Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

旅のチカラ、旅のカケラ

渚のシンドバッド

2008.08.12 10:40


夏、夏、夏、夏、常夏

アイ、アイ、アイ、アイ、アイランド♪

浮かれ気分で海岸線を走る。

光る水面、どこまでもつづく水平線。

キタ、キタ――!!夏だよ!海だよ!



イエメンの南端「アデン」。

ここは旧南イエメンの首都だった場所。

街の背後には巨大な岩山が迫り、

荒涼とした風景が広がる。

目指すは「ゴールド・モアー・ベイ」。

名前も浮かれ気分な美しいビーチ。

頭の中のBGMはサザン、TUBE、TRF。

ちょっと世代の古さがバレちゃうけど、まぁよしとしよう。

ビーチサンダルを脱ぎ捨てて、砂浜を駆け出した。


海は遠浅で、少し波が高い。

エメラルドグリーンではなかったが、充分にキレイな海だ。

寄せては返す波を乗り越えて、どんどん沖に向かった。

天を仰ぎながらプカプカと浮かんでいると、

もう波の音しか聞こえない。


ワクワクしながら海を目指し、

潮騒に比例して胸の高鳴りも大きくなる。

ギラつく太陽を浴びて、喉を渇かして、

身体が空っぽになるまで叫び、走り、泳ぐ。

疲れたら木陰で波の音を聞きながらひと眠り。

サングラスのムコウに、夏の力強い雲を見た。



楽しい時間ほど、去り際は淋しいもので、

なんだかすべての音が遠く小さくなっていく気がする。

乾いた身体の砂を払い、サンダルを履く。

波打ち際で、ちょっと感傷的な気分に浸った。


蝉が短い夏を力の限り鳴くように、

終わらない夏を旅している自分も、

力の限りに今日を生きている。


こうして旅をつづけていると

1日1日の密度が濃く、

濃過ぎる時間のせいで毎日がとても早い。

すべてが一期一会で、二度と戻らない時間たち。

神経を研ぎ澄ます、というよりは

リラックスした状態で毎日を過ごしているので

1日の時間の移り変わりがよくわかる。


時計を見なくても、太陽の傾きや影の長さ、

そして風の温度で時刻がわかってしまう。

街には色があり、

特に夕方のオレンジに染まる街が好きだ。

たしか梶井基次郎も『檸檬』の中で

同じセリフを言っていたような…。

中学校の教室、国語の時間に読んだ作品。

こんなに時間が経って、こんな異国で記憶が甦るとは。

二度と戻らない時間、と書いたが、

どこかでつながっているのだろう。


そろそろイエメンの旅も終わりが近づいてきた。

もうすぐ発車のベルが鳴る。

この海の向こうにある、アフリカ大陸が待っている。


まだまだ高い太陽を背に、宿への道を歩き出した。

渚のシンドバッド、そんな気分で。