『帰忘』インタビュー③福井しゅんや
福井しゅんやさんです。よろしくお願いします!
すみません、ちょっと遅刻しちゃって。頭にリンス乗っけてきちゃって。
頭にリンス…?どういう状況ですか?
今日、稽古前にインタビューがあるから早めに来たんですけど、稽古場の直前で「あれ、なんか頭がベトベトしてる」って気づいたんです。それで引き返して、水で流してから来ました。
そんなことありますか?(笑)
では、早速本題に入ります。
よろしくお願いします。
稽古の調子はいかがですか?
いつも作・演出をすることが多くて、役者業はたまにやりますけど、基本的にあんまりやってこなかったんです。ちょっと素人みたいなこと言うんですけど、役者さんってセリフを覚えて、ちゃんとやって、ほんますごいなって感じてます。でも、昔とった杵柄を駆使して僕も食らいつくというか、遊馬くんには負けないぞっていう気持ちでやってます。
井上の演出はどうですか?
すごく空中戦というか、あんまり分からん人には分からんけど、ゆっくり毒を盛っていくみたいな感じがしています。厳しいとかは全然ないんですけど、ともするとちょっと残酷さもあるような感じかなとなんとなく思っています。
だから、ちゃんと前向きに、不真面目なところを見せずに取り組もうと頑張ってます。今まで役者としてやるときに、不真面目でよく怒られてきたので。
でも、他の出演者のみなさんが面白いので、めっちゃ楽しんでます!
福井さんの演じる「七里」について教えてください!
関西弁の役です。実は、関西弁の役は個人的にあんまりやりたくないんです。だって、自分やもん(笑)
この作品の男性陣は基本的にみんな、被害者であり、被疑者であり、当事者なんですよ。でも、七里は当事者でありながら他のみんなとちょっと離れていて、断罪する側にいるような気がしています。自分でもやってんねんけど、「それは違う、あかん」ってやったりもして、でもやりきれへんというポジションかなと思ってます。たくさん発言して、場をかき回すんです。
それぞれ罪に対しての距離の取り方は違うと思うんですけど、七里は七里でちょっと違う距離があるのかなって思います。それがおもろいですね。
たしかに、罪への距離の取り方は人によって変わりますよね。
オファーをいただいたとき、企画書に「忘れることの罪と罰」ということが書かれていたんです。僕自身、罪と罰のバランスみたいなことを結構考えるので、すごく共感しました。
子供のときは、罪に対する罰のジャッジが常にクリアで正しかったと思うんです。例えば、1悪いことをしたら、1償うみたいな。でも、大人になるにつれてそのバランスが崩れていっている気がします。3悪いことしたら、40償わなきゃいけなかったり、50悪いことをしたのに一切償わない人もいたりしますよね。
七里のキャラクターにも、罪と罰のジャッジのバランスが訳分からんくなっている感じを反映できるなって思っています。
面白い視点ですね。
福井さん自身は今回のテーマ「忘れる」ということについてどうお考えですか?
「忘れる」って結構罪深いことだと思います。忘れてしまうことって過失と思われがちですけど、忘れられることって相手は一番ショックを受けることじゃないですか。だから、嫌われることよりも忘れられることのほうが罪深いなと思います。
どんな人にこの作品を観ていただきたいですか?
この作品に限らず、常に地元のツレが観にきて面白いって言ってくれるかどうかを気にしています。お芝居をやっている人や、よくお芝居を観る人が楽しむことはもちろん大事なんですけど、お芝居のことをまったく知らない人が観ても面白いって言ってもらいたいですね。
今回は共感できるポイントが分かりやすいと思うので、初めて舞台を観た人でも面白いんじゃないかなあと思いますね。
初めて観た人にも楽しんでもらえるというのは大切ですよね。
もちろんお芝居をやっている人もですけど、舞台を初めて観たっていう人にも「なんじゃこれオモロ」っていう感想を抱いて欲しいです。やっぱね、感情を売る商売なので。値打ちのある、出会ったことのない感情や、名前がまだついていない感情を見せたいです。
今回は、「忘れる」という無意識の感覚を劇にしているので、近いことをやっている気がします。むちゃくちゃ難しいことをやっていると思うんですけど、もし表現できたら劇の新しい可能性を広げる気がしています。僕も脚本を書くので分かるんですけど、作劇ってどこか自分の意識の中でやっていることなんです。だからこのチャレンジングな場に立ち会えるのは楽しいですね。
最後に、意気込みをお願いします!
絶対負けへんで!
ファイ!オー!ファイ!
ツ!ユ!T・S・U・M・A・K・U・R・A!TSU・YU・MA・KU・RA!GO ON!
露と枕『帰忘』
2022年6月1日(水)~6日(日)
@下北沢「劇」小劇場