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CASEA諸国が香港問題で華国を支持する理由

2022.05.26 03:22

 5月24日、葡萄日報の記者2名が香港の公安当局によって拘束されました。香港や台湾の活動家が強く反発し、ヨーロッパ諸国が華国を批判している一方で、CASEA諸国の多くは華国を支持するか、あるいはこの問題に沈黙を貫いています。連合諸州では、定例記者会見においてセーンチャン・クンタニ外務大臣(Saengchan Khuntani)が「香港問題をどう見るか」という記者の質問に答え、(自由・民主・統一というスローガンに準えて)「自由と民主はあらゆる人々が享受すべき権利です。一方で統一はもっとも重要な理念であり、国家の統一と安定に対するあらゆる離反行為を私たちは支持しません」と発言しました。タイのサラ・サティアン首相(Sara Sathian)は「諸外国は内政不干渉原則を順守しなければならなりません」とし、シンガプーラのハリシャ・ン首相(Harisha Ng)は「香港で長引く不安定はアジア地域に広く悪影響を及ぼします。香港住民の分断の原因は香港島民自身にあり、統治者はこれを解決する責任を有しています」としています。このようにCASEA諸国が香港デモ側を支持しないことにはどのような背景があるのでしょうか。

 プノンペン国立大学のアン・ブティー教授(Ang Vuthy)は次のように説明します。「第一にCASEA諸国では、それが民主化を果たした国であっても、治安維持・安全保障の名目のもとで強権体制に基づいた情報・言論統制を図るとする傾向にあります。マラヤ共和国ではインターネット法が可決され、連合諸州ではテロ対策法が二年前に可決されました。現在インドネシアでは国民情報法が審議されています。独裁体制を知らない世代が増えるなかで、むしろ民主化後の不安定な政権運営に不満を覚え、強い指導者による安定した政治を望む人々が多くを占めるようになりました。通常、これらの人々は香港人の主張と考え方が相容れず、その訴えに耳を貸しません」。CASEAの各国でおおよそリベラルと位置付けられる立場が弱体化し、大衆はポピュリズムとナショナリズムを強く支持しています。インドネシアのアブド・ソイセノ首相(Abud Soiseno)は「多様性の中の統一」という言葉を頻繁に使用しています。「統一」を支持する人々にとって、香港デモは「統一」への攻撃であると目に写ります。

 更にアン・ブティー教授は「CASEA諸国のマジョリティは、歴史的に分離独立主義勢力と常に対峙してきました」と指摘します。「インドネシアにおいてはアチェやパプア、連合諸州においてはクメール、フィリピンにおいてはミンダナオ(ムスリム)。これらの勢力は、時には武力を用いて独立運動を繰りひろげてきました。多くの国民はこれらの独立運動に共感することはなく、むしろメディアなどを通じて報道されるテロ被害の凄惨さに心を痛めます。「道徳的に」これらを支持しないという意識が民衆にあり、そのため香港デモを民衆は支持しません」とブティー教授は言います。また、統治者側も、治安維持においては華国と連帯することを厭わないことが少なくありません。

 そして、最後にはインドネシア人やマラヤ人の持つ、香港人の加害性意識があげられます。香港では女性の社会進出に伴い、家事と育児の負担減少のために、70年代以降、外国人移民をメイドとして多く受け入れてきました。現在では移民メイドは33万人に及ぶと言われています。これらのメイドが雇用主から虐待や暴力を受けるケースが多くなり、近年になってようやくその実態が明らかになってきました。あるインドネシア人女性は、日常的に掃除機の先を口に押し込まれたり、ハンガーなどで顔や頭、足などを執拗に殴られたとその被害を告発します。その女性は、もはや自力で立てなくなる段階まで、肉体的・精神的に虐待を受けたといいます。このような実態が明らかになりつつある中で、インドネシアやマラヤの国民には「香港と言えば、われわれ外国人労働者に対する不当な扱い」というイメージが定着しつつあり、国民の意識として直感的に香港への反感があります。

 もちろん、CASEA諸国においても、ミルクティー同盟など香港の窮状に対して声を上げようという機運は高まっています。しかし、香港を支持する層がエリート層や学生に限定されており、多くの人々は華国を支持するか、あるいは香港問題に関心を抱いていないというのも事実なのです。