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旅のチカラ、旅のカケラ

アラビア半島、夏景色

2008.08.11 09:05


しまった…!

後の祭りとはこういうことを指す。

でも、アテの無い旅にはいいスパイスだ。


早朝6時、

ホデイダから「タイズ」という街を目指し、

1日1本しかない長距離バスに乗った。

エアコン完備の快適なバス。

ここイエメンは早朝から気温はぐんぐん上がり、

あっと言う間に40度を超すのだから。



あまりの快適さについうとうと、

気がつくと荒涼とした景色が車窓を染めていた。

「ここはどこ?」

車掌に尋ねると、知らない地名が返ってきた。

「タイズに行きたいんだけど…」

「あぁ、とっくに過ぎたよ」


えぇぇ!!と、驚くこと3秒。

でも、すぐに楽しい気分になってきた。



このバスの終点は「アデン」だと言う。

じゃあ、アデンまで行ってみますか!?

差額の600リアル(約300円)を払い、

もう150kmのバス旅が追加された。


アデンはイエメンの港湾都市。

旧南イエメンの首都であった。

古くから海運の要衝「海のシルクロード」として注目され、

オスマン帝国もここを支配していた。

近代はイギリスの植民地として支配を受けるが、

イギリス統治下で急速に港湾として機能が充実した。


アラビア半島の南端、そこはアラビア海が広がっている。

砂漠地帯を抜けると、空気が湿気を帯びてきた。

海が近い。


日本じゃお盆休みが始まった頃だろうか?

成田空港は出国ラッシュだろうな。

去年の今頃は、エアコンの効いた部屋でうたた寝しながら

高校野球を観てたっけ。

今年の夏は長い。

日本を旅立った2月からずっと続いているのだから。

終わらない夏をどこまでも追いかけている。



視界に海が開けた。アラビア海だ。

山岳地帯、砂漠地帯を抜け、

ついにアラビアの海岸線を走っている。

ちょっと未来を踏み外したことで

まったく新しい展開。

人生なんてどっちに転んだっていいんだ。

手にした未来を楽しめばそれで。


潮騒に心が躍る。

窓から顔を出して、大声で叫びたい気分だ。

吹き付ける強風に目を細めながら、

遥か水平線を見つめた。


夏色のアラビア、

イエメンの果てと、終わらない夏を見つけた。