第6回ムジャンマ 障がいのある難民のスポーツ支援
日 時:5月25日(水)20時~22時(日本時間)
話題提供者:シャーディ・バラジー(ATHLOS)
在米40年のシリア人。障がいのある難民へスポーツ支援を行う団体「ATHLOS」の国際コーディネーター。シリア出身の難民選手団パラリンピック代表選手と共に、資金集め、難民車いすバスケットボールチーム活動の促進等に尽力。自身もアスリートで、シリアで空手を広めた岡本秀樹の弟子の元で空手を始める。黒帯8段。
話題提供
シャーディさんの空手人生
目の不自由な方の生活支援を行っていた母と、刑務所で受刑者にスポーツや教育を提供していた父の下で育ったシャーディさん。子供のころから、受刑者と自然に遊んでいたという。父は刑務所を更生施設と考え、出所後に十分な職にありつくことができるよう腐心していたそうだ。社会的な人格向上も兼ねて、スポーツや芸術活動も積極的に取り入れていた。
1950年代以降、日本空手協会が、諸外国に精力的に講師を派遣し、多くの道場が世界中に生まれた。その講師の一人が、シリアとレバノンに派遣された「伝説の空手家」岡本秀樹である。一週間の内4日をシリア、3日をレバノンで空手を教えたという岡本秀樹の影響で、シリアで空手はみるみる人気スポーツとなった。シャーディさんは、岡本秀樹の孫弟子にあたる。当時の軍政下において、シャーディさんは練習に明け暮れ、国内の大会で活躍し、シリア代表チームに名を連ねるまでになった。その後シャーディさんは、シリアを離れる。
移住したアメリカでは、代表チームのキャプテンを務める傍ら、大学に進学し工学を修めた。大学卒業後には、道場を開いて指導者としての道を歩み始めた。日中には仕事、夜には稽古という二足の草鞋を踏んだのは、生活の苦しい門下生からは稽古代を取らなかったためである。道場を開いて以来、アメリカ内外で招へい稽古や講演会を開いたが、そこでもセミナー料を受け取らなかった。それでもと渡されると、招へい先の指導者に渡していたそうだ。
障がいのある難民のスポーツ支援
一般的に難民は、スポーツ大会への出場や指導者として働くことが難しい。避難した先で、スポーツの成績や経験を証明する書類を提示することができないためだ。ATHLOSの活動のは難民のアスリートたち、特に障がいを抱える難民アスリートを支援することで、資金繰りが苦しい難民アスリートに、必要な道具やウエアなどの提供、遠征資金や大会への出場資金も支援したり、練習の機会を開催したりもしている。
シャーディさんがATHLOSを設立したきっかけは、同郷シリア出身の競泳選手イブラヒム・アルフセインとの出会いである。戦火で友人を助けようとして砲撃にあい、右足を失った後、難民となりギリシャに渡ったイブラヒム選手。その絶望的経験を乗り越えて生活を切り開き、大好きな水泳に戻り、パラリンピック難民選手団に選ばれている。これまでの彼の境遇を聴き、いかに障がいを持った難民の生活が凄まじいか、そんな生活にスポーツがいかに希望を与えたかをシャーディさんは思い知ったそうだ。イブラヒム選手が語った、難民車いすバスケットボール チームの夢に感激し、その支援に携わることを決心。難民車いすバスケットボールチームの設立に奔走すると、その他のスポーツの選手からも、支援の依頼が舞い込んだ。社会的な意義を実感したシャーディさんは、なかなか焦点が当たらない障がいを持った難民アスリートの生き様を伝え、寄付金で難民アスリートを支援する「ATHLOS」の構想を固める。
いよいよ事業開始という時期は、運悪く新型コロナウイルスの感染拡大と重なった。その間も構想を温め続け、今年3月にはトルコ南部で、5月にはギリシャで、トレーニングの機会を実現した。6月にはイブラヒム選手の訪日により、障がいのある難民の声をより多くの人に届けるために、6月20日の難民の日に関連するイベントや、企業・学校での講演、日本の強豪車いすバスケチームとの交流などをが控えている。
シャーディさんは言う。
I believe sports brings you back to life; job gives back your integrity; medical support get you back on your feet.
話題提供部分の詳細は、是非動画をご覧ください。
質疑応答の部分は、是非議事録をご覧ください。
ATHLOSについて
HP: http://www.athlosfoundation.com/
Facebook (ATHLOS JAPAN): https://www.facebook.com/ATHLOS-JAPAN-102874622395612/
ATHLOSでは2022年6月30日まで、イブラヒム選手来日に関するクラウド・ファンディングを実施中。ご関心ある方は、是非クラウドファンディングページをご覧ください。
ムジャンマについて
ムジャンマは、アラビア語で「集まる場所」を意味します。シリアのために活動する人が、シリアを思って集まる場所という願いを込めています。「シリア人の一人も置き去りにしない」シリア和平ネットワークが、設立当初から抱える想いを実現するため、2021年から開始した招待制の意見交換会です。
ムジャンマでは、「シリアに関する何か」について、話題提供者が話します。講演会に終始せず、可能な限り参加者の自由な意見交換を設定しています。参加者の方に、自身の活動への具体的なヒントを持ち帰ってほしいと考えているためです。シリアに関する知識の深化・更新、新たな連携関係の構築、アドボカシーの展開。ムジャンマが、それらの「媒介」になればと願っています。
ムジャンマへの招待者は、組織・立場に関わらず、シリアに携わる方です。ムジャンマへの参加をご希望されます方は、シリア和平ネットワーク事務局(futsuki.kouta.22u★st.kyoto-u.ac.jp:★を@に変更してください)まで、ご連絡ください。