堂までお越しください」

そう言うと、扉から去っていく足音がした。

私は洗面所を見つけて、顔を洗った。


タオルで顔を拭きながら久しぶりに鏡に映った自分の姿を見た。

ザオタル、こんなところにいたのか。

ところで、おまえは誰なのだ。

そんな声がかすかに聞こえた気がした。


食堂はすぐに見つかった。

数人の宿泊客がすでに食事をしていた。

ハルートが手を上げている。

「どうぞこちらへ」


私はハルートの立っているそばの席に行き、礼を言って座った。

ハルートは私が座るのを見届けると、また仕事に戻っていった。

こんなところで食事をするのはいつぶりだろうか。

目の前にはいい香りのする温かい食事が用意されていた。


口に運ぶすべての料理が美味しかった。

これが食事というものか。

ずっと野宿を繰り返してきた私に何かを思い出させた。

そう、それはアルマティの家の食事だ。


世界は食料を人に与え、それを人は料理する。

それを食べて、人は何かを考えるのだ。

何を考えるかは自由。

そしてその考えから行動を起こす。


考える前に行動を起こすこともあるかもしれない。

考えは行動のあとに理由をつけることもあるのだ。

私はゆっくりと恵まれた食事を味わった。

どんなものであれ、これは世界が与えてくれる。


なぜ世界はこうして私を生かすのか。

これからの私に何を期待しているのか。

それとも何も期待せずにいるのか。

私には何もしない自由さえ与えられているのだ。