あんよはじょうず。『踊らぬサロメ、きみがすき』
女子校青春群像(偶像)劇
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『サロメ』
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演劇ひとりぼっちユニット
あんよはじょうず。
番外公演
『踊らぬサロメ、きみがすき』
作・演:高畑亜実
出演:市川歩/高橋里帆/西出結/梶川七海/杉山しおん/高畑亜実
番外公演侮ることなかれ。
懐かしの、
散々お世話になった王子小劇場にて初日を。
賞レースとか見事にすり抜けてますが、とても思い出深い劇場さん。
匂いがもうエモかった。個人的)
そしたら内容も、もうもうパーソナルな話になっちゃうけどエモくて。
まず設定がさ、高校演劇っていうさ。
側から見れば、あの時の世界って特殊な枠組みの中で出来ていた。
演劇は演劇でも、高校演劇っていう独立したジャンル。
大会のルールよろしく、背景に[50]のカウントダウン。
高校演劇は、60分以内で上演し終えないと失格になってしまう謎ルールがある。←
いやほんと、失格までしなくていいのにな。
限られた時間の中で、懐かしい「青春中」(ゲキ部だけわかる)の彼女たちが生きていた。
誰がどう、というより、誰もが可愛くてちいいかわ味はマシマシ。
しかしなにより、各俳優陣の魅力とメリハリがものすごく緻密に作られていたから。
その舵取りを、さりげなく、でもしっかりバッチリ行っていたのは、主宰の高畑亜実ちゃんだった。
陰キャ風で控えめのようで、緩急を作り出し方向をキメていったのは間違いない。
し、舞台上でそんなこと簡単に出来るもんじゃない。
小技だけど大業、本当に、なんて器用な人なんだろう。。
あの舵取りがしっかり段取られていたから、あんなに(我々も)キャッキャできたり、笑えたり、グッと台詞が入ってきたんだよね。
それと、出演者の中でよく見かけた(気がする)SNSの発信が
「今までとは違う私です」
そういった言葉。
まさにそうだったのだと思う。
帰り道に、ある男女が知り合いであろう1人について
「あんな顔できるんだね!」
「ていうかあの方が似合うよね!」
「「見たことない一面だったよね!!」」
と、どちゃくそ興奮気味に話しながら早足で駅へ向かっていった。
のを、ニタニタしながら()横を歩いてたのは私です。
マスクあって良かった。
この人はこういう雰囲気が似合う、
こういった役ならあの人だよね、
そういった印象も実力も、武器になるのは間違いない。
必要とされてる気がするし。
でも、
そうじゃない顔だって、人間だもの、みんな持ち合わせているのよ。
それを見せた上で「やっぱ違う」となれば元の方向性とやらに戻ればいい。
ただ、みんなが知ってるようで知らない俳優の一面を見出してもらえるなんて。
幸せ者でしかないよね。
あんよならではの視点で繰り出す「さぁ見ろーー」と言わんばかりの魅力は、俳優にも舞台上にいる人物にも観客にも、痺れをもたらすのだと改めて感じた。
そしてこれから書き連ねるのは、超絶個人的なお話。
私が出演させて頂いた前回本公演『地獄変をみせてやる。-人生失笑(疾走)篇-』を経て、
ひとつ、衣装の雰囲気が似ているのにニマニマ。
赤と、黒の生地で出来たセーラー服。
スカーフが違えど、質感が似ていて。
そして、やっぱり“ユキノ”が居て。
全然違う世界だけど、なんだかパラレルワールドのようにも感じられたのが心をくすぐられちゃった。
もうひとつ、哀愁を、とっても感じたこと。
“戻らないあの頃”は、多くの人がそれぞれのカタチで良くも悪くも送ってきた青春を思い浮かべた。
あんよは、戻らない時間、時代、関係が、あんなにも瑞々しくあるのに、やっぱり自分のことではなくって。
ちゃんと第三者視点で、フィクションで、刺してくれる。
物語なんだよ、と。
『地獄変をみせてやる。-人生失笑(疾走)篇-』でも、“あの頃”を渇望した果ての終決があったと、あの子の思い出のように思い出し。
【戻らない/戻れない】想いや出来事に対して尊くも偶像的な感情を残してくれる。
それが、哀愁だったのかと、
登場人物は女子高生だし若いんだけど、
刹那の哀愁を感じられる、特別な時間をもらった気がしたの。
しがみついてるワケじゃない、
絶賛前を向きながら爆走しながら。
「遠ざけてるんじゃない。
遠いの。」
セリフが一言一句合ってはないだろうと申し訳ないのだけど…
私の中で何人かの顔と、あんよ自体が過ぎったセリフ。
遠ざけていたんじゃない、遠かったんだ、
あの子も、あの人も。
あんよはじょうず。も。
はしゃぎながらも、やっぱりズブ、と刺してくるセリフ。
素敵だった。
浴びに浴びた、あんよ版サロメ。
芯にある、ゆるがない執着心が相性抜群じゃないかと、選出のセンスにも脱帽。
だってラストの爆発力ったら。
“きみがすき”の儚さったら。
今回初めて観劇した人の時間が遡って『地獄変をみせてやる。-人生失笑(疾走)篇-』も観て欲しかったなーぁあ!
あー、
かわいかった…。(に尽きる)(語彙力)
秋の本公演も、絶対浴びたくて足を運ぶのだろうな。