来年につづく...
ご無沙汰しています。
アーティストの中村です。11月末に明倫AIR滞在が終わり、ドタバタと活動拠点の北海道に帰宅してしまいました。久保田さんも、東京に帰宅。お互い次の企画や展示の準備に向けて制作活動を続けています。
11月の滞在制作発表会、たくさんの方に足をお運びいただきまして、本当にありがとうございました。滞在中お世話になった方々はもちろんですが、報道やこのブログを見てお越しくださった方も多かったです。みなさまとじっくり交流することができ、久保田さんと共にとても貴重な時間を過ごすことができました。
このブログでご紹介した場所ほとんどすべてに訪れてから来てくださった方もいました。作品のモチーフひとつひとつの置かれた風景や物語を、あるレベルまで共有しながら作品を見ていただけるということも、普段の作品発表ではほとんど起こらないことで、滞在制作ならではの見る人と作る人の対話があったという実感がありました。
さらに、個人的に驚いたのは、7年前の明倫AIRで私が発表した、「メイリントーン・プロジェクト」の音楽会にご参加くださった市民の方が、今回の発表会にもいらっしゃってくださったことです。同じ土地で活動できるよろこびを味わいました。
この場を借りて、みなさまに改めてお礼申し上げます。ありがとうございました!
また、記録係の里田さんをはじめ、様々な形で制作と滞在をサポートしてくださった実行委員会の方々、明倫地区の方々にも、改めて感謝しております。ありがとうございます!
どうなることかと思っていた共同制作作品も、無事に完成し、お披露目することができました。このほかにも一点、小品ですが共同の作品を作ることができました。取材、調査、制作と、本当に盛りだくさんのAIR期間でした。
今回、テーマにした「物と心の相関関係」は長谷川富三郎さんの言葉から引用しています。
長谷川作品についての調査も、滞在中に進めていました。
実は、私たちが今回の滞在中に調査していた長谷川富三郎作品を、2月の倉吉博物館の常設展で展示していただけることになっていて、併せて準備を進めていました。
発表会でお披露目となった、久保田、中村の作品も、また博物館でご覧いただけます。
このお話を聞いて会場に来られた方が何人もいらっしゃって、たくさんたくさん長谷川しぇんしぇーのエピソードを伺うことができました。(鳥取のことばで先生を「しぇんしぇー」って言うんです。聞いてて心地いい。)
実際に長谷川先生からいただいた作品をご自宅に飾られているという方、指導を受けたことのある方々もお越しになられて、みなさんの生活の中に長谷川板画が溶け込んでいることに改めて感心するところとなりました。
作者の名前さえ失われ、民衆の生活に溶け込む作品...。
それこそ、無心・無名をよしとした民藝の思想そのものなのでは?と、ハッとさせられました。
プロの版画制作というものは、作品の価値を下げないために自分が決めた数だけ作品を刷ったら版木を割る(これ以上刷らせない)ということが当たり前に行われる世界です。しかし、長谷川さんは、版木を自宅に保管していて、求められればいつでも新しい板画を刷ってくれたといいます。若い時は有名になりたいというような競る気持ちもあったともお聞きしましたが、生涯を通しての、板画制作に対する大らかな態度が、いま、倉吉の中で、長谷川板画が生き続けることになった大きな要因なのではないでしょうか。
まさに、「ようこそようこそ」という言葉が似合う作家です。
わたしは北海道の自宅で、展示に向けて再び資料を開き、準備中です。
年明けに、日程などブログでご報告します。まだまだ続く、明倫AIR2017です。
それではみなさま、良いお年をお過ごしください。