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WUNDERKAMMER

401号室

2017.12.26 16:07

私はマンションの管理会社に勤めている。  

この仕事長くやってると、色んな部屋にまつわる不思議な事に遭遇することがしばしば。 

会社はマンションを12棟ほど所有していて、管理にあたるのはほぼ私一人。会社の本体は別事業をやっており、儲けた分を競売物件につぎ込み増やしている(税金対策)。 

したがって、安く中古物件を購入する為、古くていわくつき物件多数。その物件の一つのでの不思議な話。 


 その物件はKマンション。築25年程。うちに物件がまわって来たのは3年前。

単身用のワンルームタイプ。 競売物件は前オーナーが夜逃げ状態で、物件資料の不備が大量にあった物件。 入居者契約書やら家賃の入金状況もわからない箇所が多くあった。(競売物件では普通?) で、なんとか調べてみると、競売物には珍しく入居状況は良好で、空き部屋は3つ。 

うち2つは半年程空室。しかし、401号室のみかなり長期空室。 

401号室は角部屋で日当たりも良好なはずで、長期空室はちょっとおかしいなと感じた。早速空室の点検に向かうと、2つの部屋はリフォームアップされていたが、問題の401はそのまま。 

前オーナーが金策に困り、そのままの状態で放置したものと考え部屋を物色。 部屋は典型的なワンルームで、玄関を入るとユニットバス・キッチンで、扉を開けると部屋。 窓が右手で奥がベランダ。 

部屋には小さい箪笥に、3段ボックスとテレビが2台。 押入れには布団とごちゃごちゃした小物。

ちょっとした物置状態。 廃棄物代がかかるなぁと舌打ちしながら色んな物を漁ってると、

霊感ほぼ無しの俺が突然人の視線を感じる。

生活臭の残ってる夜逃げ部屋では、たまに違和感を感じる事はあるが、妙に気持ち悪い。 暫く部屋にいたら、どうやら壁に掛けてある古い姿見の鏡から視線を感じる。  

その姿見は壁に張り付けてあって移動ができない。 これはちょっと嫌な部屋だなと感じながら、鏡はみないように作業を続ける。 最後に室内の写真(間取り等の参考資料)をとり終え帰社した。


早速リフォーム業者に連絡をいれ、リフォームアップを待つことにした。

数日後、リフォーム会社の業者から電話。 

業『Sさん言いにくいんやけど、あの部屋なんかありますよ』 私「どないしたんですか?」 

内心やっぱりな…

 業『申し訳ないですけど、今職人と私、401にいるから来てくれます?』  

現地にいってみると、例の姿見の事らしい。 

 業「Sさん、ちょっと裏側みてもらえます?」 

恐る恐る裏をみると、数枚のお札…しかも半分すすけているっぽい。 ちょっと予想していたが、かなりびびってしまった… しかも、職人一人が急に頭痛がして帰ってしまったとの事。 

業「Sさん、いろんな現場入ったけど、ここは気色悪いで… 実はわしもさっき姿見動かした時、鏡に人影みたで」 流石に洒落にならないので、取引のあるお坊さん(別件で供養を数回してもらった経験あり)を呼んで、 業者・職人・私、お経を詠んでもらい無事終わりました。


リフォームアップが完了し、入居者募集開始。  

少し家賃設定を低くしたせいもあって、1ヶ月もしないうちに入居者がみつかった。 入居者は50代前半の女性。あまり詳しくは書けないが、以前長期入院をしていて居住保護の方。  

入居日は福祉関係の人と一緒にきていて、物腰の柔らかい感じのいいおばあちゃんだった。 数日何事もなく過ぎ、401の事もすっかり忘れたある日、402号室の女性から電話が入った。 

内容は、夜間に隣のおばあちゃんが、わけわからない事を叫び壁を叩くとの事。  

こちらで他の入居者などに聞いてみると、内容はこんな感じでした。  

夜間突然廊下に出てきて、 

「天井から出て来て見てる!」「ここの住人は淫乱で男をたくさん連れ込んでる」 「○○より私を睨んで監視している」「監視だけじゃなく強要もされている」「ここは遊郭や」 

など意味不明な事を叫んでるらしい。 夜中ベランダから同じような事を叫ぶため、数回警察がきているらしかった。

 昼間、401をたずねてみると、ばあちゃんは別人の様に変わり果て、目だけが異常に鋭くなっていた。 話をすると、 「朝から晩まで天井から監視されるので眠れへんのや…」 ふと室内の天井をみると、直径30センチほどの穴… 話し合いの結果、おばあちゃんも部屋にいたくないとの事だったので、 福祉に相談して、強制入院&入居解約の手続きをとった。


退去後、天井の穴の修繕で再び業者に依頼し、数日後又電話があった。 

業『Sさん、又401の事なんですけど…』 

私「部屋は綺麗やから、天井とハウスクリーニングだけでええよ」  

業『実は天井補修見てきたんですけど…天井裏お札だらけでしたんや…』 

私「………とりあえず補修宜しく!」 

 おばあちゃんは以前、躁鬱の関係(詳しくは教えてもらえなかった)で入院していたので、 部屋とは関係ないと自分に言い聞かせ、 その後半年間部屋を寝かしたあと、再度募集を開始した。


次の入居者もすぐに決まり、20台後半の男性Aさん。 定職もあり保証人は親で、写真をみるかぎり好青年っぽく一安心。 入居後一度挨拶したが、なかなか礼儀正しい青年だった。

ところが入居後3ヶ月程たってから、Aさんの親(保証人)から連絡があり、Aさんと連絡が取れないらしい。 一度部屋を見たいとの事。 家賃は当月分の振込み無し。  

翌日、両親が田舎から出て来たので話を聞くと、会社も無断欠勤で退社してるとの事。 内心、嫌な感じがした。ただの失踪位ならよくあるが、最悪の可能性も…

両親と部屋の前に到着してみて、呼び鈴を鳴らしても反応なし。 合鍵で部屋に入ろうと扉を開けると、ガチャン。チェーンが掛かっていた。と同時に物凄い悪臭。 

悪臭で両親の手前、失礼だがえずいてしまうほど。玄関は真っ暗でゴミ袋らしき物が見える。 

「○○さーん居てますかー!管理会社です!」 呼びかけたが返事なし。 両親も「○○お母さんやで!」と必死に呼びかけてみたが返事なし。 かすかに室内からテレビの音だけ聞こえてきた。 

両親に「車にチェーンカッターあるんで、もって来て切断しますわ」と声をかけ車に向かう。 チェーンがようやく切れる。 両親に一応「私が先に室内を見ます」と言い部屋に入る。 

うぅ最悪や…玄関ごみだらけ。 

室内は真暗でテレビが点いていた。 「○○さん居ませんかー」と恐々室内を見ると、ベッドの毛布に包まり体育座りのAさん! さすがに驚き、「うわぁぁぁ」と声をあげてしまう。 

大声で心配になり、両親も部屋に入って来た。 「○○!大丈夫か!しっかりしいや」 両親の問いかけにも、無気力にうなだれてるだけ。 髪と髭が伸び、数ヶ月前の青年とは明らかに違っていた… 

 とりあえず、暗いので電気を点けようとスイッチを押してみたが、電気は点かず。 テレビは点いていたのにおかしいなと、天井をみると黒いゴミ袋で覆われていた! よくみると窓、ベランダ、全て黒のゴミ袋で覆われ、目張りまでしていたのだ…

まさに異常。 

とりあえず救急車を呼び、天井のゴミ袋をはずしてみると、 シーリングライトは外され、その横にポッカリ穴が開けられていた…。

 ようやく救急車が到着し、両親は泣きながら一緒に病院に向かった。

数日後、母親が会社に来て、Aさんは田舎で療養するので解約しますと告げられた。 Aさんが心配でしたが、流石に容態やいきさつは聞けなかった… 


 Aさんの退去後約2年近く絶ちますが、現在はあかずの間で入居者募集はとりあえずしていない。 401号を詳しく調べてみたいが、変な噂になると困るのでそれもしていない。 (事実、4階の住人に「401に入ると祟られる」と噂になってたので) 

 管理会社は、警察・知り合い・保証人より先に部屋に突入・事後処理するので色々辛い! ある意味貴重な体験は出来るけどね。

 書き忘れましたが、以前401号をデジカメで撮影した画像に、 まったく撮った記憶がない天井付近の画像があったのは何かの暗示なのかな…