ロマン派の時代31-ドレスデン革命とワグナー
2022.05.27 11:55
1848年から翌年にかけてドイツ各地で革命が勃発している。ドレスデンでは49年5月蜂起が起こった、そしてその先頭に立ったのが、宮廷管弦楽団指揮者だったワーグナーである。彼は宮廷音楽の改革を度々進言していたが、聞き入れられず、新作オペラ「ローエングリン」の上演が取り下げられてキレたのだ。
もちろんザクセンには未だ議会もなく、自由主義者は憲法を求め、王がプロイセン軍を入れようとすると、民衆は阻止して市民が倒れると、街にバリケードが築かれた。ワグナーは檄文だけでなく、手榴弾をつくり、聖十字架教会の頂上に立って戦況を司令部に報告した。
しかしプロイセン軍が到着すると、王軍は反撃に出て、5月9日参加者は逮捕された。ワーグナーも指名手配されてチューリヒに逃亡を与儀なくされた。宮廷劇場も炎上し、ワグナーに一人の兵士が(ベートーヴェンの第九に出て来る)「神々の火が点きましたね」と言ったという。
革命の中で、ワグナーはロシアのアナーキストであるバクーニンの影響を受けた。宮廷劇場の炎上と共に「一切の破壊からの再生」という思想は、「神々の黄昏」最終シーンのインスピレーションを与えた。ローエングリンは50年にリストの尽力で上演されるが、ワグナーが見ることは叶わなかった。