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七枝の。

台本/ループループループ!(男1:女1)

2022.05.19 05:02

〇作品概要説明。

主要人物2人。ト書き含めて約8000字。タイムマシンものラブストーリー。過去改変を目論む女が計画通り過去に飛ぶものの、なにも過去を変えることなく望む未来を手に入れる話。


〇登場人物

風音:バイト先の先輩。本日付けで退職する。女性。

戸間:大学生。バイト仲間。男性。

アナウンサー:台詞は二言。兼役推奨。


〇ご利用前に注意事項の確認をよろしくお願いいたします。

https://natume552.amebaownd.com/pages/6056494/menu

作者:七枝


本文


〇戸間にとっては未来の、風音にとっては過去の会話。


風音:先輩は、タイムマシンで何したいの?

戸間:昔、大切な人をなくしたんだ。

風音:その人を救いにいくの?

戸間:……ああ、そうだよ。

   間。場面転換。

〇真夜中の公園。街灯下のベンチにて。風音がスマホでニュースをみている。

アナウンサー:本日未明、秋葉区の飲食店が入るビルにて覆面をつけた男が店員に刃物をつきつけて、店の売上金を強奪するという事件が発生しました。男は刃渡り20cmほどの刃物を所持しており、黒のジャンパーと灰色のスラックスを履いた……

戸間:(かぶせて)せーんぱい!

風音:……

戸間:先輩ってば!

風音:……んぁ?

戸間:ニュースばっかみてないで俺の相手もしてくださいよ~!

風音:あ~はいはい。

戸間:うわ、テキトー!

風音:そんなことないない。

戸間:ありまくりっすよ!

風音:なにその口調?似合わないよ?

戸間:ひどい!

風音:…………

戸間:無視しないでくださいよ。

風音:わかったわかった。ほれ、かんぱーい。

戸間:……かんぱーい。

戸間:(酒をのむ)ぷはー!うぅ、おいしい……

風音:美味しいなら美味しい顔しろ~!先輩のおごりだぞ~

戸間:おごりなら、こんな外じゃなく、もっとちゃんとした店連れてってくださーい。

風音:うっせー

戸間:それか先輩の家でもいいです。

風音:ダーリンが嫉妬するからだーめ。

戸間:ひどい!

風音:ひどくなーい。

戸間:あーあ。これなら田崎の送別会に出てりゃよかった。

風音:それなら私とはこれっきりだね。

戸間:ぐっ

風音:田崎ちゃん可愛いからな~あっち行っちゃっても仕方ないよね~就職決まったとこもあれでしょ?なんか大きなビルの受付嬢やるって話なんでしょ?いいよ?今からでも田崎ちゃんの送り出し会いってくれば?

戸間:行かないですよ!俺は先輩がいいんです!

風音:お?いいのぉ?光栄だなぁ。

戸間:だいたい本当に俺が行ったら困るでしょ?それとも一緒に送別会いきます?

風音:行くわけないじゃん。帰って寝るよ。

戸間:俺がここにいてよかったでしょう?

風音:そうねぇ。にぎやかしにはなったかな。

戸間:またまたそんなこといって。寂しいなら寂しいって言っていいですよ。なんならバイトやめるのやめたっていいですよ。

風音:なにいってんの?

戸間:ガチトーンで返さないでください。

風音:戸間くんは就職決まったんだっけ?

戸間:俺は、まだ時間あるし……院いくって手もあるし……

風音:何も考えてないってことね。

戸間:うっ。

風音:あ、そういや田崎ちゃんが言ってたけど、あの子2年から就活準備はじめてたんだって。

戸間:うぅ……

風音:きみ、これからどうすんの?

戸間:せんぱぁい、相談のってくださいよ~

風音:いや、私もう退職するから。ひとりで強く生きな。

戸間:そうやって皆俺をおいていく……俺をひとりぼっちにするんだああああ!

風音:(ためいき)

戸間:あ、今ため息ついた!ため息ついたでしょ!

風音:めんどくさい男だな。

戸間:えへへ。

風音:褒めてないから。

戸間:あ~酒飲みたい。

風音:今飲んでるじゃん。

戸間:高級焼肉店で、先輩の金で、酒飲みたい。

風音:うざ。

戸間:俺の家でもいいですよ?手料理ごちそうしてください。

風音:恋人がいるんだってば。聞いてた?

戸間:なんですか?そいつは俺よりいい男なんですか?

風音:少なくとも君より14年分いい男だわ。

戸間:なにその具体的な数字!ってか先輩オジサン趣味だったんですね!ショックです!

風音:お、おじ…?いやまだアラサーだし……

戸間:アラサーはおじさんでしょ!

風音:君、その発言いつか後悔するからな……

戸間:しりませーん。

風音:(溜息)

戸間:どこで会ったんですか?

風音:ん?

戸間:その彼氏。

風音:ああ。研究……じゃなくてバイト先。

戸間:けんきゅう?

風音:バイト先だっての。間違えたの。

戸間:正社員だったんですか?

風音:や、相手もバイト。

戸間:30後半でバイトって!悲惨ですね!

風音:違うし。あっちもまだ20前半だったし。

戸間:……先輩、俺の4個上でしょ?中学の時からバイトしてたんですか?

風音:あ~……親の手伝い、的な……

戸間:ふーん。大変だったんですね。

風音:や?したくてしたことだから。

戸間:立派だぁ。

風音:そんなことないけど……ありがと。

戸間:ってか、そいつ中学生の先輩に手をだしたってことですよね?

風音:……そうなる、ね?

戸間:ロリコンじゃないですか!

風音:違う!

戸間:いやロリコンですよ!20代の男が中学生に手を出したらロリコンですよ!

風音:ちがう!そうだけど、ちがう!

戸間:恋人だからって何もかも庇っちゃだめですよ、風音ちゃん!

風音:いきなり馴れ馴れしいな!?ちがうから。ロリコンじゃないから。えっと、アレだ。プラトニック!プラトニックな関係だったの!

戸間:ぷらとにっく……

風音:ピュアな人なのよ。

戸間:三十路のクソ童貞ってことです?

風音:ホントなんなの、お前!?

戸間:いやぁ、えへへ。

風音:笑ってごまかせるもんじゃないからな!……もう。

   間。

戸間:……先輩っていつもそうですよね。

風音:ん?

戸間:俺がどんなこと言っても怒らない。

風音:怒ってるよ?

戸間:でもすぐ許してくれる。でしょ?

風音:……まーね。

戸間:先輩ぐらいですよ、そんな優しい人。

風音:おおげさ。

戸間:大げさじゃないです。バイトだってそうだ。とんでもないミスしたり、客からクレームつけられたとき、いつも助けてくれたじゃないですか。俺、こんなに自分が使えないやつだと思わなくて、当たっちゃったこともあったのに。

風音:「ほっといてくださいよ!」って。中学生日記みたいだった。

戸間:忘れてください。

風音:忘れないよ~あれは笑った。

戸間:……あの時は、すみませんでした。

風音:謝罪よりありがとうが聞きたいわ、おねーさんは。

戸間:ありがとう、風音おねーさん。

風音:おう。

戸間:先輩が先輩でよかったです。

風音:ん。ま~…欲目もあるしね。

戸間:欲目?惚れた欲目ですか?

風音:すーぐ、そうやって調子に乗る。

戸間:すんません。

風音:ほんとだよ。そういう君も嫌いじゃないけどさ。

戸間:へへへっ。

風音:健やかに育てよ、若人。

戸間:何目線ですか?

風音:人生の先輩目線かな。

戸間:4個上くらいで気取らないでくださいよぉ。

風音:さっきは先輩先輩いってたくせに。

戸間:そうですけど。でも……

風音:なに?

戸間:そうやってキョリとられんの、さびしいっす。

風音:……きみ、ホントに私がすきだね。

戸間:惚れなおしちゃいます?

風音:かもね。

戸間:え!

風音:(笑って)ばーか。

戸間:せんぱーい……

風音:ははは。

戸間:ひどいですよ~

風音:悪かったって。ほら、酒のめ、酒。かんぱーい。

戸間:………

風音:ほら。

戸間:かんぱーい……

〇戸間がビールをあおっている間に風音はスマホでニュースを確認している。

アナウンサー:繰り返します。男は刃渡り20cmほどの刃物を所持しており、黒のジャンパーと灰色のスラックス姿で逃走中とのことです。町内にお住まいのみなさんは、くれぐれも夜間の外出にはお気をつけて(不要不急の外出はお控えください。)

戸間:(かぶせて)それ。

風音:ん?

戸間:消してくださいよ。

風音:ん~……あとちょっと。

戸間:今夜が最後なんでしょう?今ぐらい俺に集中してください。

風音:ありゃ?私口説かれてる?

戸間:茶化さないでくださいよ!ああもう!

〇風音、戸間に手をつかまれる。

戸間:俺をみてください、風音さん。

風音:………

戸間:俺の事、どう思ってるんですか?

風音:………戸間くんさぁ、手ガサガサだね。

戸間:は?

風音:大学、工学部だっけ?機械いじりばっかしてるからこんな乾燥してんの?

戸間:え、や、そういうわけじゃないですけど、

風音:男の子もちゃんとケアしなきゃダメだよ~ハンドクリームあげようか?

戸間:風音さん!

風音:会えなくなるからさ。餞別(せんべつ)にあげるよ。

戸間:………

風音:戸間くんとのバイト、楽しかったよ。色々新鮮だったし、きみ可愛いし。今までありがとね。

戸間:ホントにもう会えないんですか……?

風音:うん。

戸間:どうしても?

風音:ごめんね。

戸間:風音さん、フリーターでしょ?就職するわけでもないのにバイトやめるんですか?

風音:そうだね~結構いい職場だったんだけど。

戸間:……俺のせいですか?俺が告白したから、やめるんですか?

風音:ん~……そうだな。前半がイエスで、後半はノー。

戸間:どういう意味ですか。

風音:言っても理解できないって。

戸間:話してくださいよ。

風音:……私さぁ、未来から来たんだよね。

戸間:は?

風音:ここよりちょっと先の未来から来たの。タイムマシンにのって。

戸間:…………えっと。

風音:どう?信じる?

戸間:あ~……はいはい、そういうことですね。わかりました。

風音:ん?

戸間:そっかぁ、風音さん未来から来たんっすね!すごいなぁ!

風音:あ、信じてないなこりゃ。

戸間:信じれますかっての!

〇戸間、勢いよく酒をあおる。

戸間:くっそぉ、ひどいですよ。後輩の純情いたぶって楽しいですかぁ!?

風音:信じなくいいけど、ほんとだよ。

戸間:じゃあ風音さん、ワームホールって知ってますか?

風音:聞いたことはある。

戸間:負のエネルギーは?重力場の方程式書けます?

風音:なにそれまずそう。

戸間:……ほらぁ。

風音:作ったの私じゃないからさあ。

戸間:未来ってのは、そんなにタイムマシンがメジャーなんですか?

風音:まさか。犯罪し放題じゃん。これはうちのダーリンが作ったの。

戸間:三十路のロリコンが?

風音:ロリコンじゃないし、ロリコンと頭の出来は別でしょ。

戸間:ふーん。

風音:なんだよ。少しは興味もってよ。

戸間:他人の彼氏自慢とかどうでもいいんで。

風音:いつになくトゲのある言い方するね。

戸間:何故かはわかるでしょ。

風音:なんで?

戸間:俺の気持ち考えてくださいよ。

風音:なんで?

戸間:なんで、って……はぁ。

風音:なんで?

戸間:………

風音:ねぇ、なんで?

戸間:俺のこと嫌いなんですか?

〇風音、噴き出して笑う。

風音:……っぷ。うぷぷぷぷぷ!あはははははは!

戸間:風音さん!

風音:いやぁ、ごめん。ごめんって!すねた君が可愛くて!

戸間:性格悪いなぁ、あんた!

風音:嫌いになった?

戸間:嫌いになりました!

風音:あはははは!

戸間:もうホントなんなんだよ、この人……最悪……

風音:でね、未来からやってきたわけなんだけど。

戸間:話戻すのかよ。

風音:過去を変えたくて。

戸間:ありがちですね。

風音:うん、ありがちな理由だよ。ダーリンね、足に大きな傷があって。

戸間:へ~

風音:昔、バイト帰りに通り魔に襲われたんだって。傷のせいで今も走れないの。

戸間:そうなんですか。

風音:うん。しかもね、聞いてよ。その頃に会ったバイト先の子が今も忘れられないんだって!退職するときに飲み明かしたのが一生の思い出だって!

戸間:へ~………え?

風音:ひどいよね、その話きいて私がどう思うかわかってるくせに。いくら過去の話だからってさ~

戸間:風音さん、それって……

風音:だから、過去を変えにきたんだ。

戸間:…………あの、もしかして今日がその日なんですか?

風音:ん?

戸間:恋人さんが襲われた日。今日なんですか?

風音:え、なになに?信じる気になった?

戸間:いや、だって……

風音:ん~?なあに?

戸間:風音さん、ごまかさないで答えてください。風音さんがバイトやめるのって、

〇電話のベルが鳴る。

戸間:……!

風音:電話、鳴ってるよ。

戸間:…………

風音:とらないの?

〇戸間、着信ボタンを押す。

戸間:はい、戸間です。……あ、はい。今風音先輩と一緒ですけど。……え!田崎のやつが?……はい。…はい、ありがとうございます。……うっす、気を付けます。……はい、お疲れ様です。

〇戸間、通話を切る。

風音:なんだった?

戸間:あ……えっと、

風音:田崎ちゃん、どうしたって?

戸間:……あの、風音さんの恋人ってもしかして女性だったりします?

風音:…………

戸間:田崎、さっき酔っ払いに絡まれたって。それで襲われそうになったらしくて。あ、怪我はないみたいっす!周りの人が助けてくれたって。それで、警察につれてったら、どうやら例の通り魔みたいで……

風音:…………

戸間:あの、風音さん?

〇風音、押し殺した笑いが徐々に大きくなる。

風音:ふ、ふふふふ……あはははは!なに?どういう思考回路になったら田崎ちゃんが私の恋人だと思うの?

戸間:え、だって。恋人が今日(襲われるって)

風音:それで田崎ちゃんが恋人だって?しかも結局タイムマシンのこと信じてるの?戸間くんってやっぱ面白いね~あはははは!

戸間:う、嘘なんですか!?

風音:嘘は言ってないよ?ワタシ、嘘ツカナイ。

戸間:なんで片言!?絶対嘘じゃないですか!

風音:あはははははは!

戸間:くっそ……

風音:や~笑った。笑った。きみ、なんだかんだ言って素直だよねぇ。そういうとこ好きだよ。

戸間:どうせからかいがあって、って頭につくんでしょ。

風音:よくわかってんじゃん。

戸間:(舌打ち)

風音:お行儀わるいぞ~うはははは!

戸間:……帰ります。

風音:あれ、怒った?ごめんね?

戸間:ずっと前から怒ってます!

風音:うんうん、しつこかったね。ごめんね。

戸間:………

風音:帰んないの?

戸間:……送ります。

風音:通り魔ならつかまったんでしょ?

戸間:夜道は危ないですから。

風音:っぷ。くくくく……

戸間:なんですか!?

風音:ごめんって。いやぁ気遣いできる男性って素敵だな~カッコいいな~

戸間:それで機嫌とれると思ったら大間違いですからね。

風音:と、いいながらもニヤついてる戸間くんなのであった。

戸間:変なナレーションいれないでください!

風音:あははは!よし、空き缶まとめたよ。じゃ、行こうか!

〇ふたりは連れ立って歩き出す。

戸間:ったく、最後までこんな感じなのかよ……

風音:なに?ロマンティックな決め言葉とか用意してた?

戸間:そういうわけじゃないですけど……

風音:ははは!大丈夫大丈夫。そのままでも十分カッコいいよ。

戸間:雑な慰めはよしてください。

風音:ふふふ。

風音:……だいたいさ、結果から考えるのがおかしいんだよね。

戸間:何のことですか?

風音:私はさ、ダーリンを守りたいんだよ?その上でタイムマシンも作ってほしいの。彼が私に恋してくれるように、筋書きどおりにね。

戸間:ああ。その話、まだ続くんですか……

風音:だから私がやるべきことは二つ。ダーリンを危険から遠ざけること。その上で彼に忘れられない後悔を背負わせること。

戸間:はあ……

風音:ちょっと、聞いてる?

戸間:あ、先輩。赤信号ですから渡らないでください。

風音:じゃあ歩道橋登ろっ

戸間:え~…俺、結構酔ってるんですけど……

風音:いいからいいから。えーっと、それでどこまで話したっけ?

戸間:せんぱ~い。疲れたんで、今日泊めてくださいよ~

風音:(無視して)ああそうだ、やるべきことまで伝えたんだよね。ふふ、守りたい人から目を離すわけないでしょ。田崎ちゃんが恋人とか、ありえないから。戸間さんってユーモアのセンスもあったんだねぇ。

戸間:わ、先輩!身を乗り出さないでくださいよ。危ないですってば。

風音:ふふふ。

戸間:先輩、しっかりしてくださいよ。ほら、つかまって。

風音:ね、戸間くん。14年分の後悔ってどうやったら作れると思う?

戸間:へ?

風音:あ!あそこ、みて!あれなんだろ?

戸間:あそこって、どこですか?せんぱ、い……

戸間:(M)振りかえったとき、先輩は歩道橋の手すりの上に立っていた。まるで階段でもまたぐような気軽さで、宙へと足を踏み出す。

風音:またね、大好きだよ。

戸間:風音さんっ!

戸間:(M)手を伸ばしても一歩遅かった。彼女の長い髪は手のひらをするりとすり抜け、白い肢体は、そのまま4メートル下の車道に吸い込まれていった。そして………

戸間:(M)そして俺は、先輩を失った。

   長めの間。

〇場面転換。数年後、若い風音と20代後半の戸間。

   風音の父親が上司の研究所で、戸間が働いている。

    ドアの音。

風音:せーんぱい!

戸間:……あんた、来たんだ。

風音:へへ、来ちゃった!なに作ってたの?

戸間:単なる趣味だよ。仕事に関係ない。

風音:教えてよ。

戸間:……何の用?

風音:別に何の用でもないけど……先輩に会いたくて?

戸間:帰って。あと先輩って呼ばないで。

風音:なんでよ~先輩は先輩でしょ~

戸間:なんででも。

風音:むぅ。ひどーい!私はこんなに先輩のことが好きなのに!

戸間:俺は仕事関係以外であんたに用はないから。

風音:くすんくすん。戸間先輩が冷たい。父さんに相談しよっかな。くすんくすん。

戸間:………上司の娘だからって態度でかすぎない?

風音:いいもん!権力は利用するためにあるんだもん!

戸間:(ためいき)………タイムマシン。

風音:タイムマシン!?これが?

戸間:まだ試作段階だけどね。

風音:へ~!凄いっ!どうやって使うの?

戸間:触らないで。

風音:ね~どうやって使うの~?

戸間:まだ使えないから。あと使えるようになっても貸しません。

風音:なんで!!

戸間:…………

風音:ちぇっ。理由ぐらい答えてくれてもいいじゃん。

戸間:……帰れば?

風音:(無視して)戸間先輩はタイムマシンで何したいの?

戸間:だから先輩って呼ぶなって、

風音:(かぶせて)答えてくれたらちゃんと「さん」付けで呼ぶから!

戸間:……昔、下町で通り魔事件があったこと知ってる?

風音:ん?知らない。

戸間:だろうね。小さな事件だったから。

風音:それがどうしたの?

戸間:事件が起きた頃に、大切な人を亡くしたんだ。

風音:………戸間さんの怪我もそのせい?

戸間:これは自分で歩道橋から……いや、そうだね。そんなところ。

風音:その人を救いにいくの?

戸間:………ああ、そうだよ。

風音:ふーん。私が実験台になってあげよっか?

戸間:ダメ。

風音:え~

戸間:絶対駄目。

風音:けち。

戸間:ケチで結構。

風音:大切な人って、どんな人だったの?

戸間:……バイトの先輩。

風音:先輩なんだ……

戸間:退職するとき、ひと晩呑み明かしたのが最後の思い出だったな。

戸間:……忘れようと思ったけど無理だった。何度も何度も諦めようと思ったけどできなかった。きっと、このままだと一生忘れられないと思うから、だから、行くんだ。

風音:………戸間さんはさ、

戸間:いつまでいるの?

風音:最後に1個だけ質問!!

戸間:(ためいき)

風音:戸間さんはその人のことが好きなの?

戸間:……好きだよ。ずっと好き。

風音:っ!!私のことは?

戸間:面倒なガキ。

風音:好きか嫌いかで言ったら?

戸間:質問は、最後に1個って言ったでしょ。

風音:好きか嫌いかで言ったら?本当に最後にするから教えてよ!

戸間:嫌い。

風音:~~っ!帰るっ

戸間:はいはい。

風音:……ねぇ、もしその人より先に会ったら、私のこと好きになってくれる?

戸間:は?今なんか言った?

風音:ううん。……またね、戸間さん。

戸間:………

   ドアの閉じる音。

   終了。

※補足。過去は何ひとつ変わってない。