小乗仏教と大乗仏教の違い(3-2) 2022.05.22 11:40 ・自分が幸せになった後、他の人は?小乗仏教が小さな乗り物である2つ目の理由は、悟りを開いた後にもあります。 仏教では、全ての生きとし生けるものは、生まれ変わり死に変わり、輪廻転生(りんねてんしょう)しています。輪廻というのは、車の輪が回ると書くように、どこまで行ってもゴールがありません。この生まれ変わりは永遠に終わることのない苦しみ迷いの旅なので輪廻転生といわれます。 仏教の目的は、小乗か大乗かによらず、この輪廻転生から離れることです。ところが小乗仏教で最高の悟りである阿羅漢の悟りを開き、輪廻転生から離れた人はどうなるかというと、消滅してしまうといいます。それが小乗仏教の教える涅槃ねはんです。 もしそうだとすれば、悟りを開いた自分は苦しみ迷いの旅が終わり、涅槃の境地で安らかになるかもしれませんが、まだ救われていない人はどうなるのでしょうか? ブッダの説かれた仏教は、そんな自分だけ幸せになりなさいという教えではありません。また、自分の幸せを優先しなさいという教えでもなければ、出家して戒律を守り、厳しい修行のできる一部の人だけを救おうとする差別の教えでもありません。どんな人でも救われる、大きな乗り物のような教えが仏教です。これを「大乗仏教」といいます。 ・大乗仏教とは? 「大乗」とは、大きな乗り物ということで、すべての人が救われる教えを大乗仏教といいます。日本に伝わって現在残っている宗派は、華厳宗も、法相宗も、天台宗も、真言宗も、禅宗も、浄土宗も、浄土真宗も、すべて大乗仏教です。 ・生きている時の実践 大乗仏教の教えに一貫する特徴は、「自利利他」です。「自利利他」の「利」とは幸せになることですから、「自利利他」とは、自分が幸せになるままが他人も幸せになるということです。 自利のままが利他になる、利他のままが自利になる、これが自利利他です。それで、大乗仏教の人が行う「六波羅蜜」には、小乗仏教の人たちが行う「八正道」にはない、「布施」が一番最初にあるのです。布施とは、他人に親切することで、他人を幸せにするままが自分が幸せになるということです。 そして自分だけ幸せになって終わりという教えでもありません。死んで浄土へ生まれ、仏に生まれたら、自分だけ八功徳水の温泉につかって、百味の飲食をたらふく食べて、末永く幸せに暮らしましたとさ、で終わりません。まだ娑婆世界には苦しんでいる人がたくさんあります。仏さまには慈悲の心がある、というより慈悲のかたまりですから、苦しんでいる人がいるのに自分だけ幸せになって、「あーあ、苦しんでるなー。それもまあ自業自得だわー」とじっと見ていることはできません。仏さまは苦しみ悩むすべての人を救わずにはいられなくなります。すぐに娑婆世界にかえってきて、すべての人を救う大活躍が始まるのです。それが本当の仏教です。(3-3へ続く↓↓) 小乗仏教と大乗仏教の違い(3-3) 法話 ~なかなか知り得ない仏教のお話~