きものでお出かけ【根津美術館】燕子花図屏風
尾形光琳作 国宝 燕子花図 の屏風を拝見に、根津美術館へ行ってきました。
国宝が間近で見れるというので、ワクワク、評判の庭園の燕子花も見どころの一つ。
素晴らしい美術品と風景に とても良い時間を過ごしました。(写真1)
根津美術館は 表参道駅から徒歩数分にあり、 東武鉄道の初代社長である実業家 根津嘉一郎氏のコレクションを元にして 二代目が設立。
初代が茶人でもあったので茶道具が豊富です。
また広い庭園には 3つの茶室、緑と池を配しており、都心とは思えないほどゆったりと過ごせる場所です。
さて、今回の展示のテーマは実際に根津氏が主催したお茶事を再現。(会期は終了しています。)
展示物は 当日の掛け物や花入れ、お茶碗など。 茶事の進行通りに展示しており、 まさに自分が招待されているかのようでもあり、また茶道を今年はじめたので 興味深く拝見しました。
いよいよ今回の見どころである、尾形光琳*1作の燕子花の屏風絵は お茶事の合間に客に披露されました。
この屏風は 6曲1双の金地で、 縦約150cm X横約350cm と大きく 迫力があります。 招待客はきっと度肝を抜かれたのでは?! と思います。 私も圧倒されました!
この燕子花は 『伊勢物語』の 『東下り』の1シーン。
主人公『昔男』(むかしおとこ) が 旅の途中、燕子花の綺麗な場所で お昼を食べながら 都に残してきた人のことを思って和歌に詠んだ*2というくだり。
その場所が8つの板の橋を渡してあったので、このシーンを『八つ橋』といい有名です。
今回の屏風には この橋はありません。金屏風に燕子花のみが描かれていて、その単純さに迫力があります。(写真は美術館のHPで見ることができます。)
実は燕子花の図屏風はもう1双あって、橋が描かれている『八つ橋図屏風』(メトロポリタン美術館蔵)。
このお茶会の殿(しんがり)*4は 在原業平(ありわらなりひら)*3が描かれている硯箱(光琳作)。
さぁ、なぜでしょうか?
実はこのかた 『伊勢物語』の主人公、『昔男』のモデルと言われている人物です。
燕子花図屏風が 『伊勢物語』の『八つ橋』が題材であること、 主人公が ”なりひら” であることが ピ〜ンとこなければ、 茶会を主催した亭主の洒落たおもてなしに気づけないわけです。
教養は身につけておくべきですね・・・。今更ながら思いました。
*1 尾形光琳は 江戸時代の絵師、美術家で 琳派という日本美術の大きな潮流の代表格。
代表作は 燕子花図屏風、風神雷神など、白地秋草模様描絵小袖など。
八つ橋ほか、光琳梅などモチーフは 着物や帯にも写され、着物ファンに愛されています。
*2 『から衣きつつなれにし妻しあれば はるばる来ぬる旅をしぞおもふ』
*3 在原業平 平安時代初期の公家。天皇の孫。和歌がうまく古今和歌集にも多数採用。さらに容姿端麗のモテ男と伝わる。
*4 最後。 この場合は最後の飾り物ということ。
もう一つのお楽しみ、庭園。
さらに 燕子花を眼下にした茶室で 薄茶とお菓子 銘:顔佳花 (かおよばな 燕子花の別名)を頂きました。
掛け物は『終始一誠意』。
意味は 何事も終始誠意を尽くさなければ成就できませんという事。
実に実業家らしい言葉かなと思います。
美術品、庭園の他に こちらの建物も素晴らしかったです。
隈研吾氏の設計です。新国立競技場を設計した方ですね。 道路から入り口までの竹のアプローチが気分を高揚させます。
写真は友人が撮ってくれました。 気軽な小紋の装い。 着物を着た方も多数で訪問着から紬まで様々、お茶もいただけるせいか色無地の方も多かったです。 ということで他の方の装いも楽しませて頂きました。
庭園内のカフェから覗く みどりの風景。 絵の中にいるようで、何時間でもじっとしていられそうです。
根津美術館では 毎年GWの頃、国宝『燕子花図屏風』を公開しているそうです。
ご紹介した作品や庭園の写真はほんの1片、ぜひに実際にご覧になってみてください。